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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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二度目ですよ教会は

 城を出るにあたって、いくつか用事を済ませてきた団長様と、イーヴァルさんが戻って来た。

 森からの帰り路と、ゆっくり話しをしている間に休めたおかげで、私も多少は自分で歩けるまでに復活した。


 二人と一緒に外へ出ると、二頭の馬が騎士見習いの手によって連れて来られていた。一頭はさっき見たのでわかる。イーヴァルさんの馬だ。

 一頭は団長様のだろう。黒鹿毛の大きな馬だ。


 団長様はさっさと私を子供のように持ち上げて、馬に乗せてしまう。

 あまりのあざやかさに、私は目を丸くしたまま、ちんまりと団長様の鞍の前に座らされた。というか二人でも乗れる鞍だったようだ。


「私が連れて行きますが?」


 イーヴァルさんが顔をしかめてそう言う。


「精霊について、少し話しを聞いておきたい」


 そう返されてはイーヴァルさんも反対できないのだろう。渋々といった様子で引き下がった。

 そうして城を出ると、やっぱりフレイさんの時と同じように人に振り返られた。

 団長様に乗せてもらう人って珍しいですよね……。


 どこかの高貴なご令嬢ならありだと思うけれど、ちまっとした旅装の私が乗っていると、違和感が半端ないだろう。鎧を着ていないとはいえ、団長さんはきりっとした衣装をお召しだし。


 ……私はゲームで、東のけっこうのんびりした騎士団に所属して遊んでいたんだけど、そこ騎士団の衣装もけっこう高かったんだよなぁと思い出す。

 NPCとお揃いにした方が、なんか連帯感があって良かったもんで、お金溜めて買ったけど。

 きっと団長様のも高いに違いない。

 なんてことを考えていたら、団長様に話しかけられた。


「混乱の精霊は、どんな様子だった?」


「ええと、姿は可愛いっぽいんですけれど、とにかく争わせようとか、戦わせようとかしているみたいでした。団長様は、ご覧になったことは?」


「ある。混乱の精霊というか、あれは混乱した精霊というべきかもしれないが……」


 団長様はそう答えてくれた。


「混乱した精霊……ということは、元は違うということですか?」


 私の問いに、団長様が黙り込む。……最近ちょっとわかってきた。団長様って考える時と困った時、悩んだりする時に黙っちゃうクセがあるんだ。

 今回は悩んでいたのかもしれない。

 十秒後ぐらいにお返事が来た。


「そういうことだな。私は変化する様を見たことがある。普通の精霊だったものが、表情を変え、姿が少し変化する。だからぱっと見ただけでは、彼らが混乱しているとはわからない」


 私はそれを聞いて、ふと道端に見えた精霊に視線を向ける。

 風に乗ってひょーいと過ぎ去ったふわふわした衣服を着た、小さな子供みたいな姿の精霊は、嬉しそうな表情をしていた。

 何の精霊だろう。画面を出していないのでわからないけれど、たぶん混乱の精霊ではないと思う。


「混乱してしまう条件って、どういうものがあるんですか?」


 尋ねると、今度は黙ったりはしなかったけれど。


「例えば、人や天変地異によって自分が守るものが壊された場合。もしくは魔法によって、変質させられた場合だな」


 その内容のほとんどが、人為的な原因だということを知って、私はなんとも言えない気持ちになったのだった。

 私の沈んだ気持ちを察したのか、団長様が言う。


「気にし過ぎるな。精霊であっても、人の生活を邪魔し排除してくることがあれば、倒さなければならないこともある」


 確かに、人は何かを犠牲にしないと生きていけない。魔物を倒すのもそうだ。排除せずに生活するのは不可能だ。

 わかっているのに、と思う。


「精霊のことは気の毒に思ってしまうのって、通常の姿が可愛いからなんでしょうか」


 わりと真面目にそう言ったのだけど、団長様には笑われてしまった。


「変ですか?」


「いや、ユラはそのままでいいんじゃないか?」


 そう言われて振り向いた私は、うっかりと至近で微笑む団長様の顔を見ることになって、なんとなく釣られるように笑みを浮かべてしまった。

 ちょっとほんわりした気分になる。

 もしかして私、だいぶん団長様のご尊顔に慣れたのかも。



 やがて、あの灰色の壁に円形アーチの窓が並ぶ教会へ到着する。

 馬はイーヴァルさんがまとめて近くの修道士に託しに行き、その間にも団長様はさっさと教会の中へ入って行く。


 私もやや遅い足取りながらも、それに続いた。

 そうして前回同様、精霊と星を表す巨大な壁画彫刻の前に、教会の司祭がいた。

 青いケープ付きローブの司祭は、団長様を見て目を丸くした。


「なんっ、リュシアン様!? こちらにお越しになるとは存じ上げませんで!」


 祭壇の前から、慌てて駆け付けてくるけれど、あれ、他の人の対応してなかった?

 団長様もそっちが気になった様子。


「対応を待っている者がいるだろう。私は少し話がある。どこか待てる場所に案内してもらいたい」


「承知いたしました!」


 司祭は壁際にいた教会の、黒の帯を腰に結んだ助祭の男性を呼んだ。

 やってきた助祭も慌てながら、団長様と付属の私、そこで追いついてきたイーヴァルさんを教会の奥に案内する。

 外回廊から、礼拝堂をぐるりと回り込むようにして着いたのは、来客を応対する部屋が並ぶ場所のようだ。

 その奥は、教会関係者が住んでいる場所へと続いている。


 私達が通されたのは、かなりいいお部屋のよう。

 壁も綺麗に白く、風景画が飾られている。カーテンも厚地に美しい花が織り込まれたもの。ソファの座り心地も良い。

 そうしてしばらく待っていると、あの司祭がやってきた。

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