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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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団長さんに報告します

「なにやら力尽きてるという話だったが……」


 と言いながら、団長様が困惑したように私を見ていた。


「そ、そんなことありま……うぉっ」


「ユラさん無理しないで」


 否定している途中で、さっと馬から降りたフレイさんに抱えられて、地上に降ろされた。

 しかし私は足がへろへろだった。

 降ろされた瞬間、へにょりとよろける。

 それを首根っこを持つようにして支えてくれたのは、イーヴァルさんだ。


「警戒線を巡回した上で、無事に連れ帰りました、リュシアン団長」


「ご苦労だった。ユラはどうやら限界のようだがな」


 ちょっと団長様に笑われてしまった。しかし否定の言葉など出てこない。これ、一人で立っていられないわ。本気でヤバイ……。


「急いで帰る必要があったせいです。ゴブリンが警戒線を越えて大量に現れまして、倒したのですがそれに関してユラが気になることを言っていまして」


 フレイさんの報告に、団長様は少し考えた後、オルヴェ先生に言った。


「オルヴェ、そっちの棟の一部屋を貸してもらいたい。そこで報告を聞く」


「承知しました。ユラ、歩けるのかそれは?」


 オルヴェ先生、後半はフレイさんに尋ねていた。なぜ私に確認してくれないのか。


「微妙ですから、持っていきます」


「そうか」


 フレイさんと先生のやりとりに、持って行くってどうするんだと思っていた私は、まだ頭がぼんやりしていたんだろう。


「イーヴァル、手を離してやってくれないか」


「ああ……」


 イーヴァルさんに離されたとたん、支えを失った私はよろけた。あ、やばい。これは確かに歩くのに難儀しそうと思ったら、ふわっと持ち上げられた。

 横向きに両腕で抱えてくれたのは、フレイさんだ。

 ええと。


「……お手数おかけいたします」


 まずはお詫びを申し上げる。


「気にしなくていいよ。君の体力をよく考えずに急がせたのは俺たちだからね」


 そう言ってくれるけれど、やっぱり私が軟弱だったせいでこんなことになったのだし。

 脱力してる人間ってかなり重いし……。前世で年の離れた従兄弟を抱っこした時に、思い知ったもの。

 しかも荷物担ぎじゃなくて良かった。あれやられたら、全ての元凶、精霊融合実験なるものに関連して、殺されそうになったことを思い出しそうだったから。


 でも、ハズい。

 以前似たような状態になったのは、団長様だったか。

 二度目の今は、なんかもう疲れ果ててしまって、ただただ呆然とする。

 そのせいだろうか。


「拝まないんだな……」


 団長様が何か言いたげな表情でぽつりと言って、先に歩き始めたオルヴェ先生の後に続いたような気がしたのだけど……。え、これは拝むべき?

 戸惑っている間にも、私は居館の二階へとさくさく連れて行かれる。


 そうして入ったのは、オルヴェ先生の診察室。

 今は誰も患者さんがいないので、人払いも必要ないらしい。

 私は部屋の壁際に置かれた、深く座れるソファの真ん中に座らされた。このソファは、診察の順番を待つ人がいた時のために置いているものだ。

 左右をフレイさんとイーヴァルさんに挟まれ、向かい側に椅子を置いた団長様とオルヴェ先生が来る。


「まずは経緯から聞こうか」


 団長様の問いかけに、フレイさんが説明をはじめた。


 警戒線へ近づいたところで、ゴブリンがいたこと。

 索敵に引っかからないゴブリンの集団がいて、安全圏に残していたはずの私達が襲われそうになったこと。

 ゴブリンが異常な行動をおこしていたり、索敵に引っかからなかったのは、どうやら混乱の精霊がいたからだということも。


「それでユラが、ゴブリン達も混乱させられたせいで、わけもわからずに警戒線を越えてむやみに戦っていたのだと説明しまして」


 そこで団長様が顔をしかめた。


「ゴブリンが?」


「はい」


「……ゴブリンがそう言ったのか?」


「ユラが、ゴブリンがそう言っているのがわかると」


 フレイさんの言葉に、団長様とオルヴェ先生がじーっと私を見た。

 二人の顔には『正気か? 夢でも見たんじゃないのか?』と書いてある気がする。でも本当だし、隠していても仕方ないし、早く解決するには色々隠して話すと遠回りになりそうだし。

 なので素直にうなずいた。


「精霊融合のせいだろうか……」


 オルヴェ先生が、とても困惑したようにつぶやく。でも原因はそれしかないですよね。


「今まで聞いたこともないが、つじつまが合うのだろう?」


 団長様の問いに、イーヴァルさんがうなずいた。


「ユラは、私達が話すより先に、ゴブリンの集落がタウロスに襲撃されていることを知っていました。ゴブリンとともに、タウロスを見かけてもいないのにです。また私としても、ゴブリンごときが索敵のスキルを無効化できるとは思えません。何かの魔法のアイテムを使ったか、それこそ精霊の助力がなければ」


「その精霊が、混乱の精霊だと?」


 団長様に目を向けられて、私は再度うなずいた。


「そうです。なので混乱の精霊を追い払わなければ、警戒線を越えて他の魔物もやってくるようになるのではないかと。ゴブリンだけで終わるとは思えません。タウロスも、たぶん混乱の精霊が操っているのではないかと思うんです」


「それで、教会に精霊を退けられる知恵がないかを、聞きに行きたいのですが……」


 私の話の後を継いだフレイさんが、団長様に頼んでくれる。


「お願いできませんか、団長。一筆書くだけでも」


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