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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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ゴブリンと対戦!

《ゴブリン:何かの息が……》


《ゴブリン:人間か?》


 ゴブリンたちは四方八方へ向いて、人の姿を探そうとしている。

 相手の出方を見る分にはいいけれど、これ、ため息レベルでも向こうに聞こえるなら、今しゃべるとマズイ。

 私は口を引き結んで画面を注視する。


《ゴブリン:見つけるんだ。痕跡ものこすな。人に見つかれば集落が消滅させられる》


《ゴブリン:人の引いた線を越えたんだ、今さら……》


 一応、ゴブリンも警戒ラインについてはわかっていたみたい。だから見つかり次第殺そうっていうのは、もう魔物である以上はどうしようもないのかな?

 まだゴブリンたちは。ごふごふしゃべっている。


《ゴブリン:もう帰ろう……集落の人数は減り過ぎた》


《ゴブリン:そもそもなんで、俺たちはこんな所を歩いてるんだ》


《ゴブリン:うるさい。別の奴らの集団よりも人を多く狩るんだよ》


 お、内部争いですか?

 そのままご自分達だけでファイトして、解散してくれないかな?


《ゴブリン:集落にはタウルスが押し寄せてきてただろ。今頃苦労してるはずだ》


 タウルスというのは牛っぽい魔物。

 二本の角があって通常の牛よりも大きいけど、真っ黒で森の中で会うと見つけにくい。しかも餌は……肉です。

 何の肉かはあえて言わない。なんでもいいけど肉。


 どうやらゴブリンの集落、タウルスに襲われているもよう。

 早く帰ってあげないの?


《混乱の精霊:クスクスクス》


《ゴブリン:……全部人間のせいだ》


《ゴブリン:戦え》


 しかも何か変になってきてる。


《ゴブリン:殺せ……》


《ゴブリン:殺さなくては……》


 言ってることは、食べるっていうのとさして変わらないんだけどね? 前よりなんだか好戦的になったような。


《混乱の精霊:争え……クスクスクス》


 やっぱりこれだ。混乱の精霊の影響で、ゴブリンたちが帰らないで、わざわざ人と遭遇して争うような場所を徘徊しているんだと思う。

 そしてゴブリンたちは、周囲を武器で薙ぎ払いながら、近くに人間が潜んでいないかを探し始めた。


 あああ、こっち来ちゃってる。

 私はGボタンをもう一回押して、交信とやらを切った。その上で、ヤーンさんに話しかける。


「ヤーンさん、もう少しここを離れましょう。ゴブリンたち、この辺りをしらみつぶしにするかもしれません」


「しかし……」


 フレイさんからこの場で待機と言われたからだろう。ヤーンさんは動くことを渋った。

 けれど再びこっちにゴブリンが近づくのをやめないので、私を手招きして、そおっと遠ざかろうとしてくれる。


 ところでこの世界には、足音を消すスキルはない。

 魔法だったら存在する。

 そうして私はもちろん、ヤーンさんもその魔法を使える人ではなかった。

 ヤーンさんは、フレイさんよりやや年下っぽいとはいえ、それなりに経験を積んでいる人だ。もちろんのこと、足音を立てないように敵から遠ざかるのも、慣れている。


 ただ、私は完全に素人だ。

 町娘の域を脱していない私は、あっさりと足下にある枝をぱきっと音をさせて折ってしまった。


 音が聞こえたのだろう。ざわつくゴブリンたち。

 急いで近くの繁みに隠れたけれど、間違いなく私達のいる方向にゴブリンたちは移動してきた。

 ヤーンさんが、静かに剣を抜く。

 そして見えない状態を利用して、移動してきたゴブリンたちを横から襲撃した。


 初めての戦闘に、私は震えあがりながら見ているしかない。

 十人の中に斬り込んで行ったヤーンさんは、不意打ちのおかげで二匹を瞬く間に倒した。

 ……緑の血だったおかげと、死ぬと黒い光になって消えるから、それほど目に厳しくなかったので、ほっとする。


 でもそこからが大変だった。

 ヤーンさんも、木立と繁みで左右から襲いかかれない位置取りをしたものの、一対八で戦い続けるのは厳しいようだ。

 続けて二匹を倒したものの、疲れが見える。


「早く……」


 そろそろ十分は経つんじゃないのかな。

 イーヴァルさんはまだ!? 早く来て下さい! お願いします!

 もうそうやって願うしかない。


 いやもうちょっとやれることがある。撹乱しよう。

 そう思って、画面を出してチャンネルGをオン。

 私の位置はわからないように。ぼそぼそとした声を出してみた。

 気が逸れたゴブリンをさらに一匹、ヤーンさんが仕留めた。


 でもまだ五匹。

 ……と思ったところで、上からばさばさと木の葉が舞い落ちてくる。ミニミニのゴブリンと共に。

 え、精霊!?

 舞い降りて来た木の精霊達が、手に持った針みたいなものをぶんぶんと振り回す。


《木の精霊:せんとうだー》


《木の精霊:ゴブリンだー》


《木の精霊:ダメージひくい》


《木の精霊:みんなで一匹にしゅうちゅうするんだよ》


《木の精霊:たおせたおせ》


 そんな言葉が画面に表示される中、なぜか木の精霊達が、後方のゴブリンにたかりはじめた。

 ちくちく刺されたゴブリンは、精霊にふれられても普通なら何も感じないはずなのに、痛そうに身をよじりはじめる。


《ゴブリン:痛い痛い!》


《ゴブリン:精霊だ! 精霊が攻撃してきてる》


 え、精霊の攻撃がゴブリンに当たってる!?

 しかもちくちくされ続けたゴブリンが、少しずつ姿が薄れて、やがて黒い光になって消えてしまった。

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