表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/259

ゴブリンを見つけました

 その先でも、ちらほらと木の精霊が降って来た。

 私にぶつかっても、私も精霊も痛くないのはいいんだけど。慣れなくてびくっとしてしまう。

 正面から顔にぶつかられた時は、さすがに足を止めてしまった。


 まさか精霊が見えることで、こんな問題が発生するとはおもわなかった……。かまどにいる精霊は大人しく火の中から現れて、燃えている間踊ってるしなぁ。

 そのせいで、イーヴァルさんをイラつかせてしまったみたいだけど。


「少し頭を伏せる様にして歩きなさい。どうせあなたに周囲の警戒をさせることはできないんです。雨の中で、目の前のフレイを見失わず歩くようにしてはどうですか。察するところ、精霊はほとんど頭上から落ちて来るのでしょう」


 まさにその通り。

 精霊は枝からひらひらと舞い降りてくる。時々不規則に空中で飛び上がるので、それで驚く。

 ややイラッとした声ながらも、助言してくれたのでそれに従うと、確かに頭上からや真っ直ぐ前からくるものには驚かなくなった。


「あ、ほんとだ……」


 なるほど。イーヴァルさんが言った理由がよくわかる。うつむくぐらいの高さだと、跳ねて飛んでくる精霊が見える数も限られるから、よけいに気になり難い。

 そうすると、地面を歩いている他の精霊に気づく。


 キノコに顔が書かれたような精霊が、五人ぐらいで列を作って歩いている。

 ひょこひょこあるいていて可愛い。

 その中にもゴブリン精霊が混ざっていて、勇者パーティーの中の遊び人のような印象だ。


「ありがとうございます」と言ったら、イーヴァルさんがちょっと横を向いて言った。


「べべ、別に礼を言うようなことではありません。は、早く歩いて下さい」


 言ってることはキツイのに、どもってる。

 素直じゃない人なのかな。それでも怖い言葉をそのまま言うのにためらいがあるから、どもるんだろう。

 とにかくついてきてくれたイーヴァルさんが、心底私を嫌っているわけじゃないのはわかった。

 あと素直にお礼を言われると弱いということも。


 パーティーになった相手のことがわかると、なんだか安心する。

 なにせこの先は、間違いなく戦闘になってしまうからだ。


 だんだんと、フレイさん達の進みも遅くなっていく。

 緊張が高まる中、先頭の騎士がささやくような声で言った。


「百メートル先、おそらくゴブリンがいます」


 たぶん、索敵スキルを使ったんだと思う。でなければ、とてもこんな樹ばかりで見通しが悪い場所で、100メートル先のことなんてわかりようがないもの。


「その距離なら、警戒ラインの外ですね。何匹ですか?」


「二十匹です」


 イーヴァルさんの問いかけに、騎士が答える。


「かなり多いな」


 フレイさんがそう言いながらも、剣を抜く。


「そこそこ楽しめそうだ」


 ちろりと舌なめずりする仕草さえ綺麗なんだけど。え、フレイさんずいぶんと好戦的ですね?


「……フレイ。そっちばかりにかまけないように」


「わかってる。でもゴブリンだけなら、戦って倒すだけで済むだろう? しかも二十匹だ」


 イーヴァルさんにそう言い返すところを見ると、フレイさんは二十匹ぐらいなら早々に倒せると踏んでいるらしい。それどころか、戦いたいようだ。

 ここで私は思い出した。

 戦闘狂とイーヴァルさんが言ったことを。


 フレイさんて、戦闘大好き人間?

 それは頼もしいのか、それとも怖がるべきなのか。心配するべきなのか。

 頭を悩ませていた私だったけれど、フレイさんとイーヴァルさんがさっさと行動の打ち合わせを終えてしまう。


「ユラはむしろ近くに居ない方がいいでしょう。倒しそこねたゴブリンが、弱い個体に襲い掛かっても面倒ですし」


「守るより、自分が引きつけて倒す方が楽なのは確かだね。それじゃヤーン、君にユラさんのことは任せた。一応、姿隠しの魔法をかけておくから、ここで待機するように」


 決定すると、あっさりとフレイさんは何かの呪文を唱え始める。

 殿を歩いていた騎士、茶色の髪のヤーンさんにとっては、それがいつものことなんだろう。粛々と受け入れて、フレイさんの魔法を受け入れている。


 私も一緒にかかったんだけど、ヤーンさんの姿が霞んで見えるようになった。

 おお、魔法だ魔法だ。

 今まで全く見たことがなかったわけじゃないけど、実践的な魔法ってあんまり見たことがないから、ちょっとドキドキする。


 いいなぁ。私も魔法が使えるようになりたい……。お茶を作るのも、魔法みたいなものなんだけどね。


「この魔法は、気づかれなければ周囲に同化して、姿がわからなくなるんだ。代わりに、声を気づかれたり相手とぶつかったりすると、見えてしまうんだ。そうなっても、輪郭がぶれているような感じの見え方は続くから、相手が攻撃はしにくいだろうけれど」


 ほほう。発見されたらすぐに解ける魔法じゃないんですね。


「そういうわけで、そこでじっとして待っていてほしい。問題なければ、たぶん十五分くらいで戻れると思う」


 そう言って、フレイさんはいそいそと先へ進んで行く。

 よほど戦いたいんですね……。こう、印象と違って驚きだ。


「まったく……」


 イーヴァルさんはため息をつく。


「二人とも、そこで待機しているように。よほどのことがなければ動かないよう、ユラに言い聞かせておいて下さいヤーン。彼女は初心者もいいところですからね。あと、フレイだけでどうにかできると判断したら、私かもう一人が戻ります」


 フレイさんより早く戻ると言って、イーヴァルさんも後に続いた。

 ちょっと言葉がところどころキツイけれど、私達の方を優先させ、戦闘が終わる頃には先に戻ってくれるようだ。


 こう、なんだ。

 いい人なんだけど、素直にいい人だといいにくいのは、なんとかしてほしいかも。

 でも戦闘に夢中になったフレイさんより、頼りになるかもしれないと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ