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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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森の中の精霊

 私は上機嫌だった。

 なにせみんながお茶を美味しいと言ってくれたのだ。


 確実に紅茶好きを増やしていけている。そんな実感があった。

 しかもイーヴァルさんをも黙らせ、能力値を気にさせることができたのだから、まさに紅茶の大勝利。


 上機嫌なまま、片づけを終えたら徒歩で出発した。

 一列になって進むしかないほど、道は細かった。

 というか誰かが踏んだ痕もほとんど消えていて、道かどうかなんて私には判別がつかない。


 そんな道を、先頭がフレイさんの部下、次にフレイさん、私、イーヴァルさん、もう一人のフレイさんの部下という並びで、けれどけっこう早いスピードで進む。

 おかげで私は早々に息が上がりそうになった。

 これはマズイ。たどり着く前に、私がバテてしまう。

 それじゃ逃げられない。


「フレイさん、すみません」


 土下座する覚悟で私はフレイさんに声をかけた。

 たぶん予定からすると、この速度で歩くことが必要なんだと思うんだ。じゃないと帰りが遅くなるとかね。

 歩けなくなってから申告すると、ますます迷惑をかけてしまう。

 軟弱者ぉぉぉと言われるかもしれないけど、本当に軟弱なので、正直に言うのが最善の道だ。


「もう少しだけ、歩く速さをゆるめていただけると、ありがたい、げふっ、です」


 おっとせき込んでしまった。


「ああ済まないユラさん。休むかい?」


「ええと、三分ほど、息だけ落ち着かせてもらえれば」


 今世の私も、人見知り街道を爆走して生きて来たとはいえ、前世日本人よりは足腰がしっかりしている。車ないし、自転車ないし、基本全て徒歩だからだね。

 木に手をついてぜーはーとしていると、頭上からひらひらっと木の葉が舞い落ちてきた。


 いや、舞ってるけどちょっとおかしい。

 空中でなぜか弾かれるように跳ねてる。

 何だろうと思って触れて見ようとしたら、ふっと消えた。

 ……あれ。


「まさか精霊……」


 と思ったら、パラパラと木の葉が沢山振って来た。

 よくよく見れば、卵型の緑の葉っぱに、まじっくで書いたような目と逆三角の口、そして針金みたいな手足が葉っぱから出てる。

 マスコットの絵みたいで、なんか可愛い。


 こんな魔物は聞いたことがないから、精霊で間違いないと思うけど。

 慌てて画面を出してみれば、木の精霊と書かれていた。


「やっぱり精霊だった」


「ん、精霊がいたのかい?」


「はい。木の葉みたいな精霊がいっぱい降ってきて……」


 可愛いなぁと思って見ていたら、たまに見慣れたものが混じっている。木の葉の服を着ていたので、見逃していたらしい。


 木の葉ファッションのゴブリン精霊も、楽しく跳ねたりくるくる回っているので、どうも木の精霊の仲間みたい。この子達は服で見分ければいいのかな?

 何かしゃべるかなと思って、ゴブリン精霊をえいっと突いてみると。


《木の精霊:いやん》


 と表示された。


「…………」


 咳払いしてもう一度、別なことをする。


「ねぇ、この先のゴブリンの集落について、今どういう状況かわかったりする?」


 言葉が通じればいいけどと思いながら言えば、ゴブリン精霊と木の葉精霊が手を繋いで飛び上がりながら答えた。

 まぁ、文字が表示されるだけなんだけど。


《木の精霊:ゴブリンたちはいつもおこりんぼ。イライラしてるよ!》


 とかえって来た。


「おこりんぼ。イライラ?」


 精神的に不安定なんですかね、ゴブリンさん達。近づくの怖いなぁ。


「精霊がそう言ったんですか?」


 フレイさんに尋ねられてうなずく。


「どうもゴブリンたちの心が不安定みたいです。副団長様がたが戦闘になってばかりいると聞いたのですが、もしかしてそのせいでは……」


 これでゴブリンが襲撃してきたら、副団長さんは救われるわけだ。自分のせいで起きている問題が小さいとわかれば、リュシアン団長様に普通に話して、混乱の精霊を引きはがしてもらうことができるだろう。

 そしてめでたしめでたしになる。


「個体数が増えすぎたのでしょうか? どちらにせよ、人を襲いやすい状態には変わらないでしょう。少しでも狩っておけるならそうすべきでしょう」


 イーヴァルさんがそう言って、そのまま前進することが決まった。


「戦闘になったら、なるべく私達の後方で木に背中をくっつけてじっとしていて。一人騎士を側につけるからね」


 フレイさんの言葉にうなずく。

 それから私は画面を消し、精霊達に手を振って歩き出した。

 だからその後の会話を知らなかった。


《木の精霊:まだレベルたりないよー》


《木の精霊:でもたおしにいくんだぞ》


《木の精霊:討伐者をつのるよー》


《木の精霊:はいさんかしまーす》


《木の精霊:じゃあとうろくしてね》


《木の精霊:ぼくはべつな騎士団にとうろくしたい》


《木の精霊:さいしょにここをえらでるからムリ》


《木の精霊:えー》


《木の精霊:わたしまだかいものしたいー》

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