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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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はじめての出動!

 そして画面の端に、Gと四角で囲まれたボタンらしきものが現れた。


「スイッチオン?」


 ぽちっと画面のチャンネルG押してみる。


「…………」


 でも何も画面に映ったりはしない。

 どういうこと? と思ったら、チャンネルGの結果が現れた。


《交信相手が範囲内に見当たりません》


「交信……チャンネル……え、無線通信的なもの?」


 首をかしげるしかない。

 一体何と通信しろというのか。精霊なら、しゃべると画面に表示されるし。


「ねぇ、どう思う?」


 カマドの中で、火の中で飛び跳ねながら、手をめらめらーっという感じで動かしていたゴブリン精霊を見つけて、尋ねてみる。

 するとこちらが話しかけているのはわかるのだろう。


 グッジョブ!と親指を立てた手を突き出した。

 ご機嫌そうだね!

 でも何もしゃべらない。無口なのかな。このゴブリン姿の精霊は。


 一緒に、頭にふわっとした炎のたてがみがある、赤いトカゲ姿の精霊がいた。

 あ、かわいい。これがたぶん普通の火の精霊なんだと思う。


「君は何か知ってる?」


 話しかけても、首をかしげてくすくすと笑うばかり。

 そうしてゴブリン精霊と一緒に踊り続ける。

 これは回答をもらえない案件のようだ。


 私は諦めて、明日持って行く分のお茶を作り、その日は休むことにした。

 片付けて、二階に上がった所でその人物と行き合う。


 オルヴェ先生から薬をもらいに来たのだろう。団長様がいた。

 目の下の隈は、昨日よりも良くなっているような気がする。けど、体調が悪いんだろうな。お薬を常用しているのなら。


 一体なんの病気なんだろうと思う。パッと見、健康そうなんだけど。

 とりあえず挨拶した。


「こんばんは団長様。お薬ですか?」


「ああ、そうだ」


 答えてから、団長さんが尋ねて来る。


「何か不足しているものはあるか? 明日は森へ行くんだろう」


「はい。でも今の所は大丈夫です。ポットも専用のものが欲しいなと思ったので、オルヴェ先生を通して商人さんに注文させてもらいました。支払いは私なので、安心してください」


 ポット一個なら、十分に買えるお金もある。

 何でも手作りだから、前世から考えると高いけどね。


 それに討伐者として雇われている間、お茶の研究をしたり振る舞うことを前提に、一週間ごとにお給金がもらえる。

 そして今回みたいに討伐に出れば、その分のお手当もくれるのだ。ポット一個ぐらい平気平気。


「……そうか。フレイがいるので万が一ということはないと思うが」


 それから団長様は、何かを言いかけるように視線をさまよわせてから、


「死なないようにな」


 と一言告げる。

 怪我をしないようにじゃなくて、死なないようにというところが、殺伐としてて妙に笑いそうになる。


「お気遣いありがとうございます」


 そう言って別れたものの、やっぱりちらっと団長様の手を見てしまった私だった。


 翌日、いつも通りに起きて、食事をしてから外へ出る。

 服はどうしようもないので、いつもの服の上からマントだけを羽織った。

 そして背負ったリュックに茶筒とポット、少しだけのお水。もしものための携帯食料。そして森の中に入るので、料理にしか使えないかもだけどナイフも腰に下げた。


 集合場所は、私やオルヴェ先生が住んでいる棟から出てすぐの場所。

 フレイさんが、あまり城の敷地内を歩き回らない私のために、配慮してくれたようだ。

 建物から出ると、鎧とマントを装備したフレイさんを先頭に四人の騎士と一人の見習い騎士がいた。


 というか、騎士にものすごく見覚えがある人が混ざっている。

 団長様の補佐、イーヴァルさんだ。

 長い黒髪が綺麗で、キューティクルが輝いてるわ……。お手入れをしていないのだとしたら、女性の垂涎の的だよねあの髪。


 でもなぜ彼まで一緒なんだろう。

 首をかしげるけれど、私を含めて六人がこれから冒険に出るメンバーだ。

 みんな強そうでとてもありがたいのは間違いない。

 私は頭を下げた。


「宜しくお願いします」


「そんなかしこまらなくて大丈夫だよ。さ、乗って」


 フレイさんは自分で引いていた馬に、私を乗せてくれる。

 ……でも今後のことを考えると、馬には乗れた方がいい。戻って来たら、練習できないかオルヴェ先生に相談してみよう。


 二度目ということもあって、私も前よりは緊張しなかった。

 そうして馬で、城を出て、森へ向かう。


 シグル騎士団の城の北西側には、大きな森が広がっている。

 前世ではあまり森というと馴染みがないけれど、平坦な場所に樹が林立している地域だ。

 樹海というよりも広くはないけれど、山に繋がっているので、高所から見ても、とてつもなく広く感じるし、地を歩いていくとやっぱり広大だ。


 だから行けるところまでは、馬で進む。

 警戒ラインは森の中央よりも奥だからだ。


「ということは、山裾の辺りにゴブリンなどが住んでいる、ということですか?」


「そうだね。こちらも目印を置いて、踏み越えて来た集団だけを討伐しているんだ。知性が高い魔物なら、意味を理解して踏み越えて来ないしね」


 会話に、イーヴァルさんが入って来た。


「フレイ、彼女は初心者ですからね。むやみに戦闘に参加しないように、敵を刺激したりしないように。はてまた、恐怖でおかしな所を逃げ回ったりしないように、しっかりと言い聞かせをしてください」


 おおっとぉ。ここで苦言をもらってしまった。

 あ、でも私の目の前で言うっていうことは、イヤミなんだろうか。

 何か反感買うようなことしたかな? そもそも接触がないんだけど。


「大丈夫だよイーヴァル。君だっているんだから、魔物が出てもすぐに殲滅はできるだろう?」


 フレイさんがにっこりと微笑んで言えば、イーヴァルさんは拗ねたように帰す。


「それはそうですが……」


「イーヴァルはとても強いから、頼る気満々だったんだけど」


「やると決まったからには、力を惜しむ気はありませんが……」


「なら大丈夫だよね」


「……あなたのような戦闘狂がいるのに、私がいる必要もないですよ」


 返事をするものの、イーヴァルさんの声はだんだん小さくなってしまう。やや恥ずかしそうに。

 フレイさん……人たらしの才能がおありです?

 どんどん棘が落ちていくイーヴァルさんの姿に、私は感心してしまう。


 あと戦闘狂ってなんだろう?

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