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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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世界を変えたその日

「……はっ」


 我に返った私は、自分の足元を見ていた。

 倒れて黒い塊になった、偽者のソラはもういない。だけど次の瞬間には、私は団長様に抱きしめられた。


「良かったユラ。危うくお前を失うところだった」


「え、団長様? さっきのも……?」


 あの場にいたのは、精霊王と私だけだった。

 ソラの偽者も一応精霊王に分類されていたので、存在していても『そういうものなんだろう』って思ってたけど。団長様が入ってこられたのはどうして?


「なんとか入り込めた。精霊達と精霊王の剣のおかげだ。……初めてこの剣に感謝した」


 そんな団長様の周囲には、きゃっきゃと笑いさざめく精霊さん達がいた。

 全員がゴブリン姿の精霊だ。

 肩からひらひらと舞い落ちて、泉の上で浮かぶ者。すぃっと空中を飛び回る者。きらきらと後光を背負いながら足踏みする者と様々だ。


 彼らは、私と一緒に異世界から来た、精霊転生した人達だ。同郷の私を仲間だからと助けてくれたんだろう。


「ありがとう」


 私は団長様の肩にいたゴブリン精霊を指先で撫でてから、団長様を見上げて言った。


「助けてくださって、ありがとうございます」


 思い出したら、なんだか涙が込み上げてきた。

 だって首を絞められて殺されかけるとか、手を離すわけにいかなくて抵抗もできないとか、恐怖でしかなかった。


 願いが叶っても、私は死ぬんだと覚悟もした。

 団長様やみんなが、これからも幸せに暮らせるならと思わなければ、とてもそんな覚悟は決められなかったもの。


 団長様が泣いてしまった私の頭を撫でてくれる。

 それだけで落ち着いていき、しばらくすると涙が止まった。


「そういえばミタスは……」


 フレイさんが拘束していた場所へと視線を向ける。

 そこには、黒いシミのできた地面と、困惑するフレイさんとイーヴァルさんがいた。


「消えたようだな。偽者の精霊王の意識を乗っ取っていたせいで、一緒に消滅してしまったのだろう」


 そんなことがあるのだなと、私は納得した。

 メイア嬢はその場で倒れていた。

 おそらくは、あの偽者のソラに魔力を奪われて気絶したのではないだろうか。


 そしてソラは姿を消していて……。

 澄んだ水面の上に伸びる木が、元のようにさやさやと風に葉を揺らしていた。



 ……この日、アーレンダールとタナストラでは、白昼夢を見た人達が頻発した。と後で聞いた。


 変な夢を見たという話が広まり、不思議だ不思議だとささやかれたものの、その印象は様々で……。


「なんか綺麗な男の人を見たよ。髪が長かった」


「え、小さい精霊がいっぱいいたよ。それで平和が一番だねって」


「なんか怖い夢を見たよ。国を滅ぼして自分が王様になるんだって」


 でも最終的には。


「なんか……昨日買ったお茶を飲みたくなったな」


 という感じになったという。

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