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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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副団長さんの悩み

「わかりました、それでかまいません。お約束しましょう」


「本当か!?」


 くわっと目を見開きながら、ハーラル副団長が顔を上げた。本当に驚いているらしい。


「言質はとったぞ娘!? 本当にいいんだな?」


 ハーラル副団長は「よし」とうなずいて普通に立ち上がった。


「では、秘密を知られたついでに、討伐者のお前に頼みたいことがある」


「頼みですか?」


 きたきた。そう思いながらも、私は何も知らないふりをする。


「そうだ。この精霊が離れる方法を見つけてくれ」


 そうしてハーラル副団長は説明した。

 ある日、討伐に赴いたらこの精霊がくっついてきていたこと。

 ハーラル副団長は精霊を見ることはできないけれど、この精霊の声だけは聞こえるらしい。

 なぜなら、


『あと三歩先でつまずく』

『今朝の抜け毛は10本』

『次の攻撃はあたらない』


 なんて直前に言う声は耳に届いて、その通りになるそうだ。

 ……こう、ものすごくちみちみとした嫌がらせだなぁ。ハーラル副団長も変なところで精神を消耗するらしい。


「それも大変つらいが、それ以外のことが何よりも問題でな……」


 ハーラル副団長が深いため息をつく。


「あの精霊がくっつくようになってからだ、この騎士団領の近くで魔物の巣で争いが起こりやすくなった」


 魔物達は、意外と仲間同士で固まって暮らすことが多い。

 その際たるものがゴブリンだ。

 集落を作るゴブリンは、同族で固まって狩りに出る。そんなゴブリンの集落が、騎士団領の森の奥などにいくつかあるらしい。


 ゴブリンはどういう発生をするものか、狩り尽くそうとしてもできない。

 そこで警戒ラインを越えて来たものを排除し、街道や森の外縁に入る者を守るというのが、騎士団の基本方針らしい。


 ゲーム的に考えると、倒しても時間経過でポップアップするんだろうなとか思うけど、リアルとしては、山とかもっと遠くから縄張り争いをしなくて済む場所へと移動しているんだろうな、と想像した。

 問題は、精霊がくっついてからというもの、副団長が警戒に出るとゴブリンの巣で混乱が起き、結果戦闘になることらしい。


 その時必ず、精霊の『争え……』という声が聞こえるそうだ。


「わしがこの精霊に取りつかれたせいで、こんなことを引き寄せているのかと思うと……。栄えあるシグル騎士団の長を務めた自分が、混乱の原因になっていると知られるのは……」


 それが嫌で、副団長はなるべく団長様と遭遇しないようにしているらしい。


「…………」


 私は口をつぐむ。かかわりはあるけれど、そうではないという結末なのを知っている。

 でも今すぐそれを明かすのはどうだろう。

 なぜ知っているのか説明できないし。できるだけ穏便に、団長様にその精霊を追い払ってくれるように頼める体制を整えたい。


 というかお約束を守るには、なんとか私の口から言わずに、ハーラル副団長とリュシアン団長様と遭遇させなくては。

 なにせこれは、ハーラル副団長とリュシアン団長様の仲を改善させるクエストだ。

 二人がちゃんと仲良しになってくれないと困るのだ。


「では、副団長さんが出ない時にもゴブリンや魔物が暴れ出せば、副団長様のせいではないということになりますよね?」


「今のところ、わしが出た時だけだ」


 力なくうなだれる副団長が、実にかわいそうだ。

 ならばと提案した。


「それなら、私が確かめてきます」

「そなたがか?」


 私はうなずく。


「もちろん秘密は守ります。私、副団長様の事情を説明せずに、ゴブリンの巣近くまで警戒に出られる方法があるんです」


「なんだと? まさか団長殿が、何かに気づいて……」


 私はストップと広げた手を伸ばして、言葉を止めさせた。


「そうではありません。どうも王都から視察しに来ることはご存じですよね? 雇った私に何もさせないと、何もないというのにつつかれる材料になるかもしれないからと、いずれ討伐に同行することになっていたのです」


 ただし、と続ける。


「私は戦闘はからきしです。なので団長様方も、できれば警戒出動くらいのもので済ませたいはず。そこを説得できれば、副団長様の秘密も話さずに済むでしょう」


「なるほどな……」


 ハーラル副団長はそれで納得し、私が様子を見に行くことを了承した。


 でもなぁ。きっと戦闘になるんだよね。

 そう思いながら、最後に一つ副団長にお願いした。


「あと一つ、お約束に変更をしてほしい点があります」


「なんじゃ?」


「その精霊が副団長様から離れたら、もう他の人に、精霊のことを言ってもいいとおっしゃって下さい」


 条件を出したのは、私のためだ。

 ハーラル副団長のクエストが終わる時は、既に団長様にバレていることになる。

 バラさないと話にならないものね。


 精霊にくっつかれていたからあんな態度をとっていたのだと、ハーラル副団長も説明するだろうし。

 もちろんハーラル副団長も、精霊さえいなくなれば言ってもかまわないかもしれないと思ったのだろう。


「うむ……。それならばまぁ、仕方あるまい」


「ありがとうございます。では、依頼をお受けいたします」


 さあ、クエストを受注したぞ!

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