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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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精霊王召喚します

「精霊王を召喚!?」


 何よりもそこに驚き、フレイさんの隊の人達は私を振り返り、またフレイさんを見てと大忙しだ。


「そういえば団長様は、精霊王の剣では何もできないのでしょうか?」


 もし団長様の剣で呼べるのならと思って聞いてみたが、団長様は首を横に振る。


「これは精霊王の力を剣にしただとか、精霊王とつながりがあるとは言われているが、今までこれで精霊王らしきものと接触した覚えは……」


 最後、団長様が言葉を濁してしまう。え、何かあったんですか?


「いや、一度だけ妙な精霊が姿を現したことがあるが、以後はこの剣の力が満たされていても、特に変化もなかった。精霊王に文句をつけたこともあったが何もなかったし、精霊達にもこの剣では呼べないと聞いている」


「そうなんですか……」


 名前からすると、何かありそうだと思ったのだけど。違うのか。ちょっと残念。

 フレイさんの方は、ようやく隊員さん達が納得してくれたようだ。


「ユラ、がんばれよ」


「菓子も魔法薬になるとは思わなかったが、精霊に使うなら菓子なんだろうな。うちの故郷でも、精霊のために夏至の夜には菓子を窓辺に置く風習があるからな」


 そんな風習の存在する土地があったんですね。

 おかげですんなりと受け入れてくれたようで良かったけど、この呼び出し方を見て、ドン引きされないといいな……。


「それでは、試してみますね」


 私は近くの木々にくっついている葉っぱの精霊達や、緑の服を着たゴブリン精霊を呼んだ。


「あのね、ソラを呼んでほしいんだけど、これ何個でできる?」


 ここの精霊は、みんな普通に会話ができるらしく、ステータス画面の表示以外にもちゃんと声として返事が聞こえてきた。

 魔力が満ちているとかいう場所だからかな?


「えー、たぶん十個ぐらい? ぴかぴかのやつね」


 ぴかぴかのクッキーで十個とか、前よりも高値になりましたねソラさん。だんだんトップに上り詰めたホストに貢いでいるような気になってくる。

 いや、貢いでいるのは魔力ですけどね。それで召喚できるんだから、正当な対価なんでしょう。


 まずはクッキー一つ一つに魔力を込めて行く。

 ハンカチを広げて地面に置いた上に、十個置いたクッキーが、一つ、二つと光輝きはじめた。


「あれ、どういうことですかね?」


「クッキーだろ? そう、ちょっとおかしなクッキー……」


「考えるな。常識でとらえようとすると、こちらの頭がおかしくなる」


 背後で団長様達のそんな会話が繰り広げられていた。

 ちらっと振り返ったら、イーヴァルさん達の目がうつろになっていた。そして団長様、なんかひどくないですかその発言。


「こやつがおかしいのは元からだ」


 ふんっと鼻息を吐いたのは火竜さんだ。うん……そんな感じで諦めてくれると嬉しいです。

 とにかく私はクッキーに魔力を込めていった。


「今日は特別なおやつがいっぱいだ」


「素敵なおやつ」


「最高のおやつ」


「魔力がいっぱい栄養いっぱい!」


 踊っている精霊が、クッキーをひとかじりすると、ふっと姿がぶれるようにして二匹、三匹と数を増やしていく。

 やがて十数匹にまで増えた精霊が、ハンカチの上の残り九個のクッキーを囲んでくるくると回った後、ぶわっとクッキーが光り輝いた。


「おとぎ話の世界だね……」


 フレイさんのつぶやきが聞こえた。

 だけどまぶしすぎて目を開けていられない。顔をそむけた私は、ふっと光が消えたことでようやく前に向き直った。


 ハンカチの前に膝をついていた私は、最初に白い長衣の裾が見えた。

 はっと息を飲む音が後ろから聞こえてくる。


「剣の持ち主の姿を写し取ったか」


 火竜さんがそんなことをつぶやく。

 その言葉で、私は納得した。

 精霊王の剣というのは、何かしらソラとつながりのある代物だったのだろう。


 そして精霊であるからには、属性で姿かたちが左右されるんだろうけど、精霊王は属性に寄らない代わりに、精霊王の剣に影響されるのかな?


「久しぶりだね、ユラ」


「久しぶりソラ」


 ソラが私を微笑んで抱きしめる。

 のだけど、ちょっと待って。今は私ひとりじゃなくて……。

 ゆっくりと団長様を振り返る。なんだか団長様の表情が険しい。


「ユラ、まずは離れろ」


 言われて私はソラに抱き着かれていた状態から、一歩下がって離れた。

 ソラがちょっと切なそうな表情をするけれど、人と同じ姿じゃこれは良くないですよね。小さなゴブリン姿だったらまだよかったけど。


 イーヴァルさんと騎士達はあっけにとられている。

 フレイさんの方は、ぼんやりと見つめてからソラに一礼した。


「精霊王様……」


 団長様がフレイさんに尋ねる。


「間違いないのか?」


「一度だけ見たことがあります。姿は以前と違いましたが、感覚的に精霊王様に間違いありません」


 フレイさんが断言した。


「あなたは精霊王……でいいのね? ソラ」


 剣の持ち主とつながっているらしいけど、ソラ自身は好きに出現している。だから剣にしばられている存在ではない。

 となれば、むしろ剣を仲介にして団長様と精霊王のソラが繋がっていると考えた方がいいだろう。


 ソラは微笑んでうなずいた。

 以前はほとんどこういう問いに答えてもらえなかったけれど、何かの条件を満たして秘密が解禁されたのか、今回は肯定してもらえた。


「その認識で間違いないよ」


「でもおかしいことがあるわ。団長様とつながりがあるのはわかったけど、私とソラの間は?」


 私の魔力が増える度に、ソラや精霊達も影響されて大きさや衣装なんかが変わって行った。それはどうして?


「君が……魔女だからだよ、ユラ」


 ソラが私にしか聞こえない声でそっと答えた。でもそれじゃわからない。


「私は精霊の一種なの? でも精霊が一体だけ力を得たからって、ソラやほかの精霊に影響を与えるもの? むしろソラだったら……」


 精霊王が力を得たから変化した、というのなら納得できるのだけど。

 言いかけて私は言葉を自分で止めた。


 魔女は精霊と融合せねばなれない。

 そして膨大な魔力を自分のものにできる上、国を滅ぼすこともできる力を持っているのだ。

 しかもソラは魔女が将来破壊を行うのを知っていながら自分でメイア嬢を直接止めないところから、魔女になってしまった人を止める力は精霊王にはない?

 なんだかそれって……。


「魔女って精霊王と同等かそれ以上の……」


 存在という位置づけみたいな?


「ちょっと種類が違うかな。でも君に関しては、『僕と相互に影響を与え合って』いるんだ」


「影響を与え合って……る?」


 聞き返すが、ソラは苦笑いするばかりで明らかな答えは返してくれなかった。


「それよりユラ。君を害しようとしている者が近づいている」


「え!?」


 ソラの言葉に、団長様が険しい表情をした。

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