表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

224/259

先にお二人に事情説明をしないといけません

 翌日は、本当に本当に団長様と顔を合わせにくいな……と悩んだ。

 あんなことがあったのに、平気で「おはようございます!」なんて言える強心臓は持ち合わせていない。けど、避けているわけにはいかなかった。


 だってお茶会について打ち合わせをしなくてはならないんだもの。


 しかし方法を考えあぐねていた。

 そんな喫茶室の開店前、扉の近くにいた召使いさん達がはっと息をのんだ。開店を待っていた貴族令嬢や貴婦人までもだ。


 何か問題でも起こったか。事態を把握しようと扉の近くまで行くと、そこにはフレイさんと立ち話をしている団長様がいた。

 女性達の視線が、二人に釘付けになっている。


 私は納得した。フレイさんがいると、手伝いの召使いさんや女官さんが仕事中に盗み見ることが多い。ほら、部屋の中に綺麗な猫がいたら、つい振り返ってしまうでしょう。そんな感じで。

 団長様がいることで、その影響がさらに強まったのだ。


 しかも小さな火竜さんを肩に乗せているので、注目度は倍。

 形はまちがいなく竜なのに小さいからか、周囲の女性達は興味津々と言う目をしていた。怖がっている様子はない。

 ただし飛ぶとなると別だ。


 バサッと団長様の肩から飛び立った火竜さんが、私のところにやってくる。

 ひゃっ! と周囲で声が上がったので、私はいくらか周囲と離れるため数歩前に出て火竜さんを肩にお迎えした。


「こんにちは火竜さん、お加減いかがですか? そういえば餌の方は足りています?」

「食事係は精霊王の剣の持ち主にさせている。それよりお前は何だ、我が近くにいるのがわかっていながら挨拶にも来ないとは」


 火竜さんは拗ねているようだ。


「私とお話したかったんですね……。すみません気が利かなくて。寂しがらせてしまったんですね。今日からはちゃんと、火竜さんとの時間を作りますから」

「さびっ!? そんなことはない! 勝手に話を作るな魔女!」

「でもお話したいって……」

「我の面倒をみると言ったのに、放置して遠方へ行ったのだから、その分の詫びなど聞かせるものであろう、普通!」

「それは申し訳ありませんでした火竜さん」


 やっぱり寂しかったというように聞こえるんですが……。火竜さんは恥ずかしがりなんでしょう。

 火竜さんと話をしていたら、近くで吹き出した人がいた。


「あいかわらず、火竜と楽しそうに話しているね。おおよそ、火竜が振り回されているっぽいことがわかるからおかしくて、つい笑ってしまうよ」


 フレイさんに言われて、私はちょっと口をとがらせる。


「振り回していませんよ? 火竜さんが素直じゃないだけです」

「いや、お前もたいがいだろう」


 あきれた顔をしているのは団長様だ。……うん、いつも通りっぽい。そりゃ、これだけ大勢の前だったら、昨夜みたいな話はしないよね。


「それより、例の対策は上手くいったのか?」

「その件について、お二人にご相談があるのですが」


 気まずくてもなんでも、これは打ち合わせなくてはならない。


「では少し顔をかせ、別な場所で聞く」

「あ、はい」


 ぞんざいな言い方をしてくれてありがたいです。用事がある上、色事じゃないって周囲にわかるでしょうから。

 団長様とフレイさんが話しかけてくれてから、背後からの視線がちょっと痛くって。ハンカチを噛みそうな顔をしてる令嬢までいるのだ。

 なんにせよ、身の安全のことを考えると、やはり嫉妬される度合いが少ない方が助かる。


 とりあえず喫茶室をベアトリスさんに一時任せて、団長様に指示されて近くの庭まで出た。

 周囲に誰もいないことを、近くの薔薇の側にいた精霊さんにも確認した上で、団長様とフレイさんに話す。


「ええと。実はこの王宮に沢山魔物がいることが判明しまして」

「え?」


 フレイさんは気づかなかったようだ。

 今のところ、誰も物理的に攻撃されていないものね。王宮で生命の危機におちいりそうなのって、今のところ私一人だけだし。

 しかも精霊はあの薔薇の魔物とは仲がいいようだし。もう一方には気づいていなかったようだ。


「魔物と戦闘にでもなったのかい?」


 フレイさんの問いには首を横に振る。


「いいえ。ケーキを食べられまして」

「ケーキ……」


 とりあえず私は、団長様には話したところまで一気に説明する。

 その上で、魔物との会話から判明したことを話した。


「このようなわけで、どうも王宮内には二種類の魔物がいるらしいのです……って、フレイさん?」


 フレイさんが脱力しながら、近くを通りがかった風に飛ばされている精霊を掴まえた。


「君ら、どうして魔物のことを話してくれなかったんだい?」


 精霊は首をかしげてにっこりとわらっている。

 答えを聞いた団長様とフレイさんが、げっそりとした表情になった。え、なんて言ったんですか?


「聞かれなかったからって……。まぁ君らはそういう存在だよね、うん。わかってたよ」


 フレイさんは乾いた笑いを漏らす。

 あー……精霊ってけっこう、聞かない限り答えない、を発動すること多いですよね、わかります。私としては、精霊さんに何もかもはなされると困ることもけっこうあったりするので、多少秘密主義でも助かってます。


 魔女のこととか魔女のこととか。


 他の精霊と会話できる人に、聞かれもしないのに答えられたら困るもの。

 私が魔女だということは伏せてもらってはいるけれどね。上手い聞き方をしたらそれだってバレそうだし。


「まぁとりあえず。もう一方の正体がわからない魔物から明日のお茶会を守るためにですね、魔物の協力を取り付けましたので、薔薇の姿をしているものについては、攻撃を控えていただければありがたいです」

「……とりあえずわかった」


 団長様は渋い表情でうなずき、


「魔物に手伝われるって……ほんと君はびっくり箱だよね」


 フレイさんは苦笑いしながらうなずいてくれた。


「それで、問題の魔物が現れたら捕まえていただきたいのです。人間の魔法使いが呼び込んだというので、きっと今回のことにも関係していると思うので」

「不和の種として、ユラさんが利用された……ということかい?」

「それだけかはわかりません。私が……アレであるからと、攻撃する目的で、私を潰すために王国の中枢にいる人々を操作しようとした可能性もあります」


 私が「魔女だ」という理由で標的になるとしたら、メイア嬢の邪魔をする私が邪魔で、排除するためとしか考えられない。


「その可能性が一番濃厚だろうな」


 団長様もうなずいてくれたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ