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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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チャンネルAを開いたら

 しばらくうめき声をあげていたら、外から扉をノックされた。


「はい?」

「お客人……体調がお悪いのですか?」


 外で見張りをしている方に、心配をさせてしまったらしい。ごめんなさい。


「すみません、大丈夫です。その、思い出し笑いをこらえてました!」


 適当な言い訳をすると、「は、はぁ……。お大事に」というあいまいな返事が聞こえてくる。この言い訳で納得してもらうのは無理だったようだ。でもそっとしておいてくれたので、よかった。

 気づけば気持ちが落ち着いてきたので、まずはチャンネルAを確認することにした。


 お茶を注いだうえで出たのだから、間違いなくあの薔薇の魔物のはず。Aっていうのが何の略なのかよくわからないけど。

 ゲームの記憶で近いものを探すとしたら、植物系の魔物にアルボルってのがいたはず。生い茂る草みたいな魔物で、わさわさしながら移動し、草が伸びて攻撃してくるやつだった。その近縁種? だとしたらAでも納得だ。


 話の内容が聞こえると困るので、部屋の奥に移動してステータス画面をオン。

 気合を入れるため、自分の頬を一度叩いてからボタンを押す。


「では、ぽちっとな」


 とたん、目の前にポップアップ画面が出てくる。

 そうして表示されたのは……。


《アルボルA:あーああー》

《アルボルB:それはーああー愛―》

《アルボルC:愛―それは世界のしんじつー》

《アルボルD:だけどー打ち明けられないー魔女―》


「まじょっ!?」


 一体何を話し合っているのかと思ったら、これもしかして!


《アルボルA:男の伸ばした手はーああー届かないー》

《アルボルB:魔女は―駆け去りー》


 思わずチャンネルボタンを押して、会話の表示を打ち切った。


「ちょっと待って……これ、魔物、よね?」


 自分の見たものが信じられない。魔物だから、もっとゴブリン的な会話をすると思ってたんだけど……。


「いや、ケーキ食べるような魔物だし、いつも薔薇に擬態しきって何もしてないみたいだし、あるか」


 とにかく普通の魔物じゃないのは確かなのだ。精霊さんとも仲がいいみたいだし。


「よし」


 私は深呼吸して、もう一度ボタンを押す。


《アルボルC:ねーさっきの、魔女の声だった》

《アルボルA:間違いない》


「うぐ……」


 やっぱりあれ、私と団長様のこと? ていうか団長様、私を呼び止めようとした? それを見もせずに走って逃げてしまったんだとしたら、申し訳ない……。

 いや、今は団長様とのことは忘れて、魔物達との会話をするのだ。


「あのー」


《アルボルA:あ、魔女の声だ》

《アルボルB:どこから話しかけてる?》


「ええっと、あなたの心に直接……」


 どういう仕組みなのかは私もよくわかってないので、適当なことを言ってみる。


《アルボルABCD:ふーん》


 深く追求はされなかった。そして意外と普通に会話できるので、気になったことをたずねてみた。


「ところでなぜ薔薇の姿をしているんですか? 普通のアルボルってもっとこう」


《アルボルC:あのもっさーとした草、芸術的じゃない》


 芸術的と言いましたよ、魔物なのに!


《アルボルD:人間って、雌雄の組み合わせで薔薇の側に居たがる》

《アルボルA:観覧に、最適》


 おい、デバガメですか?


《アルボルA:特等席》

《アルボルC:薔薇に擬態するの、大変だった》


 薔薇になったのがそんな理由だったとは……。

 なんか、聞かなくてもいいような気がするけど、疑いが晴れたわけじゃないので質問してみた。


「じゃ、人を争わせようとして誰かを敵視するように仕向けたりとかは……」


《アルボルC:それ、特等席に座れる?》

《アルボルA:略奪愛?》

《アルボルB:略奪は、敵視よりも魅了させた方が》

《アルボルD:自然な形を、観察したい》


 恋愛模様の観覧目的でも、しないってことはわかった。だとすると……一体どうして。そう思ってたら。


《アルボルA:そう言えば、俺、略奪された》

《アルボルBCD:!?》


 魔物が略奪愛!?


《アルボルA:お水係が今日は来なかった。誰かに略奪されたに違いない》

《アルボルC:あーお水》

《アルボルB:あの人、恋人いない》

《アルボルD:かわいそう》


 お水係? ……なんか一人、それっぽい人に心当たりがある。けど違うかもしれない。


「それって庭師のこと? 庭の植物全部にお水をあげてる人なんだけど」


《アルボルA:庭師? 知らない人》

《アルボルB:お水係はよく王子って呼ばれてる》


 エリック王子……魔物にお水係扱いされてるよ! それにしても、恋人いないんだ……。変な情報を知ってしまった。でも王子だし、そのうちいいところのお嬢様と結婚するんだろうし、むしろ恋人いない方がいいのかもね。


《アルボルA:でも恋敵に心当たりはある》

《アルボルB:引き裂かれるー二人―》

《アルボルC:もしあなあがー人でーなければー》

《アルボルD:もしかしてそれ、人じゃないやつ?》

《アルボルA:そう、俺、魔物同士で彼を取り合い》


「はい!?」


 エリック王子って取り合われてるの?


「魔物にモテモテ……って、まだこの王宮に他の魔物がいるんです?」


 大問題だよ! 王宮に魔物がいすぎ問題!


《アルボルD:いる。新入り》

《アルボルA:つい最近入って来た。なんか人間の魔法使いが呼び込んだっぽい》


「作為的犯行……?」


《アルボルB:よく人間を嫌い合わせようとしてる》

《アルボルC:最初は恋の破局を見られて面白かった》

《アルボルD:けどそればかりじゃ面白くないから、邪魔するようにしてる》

《アルボルA:葉っぱではたくとよく落ちる》


 虫みたいな扱いですね。


「それはどんな魔物で?」


《アルボルB:んー、なんか幽霊みたいな》

《アルボルA:あんまり見た事ないけど、たぶん魔物っぽい》


 ……魔物じゃない疑惑まで出てきたんですが。

 でもこれ以上は、この薔薇アルボル達からは聞き出せないようだ。なので、私は頼みごとをすることにした。


「では明後日、ある場所で、その魔物っぽいのを私の近くから追い出して、近づけないようにしてほしいんです。何か代わりにさしあげますので、やってもらえないでしょうか?」


《アルボルD:お水係来ないから、代わりにあのケーキくれるなら》


 紅茶入りケーキがお気に召したらしい。


《アルボルA:あの茶色い水でもいい》


 紅茶を茶色い水呼びされると微妙な気分になるけど……まぁいいです。


「わかりました。事前に一度差し上げて、後からさらに報酬としてケーキと紅茶をあげますね」


 その後、彼らの会場までの移動について話した後、私はようやく就寝したのだった。

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