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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

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お茶会の日が決まったみたいです

 結局その日は、団長様と再会することはなかった。

 陛下と会ったり、忙しかったのだろう。


 火竜さんとも会うのは当然無理だ。

 団長様に従っているというふれこみの火竜さんが、私の周りばかりうろちょろしていては、さすがにおかしい。

 会話できるんですーと話したら、魔女疑惑で凝り固まっている元老院の人達が、どんな方向に思い込みを暴走させるかわからないし。


「ま、明日には会えるでしょ。ね?」


 いつの間にか膝の上にいたゴブリン精霊に言うと、もちろんだよ! とばかりに親指を立てた手を突き出してくる。


 それを見たら安心して、私は早々に就寝した。



 翌日。

 私はとりあえず喫茶室を前日と同じように運営を始めた。

 この日来てくれたのは、白髪の上品そうなイセル侯爵夫人だ。


「まぁすごい盛況ね。アネーヴェ夫人は本当に火付け役がお上手で」


 くすくす笑いながらお茶を口にするイセル侯爵夫人は、満席になった上で、廊下に順番待ちをしている貴族女性の付き人の姿を見つつ、そう言った。

 でもイセル侯爵夫人も、令嬢を一人連れて来ていた。

 今その令嬢は、イセル侯爵夫人の知り合いらしい女性と彼女が連れていた青年と一緒のテーブルにつき、お茶を楽しんでいる。


「あの二人ね、幼馴染なのよ」

「初対面の方ではないんですね?」


 ここをお見合い会場にするのなら、顔だけ見たことがある相手か、会ったことがない相手と引き合わせるのだとばかり考えていたので、ちょっと意外だった。


「知り合いだからこそ、改めて……ってなると尻込みするみたい。でもいい組み合わせだからと思って、あまり肩ひじ張らないけれども『そういうニュアンス』があるとわかってる場に連れて来たのよ」


 イセル侯爵夫人は実に楽しそうに話してくれた。


「そうそう、私、今日はあなたにもお話があったのよ」

「どういったお話でしょう?」


 首をかしげる私に、イセル侯爵夫人が告げた。


「陛下が、男性方とのお茶会の日をお決めになったようよ。喫茶室の評判が想像した以上に早く広まったから、三日後ぐらいでいいだろうって」

「三日後ですか」


 思ったよりも早い。そう思っているのを、イセル侯爵夫人も見抜いたようだ。


「私も少し早すぎるように感じたのだけど、どうも陛下のお茶会相手の方々が、じっと陛下の判断を待つのが嫌になったみたいなの。ここに使うお菓子にも手を出させようとしていた人がいるらしくてね」

「え、お菓子にですか!?」


 イセル侯爵夫人がおっとりとした笑顔のままうなずく。


「だから、三日後のお茶会の時には、用心した方がいいでしょうね」

「教えてくださってありがとうございます……」


 お礼を言いながら考える。

 とはいってもどうしたらいいのやら。

 今回の邪魔をしようとした件は、陛下が阻止してくれたから、今後はさらに警戒してくださるとは思うけど。


 その時にふっと、テーブルに飾っていた薔薇に、ゴブリン精霊さんがいるのを見つけた。

 精霊さんはにこっと笑って何か言っている。

 こっそりとステータス画面を出してみると……。


《おやつ、作る? いっぱい?》


 食べたいのかな?



 そうしているうちに、喫茶室にフレイさんと見知らぬ騎士さんが二人ほどやってきて、私は陛下の部屋に呼ばれた。

 私はその場をベアトリスさんに任せて、陛下の呼び出しに応える。


「久しぶり、ユラ。元気にしていたみたいね?」


 陛下が待っていたのは、人と会う応接間の一つのようだ。

 いくら可愛がっている甥が保証している人間とはいえ、執務室に平民の娘をほいほい入れるものではないだろう。


「陛下のご配慮のおかげで、つつがなく過ごさせていただいております」


 貴族の礼儀作法とは違うかもしれないが、そう答えて私は一礼した。

 でも不作法なことはしていない……と思う。陛下と一緒に、先にテーブルの前に座っていた団長様が、特に表情を変えたりもしなかったし。


 さらにはテーブルの上に火竜さんもいたのだけど、こちらはフンと鼻息を吐き出す。

 いつも通りのツンツンぶりだけど、大人しくしてくれているようだ。

 団長様と話せるようになったんだから、まぁ、無茶をしようとしても団長様が止めた上で説得できるものね。


「とりあえずお座りなさいな」


 陛下にうながされて、私は同席させてもらう。

 テーブルの上には美しい花が飾られたお菓子や、花びらの砂糖漬け、スコーンにケーキが並べられて華やかだ。すぐに紅茶も出されて、優雅なお茶会そのものといった雰囲気になる。


 ただ給仕をしてくれた侍従さんが、火竜さんを怖がっておっかなびっくりだったけど。陛下が人払いをすると、ほっとしたように退出していった。

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