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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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他のプレイヤーは!?

 大きな黒い扉は、何の材質なのか木製の手触りなのだけど、鉄っぽく見えて不思議だ。

 フレイさんがノックして中に入るのに続く。


 中は小さな会議ができそうな広さがある。私が一人でここで事務仕事をしろと言われたら、少し広くて不安になりそうだ。

 団長様が広くて寂しいだなんて思うわけがないんだけど。


 その団長様は、扉と同じ材質なのだろう、黒い木製の机で書き物をしていた。

 重要な記録などは綺麗な紙を使うけれど、団長様も報告書など日常的な書類は、わら半紙みたいな紙を使っているみたいだ。まだ小さかった頃、小学校で見たプリントっぽい生成りの紙を見てそう思う。


 私がオルヴェ先生からもらった紙とか、今までの人生で使っていたのも全部わら半紙だ。

 この世界にはインクペンはあるけれど、わら半紙だと書きにくいのよね。私三枚に一枚は穴を開ける自信がある。団長様って綺麗に書けるのかしら。


 変なことが気になったけど、それは緊張のせいだと思う。こう、意識をそらしたい。

 だって団長さんとオルヴェ先生と、あまり話したことはなかったけど長い黒髪の人がいる。

 団長様は、フレイさんから報告を受けてうなずいた。


「これで、騎士団所属の人間ということにできたな」


「変な査察を回されたりして、いちゃもんつけられることは避けられましたね」


 そう言ったのは、黒髪のイーヴァルさんという団長様の補佐役をしている人だ。このイーヴァルさんも私より年上だろう。団長様より上かも。


「しかし、騎士団に一般人を所属させるのは珍しいことです。そこもつつかれないようにしたいですね。なにせ討伐者だって、滅多に雇わないのですから」


 でも続くイーヴァルさんの言葉に、私は目を丸くした。

 ……どういうこと?


 今すごく聞き逃すわけにはいかない、とんでもないことを耳にしたんだけど。

 討伐者だって、滅多に雇わないですと?


「え、あの……討伐者って雇うことないんですか?」


 あまりにも驚いて、私はつい尋ねてしまう。

 雇われたばかりの下っ端が、ここで発言していいのかわからないけど、でも聞いておかないとまずいと思う。

 すると団長様がうなずいた。


「まず滅多にないな。よほどの大規模な魔物の群れに対処するのではない限り、騎士団の人間で対応できるし、それが仕事だ」


 ……確かにそうだ。

 騎士団ってかなり人がいる。

 100人以上いたら、わざわざ外部の人を雇わなくても、多少のことには対応できるわけで。戦争が起こった時にも対応できる人数がいる以上、人手が足りないなんてことはありえない。

 ゲームの知識があるせいで、雇うものだと決めつけていただけだ。


 で、でもプレイヤーはどうするの?

 沢山の討伐者がいて、いろんなクエストをクリアしていたのがゲームだ。もし同じように進むのだとしたら……。


 誰が、クエストをクリアするの?

 誰が魔女を倒すの?

 このままだと、プレイヤーのするべきクエスト、全部私がすることになるの?

 というか私、生産職みたいなもので……。どうやって戦うの!?


 さっきまでは、プレイヤーの補佐をして、あと展開に関する情報をどうにか流して先に手を打ってもらえばいいかなとか、敵を早々にやっつけてもらおうと思ってたのに、計画が、計画が……。

 私がショックを受けている間にも、話は進む。


 ……落ち着こう私。

 まずは目の前のことに対応しよう。


「雇用した以上、視察の時に討伐への出動があれば、連れて行くことになるだろう。けれど必ず守ると約束するし、護衛はつける」


 団長様の言葉に、うなずく。

 一生病院生活させられるより、自由にできる方がいい。おばあちゃんの家のことだって、見に行けなくなっちゃうものね。お墓参りもできなくなるなんて、困るもの。

 そのためなら、がんばって討伐について行く。護衛までつけてくれるくらい、配慮してくれるんだもの。


 ただちょっと、そんなに配慮してくれて大丈夫なのかなと思わなくはないけど。

 そんな疑問を察したかのように、団長様が続けた。


「精霊が視え、声が聞こえることがわかった以上、その人材を留めるのは騎士団にとっても利益になる。そこは心配しなくていい」


「それでは契約を行いましょう」


 イーヴァルさんがそう切り出して、件の測定石を寄越すように指示してきた。

 首から下げていた水晶を渡すと、イーヴァルさんはそれを団長様に渡す。

 団長様は右手で赤い水晶を持ち、執務机に飾っていた青紫の水晶に左手をかざした。青紫の水晶がぼんやりと光る。

 そこからふわりと舞い上がるように現れたのは、光る蝶のようなもの……たぶん精霊だ。


 私は感動した。

 ゴブリンじゃない精霊って綺麗!

 いや、あれもあれで私に特殊能力を与えてくれているし、紅茶のことも教えてくれるから助かってるんだけど。

 精霊のイメージとして、可愛くいてほしいっていう希望がまだ、心にくすぶってて……目に優しいし。


 綺麗な蝶はするりと、団長様の右手に載せられた赤い水晶に吸い込まれて行く。

 一瞬ちかっと光ったので、これで契約とやらが済んだんだろう。

 団長様が赤い水晶を返してくれながら言った。


「今の精霊も、見えたか?」


「はい、とっても綺麗でした! ゴブリンじゃなかったです!」


 感動にはしゃぎそうになったのを抑えたつもりだったけれど、ちょっと声が大きくなってしまった。


「精霊なら全て見えるようだな。では、精霊の問題が起こった時にも、出動を要請するかもしれないが、宜しく頼む」


「こちらこそよろしくお願いします!」


 前世の癖が出たせいか、いきおいよくお辞儀してしまう。

 でもこれ、この世界ではかなり丁寧なお礼の仕方にあたるので、


「感心感心……」


 イーヴァルさんには好評をもらえたようで、そんなことをつぶやいているのが聞こえた。

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