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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました
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スキルが使えることがわかったら

 おかげで、団長様にお茶を作って飲んでもいいという許可をもらった!

 ばんざーいと喜ぶと、団長様とフレイさんに苦笑いされた。


「そんなに嬉しいのか?」


 団長様にそう言われたので、大きくうなずいた。


「もちろんです! 紅茶が飲みたくてたまらなかったので!」


「ああ、お前がどんな風に作ったか、どれだけ素晴らしいかを語っていたあれか」


 私の演説を聞かされたことがある団長様は、納得してくれたようだ。


「でも美味しくないですか? 私はあれが大好きなんです!」


 前世でも元から紅茶派なんです!

 最初は普通に、コーヒーが苦くて飲めなかったからっていうだけだったんだけど、その不遇さに心引かれて……いつしか紅茶を愛するようになってしまったのだ。


 なにせ喫茶店に行くとコーヒー優遇で、会社でもまず出て来るのはコーヒー。

 苦手な人もいるはずなのに、問答無用でコーヒーだ。


 それに喫茶店でも、コーヒー豆に注ぐ情熱を、ほんのちょっとだけ紅茶に分けてほしいお店も多い。

 ミルクティーを頼んだらコーヒーフレッシュを添えられて終わるとか、ものすごい渋くなるほど濃く苦く紅茶を入れるとかしないでくれれば……。


 おっといけない。前世での悔しさを思い出してしまった。

 ここでしっかりと、団長様を紅茶の沼に引きずり込んでおきたい。そう思って勧誘をするのだけど、団長様は意外とあっさりとうなずいてくれた。


「そうだな。わりと好みではあった」


「おおおおおおおおお! ありがたやー」


 やった、仲間ができた! しかも騎士団長様だなんてすごい!

 思わず拝んでしまうと、団長様に笑われた。


「私を拝んだって何も出ないが」


「仲間が出来ただけでも十分なんですよ!」


 熱く主張すると、団長さんが「そうか?」と引き気味になった。いけないいけない。驚かせないように、少しずつ紅茶仲間としてしっかり定着していただかなくては……。

 脳内で盛り上がっていると、団長様がつぶやく。


「むしろ、ここまで魔法と同等の効果がある薬のようなものが作れるのなら、正式に騎士団に所属させられるのではないですか?」


 応じたフレイさんの言葉に、首をかしげる。

 え、どういうこと?

 それが顔に出ていたんだろう。フレイさんが説明してくれた。


「君を、騎士団の補助団員という形で雇う、ということだよ」


「ほじょだんいん?」


 今も騎士団に雇われている状態だと思っていたけど、違うのだろうか。

 復唱した私に、さらにかみ砕いてくれる。


「今の君は、騎士団の活動をしない下働きとして雇っている状態になる。でもそれだと、通いではなく騎士団の城で暮らしてもらうには、ちょっと理由が弱いんだ」


 フレイさんの話によると、保護という形で城に置くにも限界があるという。基本的には町の療養所などへ送るからだ。

 長期間、外部の患者を入院させ続けて面倒を見るというのは、想定していないらしい。

 今回のように魔法が関わるものの被害者は、王都の魔法使いの研究所などに送られるのが常だとか。


「しかしあそこは、命にかかわる重病人か、遺体を運ぶのが通例でね。君の場合は何の影響もないかもしれなかったし、研究所行きとなると、診断や調査はつぶさに行われるかもしれないけれど、研究員が飽きるまで帰してくれないこともある」


「それは……軟禁とかいうものでは……」


「平民の場合は、魔法使いの要求を拒否できないだろう。ただでさえ研究所員は貴族が多いからね」


 身分の壁……。

 ゲーム的にはファンタジーといえば王様がいてお城がある世界だから、と軽く考えてしまうけれど、実際に生きているとままならないことも多い。

 やっぱり平民は不利なんだよね。


 ただ実際に生きてみると、身分制度が崩れない理由もわからなくはない。

 王侯貴族も、農民に被害が出ると食料に問題が発生するってことを、身に浸みている。だから国王や貴族は、しっかりと安全対策をし、農民は守られていることが目に見えるから、税を払うという気持ちになる。

 だから身分制度と聞いて想像するよりは、お互い様という意識があるっぽい。ここは、魔物のいるファンタジー世界ならではかなと思う。


 そもそも魔物がいると反乱を起こすのが大変だったり、伝達に関しても魔法に対してお金が出せる貴族や王族が有利だったりして、農民一揆を起こすハードルが高いってこともあると思うけれど。

 まぁ、全くないわけじゃない。


 討伐者という、ファンタジーでよくいる冒険者の魔物討伐専門みたいな人達は、国の兵士よりも強いことも多いし、魔法使いだっている。

 彼らに依頼をかけて、貴族を追い落とした地域もあったとか。

 思考に傾いていた私の気持ちを、フレイさんの声が引き戻す。


「だけど君は、重病というわけではなかった。拉致した犯人たちも魔法は失敗したと判断したのだから、本当に何もなければ一月ぐらいで観察期間は充分だと思っていたから、研究所へ連絡はしなかったんだ」


 はい、その方がいいです。

 ありがとうございますと表現したくて、私はうんうんとうなずいた。


「でも、近くこの騎士団に国王の代官が視察に来るという話が出ている。それに君に新しい能力がついたということ、精霊が見えるということは……やっぱり、禁術の影響を考えるべきだと思うんだよね」


「ですよね……」


 それが原因としか考えられないわけで。

 ……ちょっとだけね。転生したからかなと思ったけど、記憶取り戻すまでは全くもってそんな兆候なかったから、たぶん違う。

 そこで団長様が言った。


「フレイの提案は、お前に魔法付与されたものを作る能力があるのなら、魔法を使える討伐者として、騎士団に正式に所属させよう、というものだ」


「討伐者!?」

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