表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第三部 紅茶の魔女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

167/259

未来を知る……存在?

※書籍化することになりました。詳しくは、活動報告に……。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/131652/blogkey/1949827/

 急に回復したのは不思議だったけれど、それで困ることもない。

 それに少し元気になったので、そのまま火竜さんに質問する。


「さて教えて下さい。魂に未来の記憶があるっていうお話を。どなたから聞いたんですか?」


 後ろ足で立った状態で、火竜さんはふぅと息をついて話し出す。


「確かそれほど前のことではなかったと思う。ほんの数年前のことではなかったか……。その頃の我は、住処を追われて仮のねぐらを見つけようとしていた頃であった」


「途中で誰か、人に会ったんですか?」


 気が急いて質問してしまうと、火竜さんが面倒そうにばさっと翼を動かした。


「そう急くでない魔女。人ではない。我は住処から追い払った人間に憎しみでいっぱいであったのだ。会えば間違いなく八つ当たりをしておったであろうよ」


「あー……」


 火竜さんとエンカウントしたら、八つ当たりで即死コースですか。それは怖い……。

 仮定としての言い方だから、たぶん火竜さんは人間とは会わなかったんだろう。良かった良かった。

 でもそうすると会ったのは、魔物?


「そうそう、確か精霊だ」


「精霊ですか」


 なるほど。火竜さんがむやみにジェノサイドしない相手だ。敵対している種族というわけでもないし、半分同族だもんね。


「あれは奇妙な精霊だった」


 火竜さんはしみじみと明後日の方向を見つつ語る。


「もう少し東の方の山で、初めてゴブリンのような姿を持つ精霊に出会った。そのゴブリンは初めて会った時、おかしなことに我に怯えておってな」


 確かに精霊が、竜を怖がるというのはおかしいだろう。そもそも小さすぎて、火竜さんもどうこうしようと思うこともない……。というか気づかないうちにジェノサイドすることはありそうなくらい?


「ふと興味をおぼえて、なぜ怯えるのかを訪ねたのだ。すると、『竜にエンカウントするなんて』と言い『火竜はこんなところに潜んでいたんだ。ここから移動するのは何年後になるんだろ……』とつぶやき始めた」


「何年後……?」


「そうだ。おかしいであろう?」


 火竜さんは私の反芻した言葉に、うなずく。


「我が何年か後に、そこから別な場所へ移動するとわかっていなければ、そんな言葉は出て来ない。我は興味を引かれて、その精霊に尋ねたのだ。お前は未来を予見でもできるのかと」


 私は唾をのみ込んで、火竜さんの言葉を待つ。

 火竜さんは、ため息をついた。


「その精霊は言った。『だってゲームで……』と」


「ゲーム!」


 やっぱりだ。その精霊さんはゲームを知ってるんだ!


「そそそ、それで?」


 続きを催促すると、火竜さんが不可解だといわんばかりに続けてくれた。


「もちろん詳しく話させてみた。すると、その精霊は昔、小さな勝負に勝つ度に、作り話の続きが聞けるゲームとかいう不可思議なものをしていたらしい。作り話は、実をいうとこの世界の未来の話で、実現するとまで言っておった。精霊がゲームというのもおかしな話だとは思ったがな。我っぽい竜の話がその中にあったと聞いて、さすがに無視できず……」


「どこまでお聞きになったんですか?」


「いずれ魔女との契約を経て住処への戻り方を聞き、その仮の宿から移動することまでは聞いた。だから魔女の仲間というのから接触があった時に、我は応じたのだ」


「え、でもその後で火竜さんがどうなるのかは、聞かなかったんですか?」


 もれなく死亡するストーリーなんですが……。それを知っていたら、さすがに魔女との契約もしないのではないかと思ったのだけど。


「その精霊が話の途中で、書き消えるようにいなくなってな。それっきりだ」


「だから途中までしか知らないんですね」


 なるほど納得。死ぬとわかっていたら、火竜さんだって魔女との契約にうなずかなかっただろうし。

 しかしそこで、火竜さんがいぶかしげな眼差しを私に向ける。


「なんだその微妙な言い方は……。お前はその先を知っているのか? いや、この話に異常に興味を持つということは、そうなんだろう。ゲームという言葉を聞いた後の、我の話へのくいつきようからも、お前も同じゲームとらやを知っているんだな?」


 私は「あ」と思ったけれど、これはもう知っていると言っているようなものだ。


「まさか精霊や魔女の中に、特定の未来視ができる者がいて、何かの情報交換をしておるのか? それで当たったかどうかをゲーム感覚で楽しんでいると……そういうことなのだろう?」


「ええっと」


 どうしよう。ごまかせるかなこれ? と頭の中で考えたけれど、


「魔女よ。お前、最初から我がどうなったのか、を知っている口ぶりであっただろう。その後どうなるのか知っているから、我に聞かなかったのかと言ったはずだ」


「うぐ……」


 だめだ。自分で墓穴を掘った後だった。


「……実は、そうです。その精霊と似た知識を知っていました」


 ふんっと火竜さんは鼻息を吐く。


「それで? お前の知っている未来ではどうなるはずだったのだ。魔女としてのお前が、ああやって我を小さくさせるという結末だったのか?」


「いえ、火竜さんはあの場所で団長様達に始末されていまして」


「始末っ!?」


「死にかけのところを無理に飛んで、目的の遺跡を壊したものの力尽きて……。それも先方の目論見通りといいますか。今回ああして火竜さんを助けてみたところ、もう一方の魔女達はどっちにころんでも火竜さんが死んで、自分達が力を得る方向で進めていたようですね……。って、火竜さん?」


 ぺろっと全部話してしまったところで、気づけば火竜さんがその場にうずくまっていた。


「しま……しまつ……。いや確かに精霊王の剣があれば……しかし今回のはこの魔女と、怪しい精霊やらのせいだったから、よもや我が……」


 どうも、あっさりと始末されると言ってしまったのが良くなかったらしい。

 火竜さんは相当ショックを受けたようだ。

 そしてさらなる悲劇が、火竜さんを襲った。


「なぬぅぅぅぅぅぅ!?」


 火竜さんの体から、ふわっと白い雪のような燐光が発されて……またも小犬の大きさにしぼんでしまった。

 元の木阿弥とはこういうことをいうのだろうなと、しみじみ感じた私は、号泣する火竜さんを見つめるしかない。

 なにせ紅茶で魔力を供給したのに、元に戻るなんて自分でも思わなかったので。


 結局火竜さんはその後ふて寝し、朝目覚めた後も、まだうつうつとしていたのだった。

 ……かわいそうに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ