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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました
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私に特技が増えたようです

「回復?」


 団長様の尋ねる声に、フレイさんがうなずく。


「先ほどまで、先生をここに引きずって来て、酔い冷ましを飲ませるのに苦労しましたからね……。あれ、一体どれくらい気力を使うのかなって、先生が気付けを用意する間に確認しておいたんです。

 ゲージにして一個減っていたんですけれど。それ以上に回復していますね。疲労感が全くありませんよ」


 それを聞いたオルヴェ先生は、団長様の方を振り返る。


「……団長、何かあったら宜しくお願いします」


 そう言ったオルヴェ先生は、自分の測定石を開いて確認した上で、もう一杯同じお茶を入れて飲む。


「間違いない。気力が回復する効果がある茶だ」


 自分の測定石を確認して、オルヴェ先生が断定する。


「そんなことがあるんですか?」


 フレイさんが懐疑的な表情をする。

 それに応じたのは団長様だ。


「やはり、精霊が手を貸して茶に魔力を与えて変質させているんだろう。でなければ、そんな効果が発生するわけがない取り合わせではないのか? オルヴェ」


「そうですね……。どの茶葉も、気力の回復ができるような効果はありません。なのにそういう効果が『新たに付与された』のなら、やはり精霊の仕業なのでしょう」


「やはりユラは、精霊を操れるのか……いや、精霊に好かれているのか」


「好かれている、ですか?」


 好きだから、私のお茶に「魔力をあげていっちゃおう!」なんてするの?

 尋ねた私に、団長様はうなずく。


「でも私、今までそんなことが起こったことはないんです」


 ごく普通の地味な娘。それが私だ。

 前よりもちゃんと人と話せるようになったけれど、でも地味さが変わったわけでもないのに。

 と思ったところで、きっかけのことを思い出す。


「まさか精霊融合のせい、ですか」


 前世のバイクに乗った特撮ヒーローのごとく、謎の改造実験を受けたんだもの。魔力もないと保証されているけど、もしそれで、精霊に好かれる要素だけは残ったのだとしたら?


「今まで同じことが無かったのなら、実験のせいだろうな」


 団長様が言い、オルヴェ先生も、フレイさんもうなずいた。


「でもミルクは? 団長様と私が飲んだの、これにミルクを足しただけですよ?」


「おそらくそれだけでも、何か変質する要件が合致したのだろう。試してみるか?」


 そう言って、オルヴェ先生がフレイさんに用事を頼んだ。

 フレイさんが出て行った後、私はミルクを入れたお茶を準備する。

 そして戻って来たフレイさんは、鶏を一匹抱えて来た。

 金髪美形が鶏を抱えている姿というのは、なんかシュールだな。でも鶏がより可愛く見えるのでいいか。


「その鶏に飲ませてみるといい」


 そう言われたので、そのままじゃ鶏がミルクティーを飲まないだろうからと、口を開けた瞬間に匙で口の中に突っ込んでみた。

 すると、間もなく鶏が眠り、動かなくなる。


「あ、死んでないですよね?」


 心配になって聞けば、フレイさんが大丈夫だと請け負ってくれた。


「ちゃんと心臓は動いている。暴れると面倒だから、今はこのままにしよう」


「良かった……」


 自分のお茶で生き物を殺したら、どうしようと思ったのだ。


「とにかくこれで、ユラの茶におかしな効果が発生することがわかったわけだな」


 団長様が重々しく断定する。


「うぅ……」


 私は思わず唸ってしまう。


「禁忌の実験の効果が、こんな形で現れるとはな」


 オルヴェ先生が腕を組む。


「少しおかしいとは思っていたんだ。ユラに薬湯を淹れさせると、どうも効果が強いような気がしてな」

「淹れるだけでですか?」


 フレイさんが目を丸くした。


「そうだ。飲ませた患者への効きが、いつもと違って気になってはいたんだ。俺に精霊は見えないからな。まさかそれが原因だったとは思わなかった」


「私も、そんなようなことは患者さんに言われてました。良く効くような気がする、と。ずっとお世辞だと思っていました」


 慣れない場所にいることを気遣ってくれたんだろうとばかり考えていたのだ。

 私なんて小さい子でもないのに優しいなぁとか、騎士には私より年下の人も多いのに、心遣いができる親切な人が多いのだなと、ものすごく感動していた。


「普通はそう思うだろうね」


 フレイさんが同意してくれた。

 ですよね? だから隠していたわけじゃなくて、本当にわからなかったんです。


「問題はこれをどうするか、だ」


 団長様の言葉に、オルヴェ先生がうなずく。


「とりあえず、法則性があるのかどうかも調べるのと一緒に、ユラが入れたらどんなお茶でもマズイことになるのかを検証しなければ……」


 その日はとりあえず休み、翌日から、私は色んなことを試した。


 普通にお湯を沸かしてお茶を淹れた場合。お湯は他人が湧かして淹れた場合。

 煎ったりしないで混ぜたお茶を使った場合とか。


 様々な検証をした結果、どうやら私がお茶を変質させるには、法則があることがわかった。

 まず、煎ると完全に変質する。

 精霊がやってきて魔法を付与するので、怪しい炎が上がったり、湯気が上がったりするのだ。

 そうなったお茶は、後から何かを加えても、またさらに変化が起きたりする。ミルクを入れるだけで様変わりする、という恐ろしさだ。


 煎らずに水と葉を入れて沸かしてもダメ。

 ただお湯を沸かすだけならなんともない。

 私がお茶を淹れるという行為をすると、精霊が何かを察して寄ってきて、ぺいっと魔法を投げて行くらしい。


 もちろん、他人が私と同じ手順を踏んでも、魔法が付与されたお茶は出来ない。

 申し訳ないけどフレイさんに試してもらった。

 そして私が魔法を付与した後のお茶は、多少効果が弱いながらも、付与された魔法は発揮されることもわかった。


「まぁ、普通に生活する分には、問題なさそうだな」


 そうオルヴェ先生に太鼓判をもらって、ようやく私は息をついた。

 でもこれで、私の特殊能力がはっきりしたのだった。

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