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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました

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眠り薬を作った覚えはないんです!

 私は、とてもいい気分で目覚めた。

 ぐっすりと深く眠った感じがして、ものすごく満足してる。

 そこに、酸味がある胡椒みたいな味が口の中に広がって、良い気分で意識が浮上していく……。


「ん」


 なんか腕が痛い。

 というか、首と肩が凝ってる気がする。

 目を開けると、自分がテーブルに突っ伏して眠っていたことに気づく。


「魔法より、古式ゆかしい気付けが効くとは……」


「いや、これでダメだったら、本気でまずかったでしょう先生」


 なんかオルヴェ先生と、フレイさんの声が聞こえる。帰って来たのかな。

 ていうか私、なんで眠ってるの!?

 びっくりしてがばっと身を起こしたら、目の前で自分の額をおさえている団長様と、側に立っているフレイさんが見える。


「こっちも起きたか。ずいぶんよく眠っていたな」


 オルヴェ先生は私の横にいたようだ。


「え、あれ!?」


 声を出したとたん、口からぽろっと紙みたいなのが落ちた。いや紙だ。けど先端に何か塗っていたらしい黄色の色がついてる。


「気分はどうだ? 問題ないのか?」


「ええっと、よく眠ったような感じです」


 かなりすっきりしている。


「団長もそう言うのだから、妙な薬のせいではないようだが……」


 オルヴェ先生が不可解そうな表情で腕を組んでうなる。


「で、原因はなんだったんですか? 団長。二人で仲良く向かい合わせにテーブルに突っ伏して眠っていたわけですから。何か同じものを食べたか、どこからか眠り薬の匂いが漂ってきたのが原因だと思うのですが。魔法だったとしても、団長ならわかるでしょう?」


 フレイさんに尋ねられた団長様が、私に視線を向ける。

 その目が『言うからな? 覚悟は決めろよ』と言っているように見える……。


 怖い。けどお茶のせいなのは決定的だもの……。

 隠しても、後から発覚したりする方が、後ろ暗いことでもあったのか、誰かの指示だったのかと勘ぐられそう。

 だからうなずくしかなかった。


「間違いなく、この茶が原因だと思う。その時口にしたのが、ユラが入れた茶だけだったからな」


「茶?」


 フレイさんとオルヴェ先生が、同時に言ってテーブルの上のカップを見る。


「茶に何か混入したってことですか?」


 フレイさんは最初にそれを疑ったようだ。ちょっと厳しい表情になる。私が睡眠薬を入れたと思ったのだろう。

 びくついた私だが、オルヴェ先生が庇ってくれた。


「ユラはここんとこ毎晩、自分で茶を入れて飲んでるんだ。俺は同じものを飲むよう勧められたこともないし、一緒に茶を入れてくれと頼んでも必ず普通の茶を入れてくれる」


 そこで団長様が額の手を外してうなずいた。


「私もだ。普通の茶を用意するというのに、珍しいものに気を引かれて頼んだ。茶を入れる様子は見ていたが、何かを混入した形跡はなかったから、口をつけた」


 団長様、一応そこんとこは見ていたんですね。


「で、淹れた本人もろとも眠ったと……。一体どんな茶なんだい? 変わった匂いはするけれど」


 フレイさんに尋ねられて、私は正直に答える。


「ヘデル茶とドゥルケ茶に、赤花をほんの少し色づくほど入れただけのものです」


「それだけか?」


「はい。あ、ミルクを入れる前にも飲んだんですけれど、その時は眠ったりしませんでした。だから大丈夫だと思ったんですが……」


 まさかミルクに問題があったんだろうか?

 さっそくオルヴェ先生が、ミルクとお茶を調べた。結果、ミルクには魔力が感じられず、ミルクティーには感じるらしい。


「茶葉は何ともないな。薬になる葉には少し含まれているものだが、微小だ」


 お茶っ葉にも問題はなかった。


「そうしたら、混ぜて煎ったのがいけなかったんでしょうか?」


「煎った……よし、もう一度そこまでやってみてくれ」


 オルヴェ先生の言う通りに、私はいつものように茶葉を一匙ずつと、赤花を少し足したものを、火を起こして煎る。

 その時に、ぽうっと火が小さく爆ぜたのを見て立ち上がったのは、団長様だった。


「おい、今精霊が」


「精霊?」


「その茶葉に精霊が魔力を与えて行った」


「はいぃ!?」


 どういうこと!? と思った私は思わず叫んでしまう。


「気づかなかったのか? 異常に」


 そう団長様に言われたものの、全くわからなかったです。


「私、精霊なんて見えないのでわかりません」


 答えを聞いた団長様が、どこか納得しきれないような表情をする。

 だが、茶葉を調べたらやっぱり魔力が含まれているらしい。


「見えないというのはわかる。今もお前は精霊の方を視認できているようには見えなかった。しかしそれはあまりないことだ……。精霊がその意を汲んでやる相手というのは、たいてい精霊の姿が見える者なんだ」


 そうは言われても、実際に見えないのでどうしようもない。

 困っているうちに湯も沸いたので、とりあえずミルクを入れない状態を検証することになった。


 被験者はフレイさんだ。

 それでも不安だろうからと、私が毒味代わりに先に一口飲んでみせる。

 いつもどおり、すっとする感じはするけど眠くはならない。

 フレイさんも同じだったようだが……。


「なんだこれ。もしかして何か回復してるんじゃないか?」


 不思議なことを言い出して、黄色い水晶のバッジを外して掌に乗せ、一言つぶやく。


「開け」


 丸い石がつぼみのように花弁を広げて、その上に黄色い光の線と輪を作り出す。

 これは精霊術士に作ってもらう、ステータス表示ができるアイテムだ。

 その名も測定石。


 戦闘をしたり、魔法を使ったりする人達が自分の状態を知ることができるようになっている。縦のラインが現状のHPなんかの能力値で、横のラインはメモリの代わりをしているらしい。

 ここもゲームと一緒だ。ステータス画面には、この絵が表示されて、棒グラフと数字で自分の能力値やHPの減り具合を確認できる。


「やっぱりだ。気力のとこが回復している」


「は……?」

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