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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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クエストが終わったら一休み

 問題は解決。

 だけどクー・シーが立ち去った直後、すごい勢いでイーヴァルさんが突っ込んで来た。

 急制動を飛びトカゲにかけさせたせいで、周囲で風が渦巻く。竜の魔法で守られているおかげで、強風にあおられはしなかったけど、びっくりした。


「イーヴァル……」


 団長様が迷惑そうな顔をするも、イーヴァルさんはそれどころではない。

 くわっと目を見開いて、団長様に大声で言った。


「リュシアン様ご無事でしたか!?」


 幻覚で団長様の姿が少しでも見えなくなったからだろう。イーヴァルさんはものすごく焦った表情だった。


「無事だ」


 団長様はぼそりとつぶやきつつ、手ぶりで無事を表……しているんですよねそれ。なんか、しっしっと追い払っているように見えるんですが。


「クー・シーが周りを囲んでみたり、何かの魔法を使った時には、どうしようかと!」


「問題ない」


 団長様がまたしっしっと手を振る。

 イーヴァルさんの方も、いろいろ言いたいことはあるんだろう。

 でも飛びトカゲと竜に乗っている状態では距離があって、詳しい話は難しい。

 途切れたところで団長様が言った。


「後で説明する! 街道周辺の掃討と、ここに魔石があるというので、その回収をフレイとお前に任せた! 私は一度ブレスを使った後で、非戦闘員を連れて戻る」


 大声でそう伝え、団長様が竜を移動させる。

 おお、あのブレスを乗った状態で見られるらしい。

 命令を聞いたイーヴァルさんが他の騎士に伝達して、飛びトカゲ達が高度を上げて遠ざかる。

 わくわくしながら見ていると、あまりに熱心に視線を向けていたせいなのか、竜が恥ずかしそうにちらっと私を見てから、息を吸い込んだ。


 一呼吸分の間の後、炎のブレスが吐き出される。

 滝のように広がっていく炎に、私は目を奪われる。

 竜に乗っていると重力の感覚も柔らかいので、ブレスの反動というのはあまり感じなかった。けれど熱がじりじりと肌に伝わってくる。


 でもすぐに、団長様がマントを被せて庇ってくれた。

 引き寄せられるように抱えられて、ドキッとする。守られている感じに、気恥ずかしさが湧きあがった。けど、無理に外へ出ると熱いのでじっとする。

 すぐに、団長様が被せたマントを取り払う。


 見えた光景に私は驚いた。

 クー・シーが掘り返した場所には、魔物の姿が残っていない。

 そして吹き飛ばされたりした魔物達に向かって、イーヴァルさんやフレイさん達が飛びトカゲを降下させ、飛び降りて攻撃を開始した。


 集まろうとしていた魔物も、昨日と違って魔法に誘い込まれていないせいなのか、竜の攻撃に恐れをなしたように散りじりになっていく。これなら、フレイさん達も大量の魔物を倒し続けなくても大丈夫だろう。


「よし、戻るぞユラ」


「はい」


 団長様はすぐに竜を城へと戻らせた。

 竜のブレスで一度暖められたせいか、余計に寒い気がする。

 少し首をすくめたが、団長様は気づかないでいてくれた。


 城へ戻り、団長様に竜から降ろしてもらうと、私はまずオルヴェ先生に戻ったことを報告してから言った。


「すみません。連日外へ出たせいなのか少し疲れたみたいで、夕食時までお店を開けずにいますけれど、ご心配なさらないでください」


 オルヴェ先生が眉をしかめた。


「大丈夫なのか?」


「はい。休んで良くなったらお店開けるかもしれませんが」


「そうか。お疲れ様ユラ」


 オルヴェ先生は多くを聞くこともなくそう言ってくれた。ありがたい。

 私は部屋で暖かい服に着替えた。上に一枚厚手のものを羽織ると暖かい。

 さっきよりもぞくぞくと寒気が強くなったので、夕食時までは少し布団にもぐっておくことにする。

 沢山の布や毛布を重ねて、ようやく人心地ついた。


 これで大丈夫なら、熱が高いわけではないだろう。微熱なら、休む時間を多くしていれば治るはず。

 そもそも、前は魔力を大量に吸収した後昏倒してしまったのだし。それを考えると、微熱で済んだのだから今回はマシだ。


「今日は喫茶店もお休みの予定にしたし、大丈夫大丈夫」


 ふーっと息をつきながら考えたのは、魔力のことだ。

 あの漂っていた分を吸収するだけで、十分だったんだろうか。魔石にも沢山残っているのだとしたら、それも回収するべきだろうか。


「どうしたらいいかな。ソラを呼び出して、何か方法を考えてもらう?」


 それをすると、突然保管している場所に移動させられた上、はいどうぞと手渡されたりしそうだ。あげく、手にとった瞬間に嵐が起きて、部屋を破壊したら……目も当てられない。


「自分でどうにか考えて、それからソラに手伝いを頼むべきだよね」


 そうしよう。でも少し眠ってから……と思っているうちに、私はぐっすりと眠ってしまったらしい。


「ユラ?」


 声をかけられて目覚める。

 え、団長様……って、部屋の中がうす暗い。というか窓の外が真っ暗で、机の上にある魔法のランタンの明かりだけが、部屋の中を照らしていた。


「あ、すみません。ちょっと疲れて眠ってました!」


 しまった。オルヴェ先生やメイア嬢の夕食のこととか、完全に放置してしまっていた。

 飛び起きた私に、団長が「無理をせずに寝ていていい」と言ってくれる。


「お前の様子は、既に夕方ごろにオルヴェが一度確認している。眠らせたままにしておいたと言っていた。あと、食べられそうならと、オルヴェが食事をそこに置いて行っている。全く、熱があるならそうと言えばいいものを……」


 団長様がそう言って、私の額に手を触れる。

 あ、ちょっと冷たくて気持ちいい。


「ご迷惑をおかけしました……。団長様にまで様子を見に来ていただいてしまって」


「気にするな。今日のこともあるから、お前の様子は確認しておきたかっただけだ。それほど熱は高くないな。これは魔力を取り込んだ後遺症か……」


 団長様はそうつぶやいた後、私の額をつついた。


「とりあえず今日は休め。明日は様子を見て決めるように。まぁ、店を開けないとフレイが気にしそうだがな」


「はい、ありがとうございます」


 うなずいた私に、団長様が再度聞く。


「食事はとれそうか?」


「はい、少し食べてからもう一度寝ます」


「それがいいだろうな」


 そう言って、寝台に腰かけていた団長様が立ち上がる。


「あ、そういえばあの魔法陣とか魔石とか、どうなりましたか?」


 気になっていたことを聞くと、団長様がちょっと悩むような表情を見せた。


「魔物を引き寄せる魔法は完全に解けた。が、魔石は……無くなっていたらしい」

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