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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第一部 紅茶師はじめました
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実験したくなりませんか?

 そうして落ち着いたところで、今後のことについて考える。


「といっても、ストーリーは大まかなものしか知らないし。途中でやめちゃったからなぁ。スキルの知識とかはあるけど、魔法も使えないし」


 オルヴェ先生に聞いたところ、もし精霊と融合できたとしたら、間違いなく魔法が使えるらしい。

 私を拉致した悪の組織みたいな人達が、額に押しあてた石は、魔力があるかどうかを調べるものだったようだ。


 あの石に反応しなかった=魔力がない=精霊と融合しなかった。ということで、私は失敗作だと断定されたのだろうと教えてもらった。


「そんなことより、ゲームプレイヤーに相当する人に、将来どうなるかを教えることができたらいいんだけど……」


 ゲーム通りに進行したら、この世界はいずれ、滅びたも同然の状態になってしまう。

 その前に事件を解決して、魔女の発生も抑え込んでもらうしかない。


「その前に、ゲーム通りの出来事が発生するかどうかわからないものね」


 そもそもの疑問もある。

 ゲームと同じ人達が生きてて、ほぼ同じことが起こるって……。ここは誰かの空想の世界? 違うよね?

 だとしたら、別世界であるここの記憶を誰かが読み取って、ゲームにしたとか?


 全く想像がつかない。

 時系列とかどうなってるのよ……。

 だからまず、ゲームの世界に入っちゃった! とだけ考えて動こう。


 今がどの辺りまで進行した状態なのかを知りたい。

 そして、ゲームプレイヤーに相当する人を探すのだ。

 私を含めて多くの人が生き残るには、ゲームプレイヤーと同じ役割の人に頑張ってもらわなくては。

 ……なにせ私じゃ剣も使えないし。


「プレイヤーは、討伐者って形で、依頼を受けて動いているはずだものね。でも問題は、どうやって会うのかってとこだよね」


 討伐者とは、冒険者みたいなものだ。

 だから討伐者と早めに会って攻略法を教えることが、平穏な生活の近道になる。


「討伐者には、騎士団にいれば会えるよね」


 キャラは、イベントごとに協力関係にある騎士団と行動することが多い。だからいずれは会えると思う。

 むしろ私がお城の中を歩き回れれば、今でも会えるかも。だけどやっぱりね、周囲に迷惑をかけたくないから、慣れるかオルヴェ先生に付き従って動ける機会を狙いたい。

 とにかく焦っても仕方ない。


「お茶飲みたいな」


 一息入れたい時には、お茶が一番だと思う。

 さっそくお茶を入れることにした。


 オルヴェ先生も、ゆっくりする時間だ。騒がせても申し訳ないので、一階の洗濯場の横にある台所つきの小部屋を使う。

 そこはヘルガさん達が休憩の時にも使っている。

 食材は置いていないけれど、お茶を飲むために必要なものは揃っていた。


 魔法の世界らしく、種火は魔法の道具を使う。

 赤い鉄の棒のようなものだけど、これを薪にコンと当てると、薪に火がつく。

 これはゲームでもあったアイテムで、HP回復のため野営する時に火を起こすために使っていた。


 やかんのお湯が沸くまでの間に、カップとポット、お茶の葉を用意。

 真っ白のカップは、家から持って来たものだ。ポットはヘルガさん達が置いていたものを使わせてもらう。

 お茶葉は私が家から大量に持ち込んだものが完備されている。

 ポットに茶葉を匙で一杯と、カップに一杯分のお湯を入れた。


 葉が開くまでの間は、適当な音楽を口ずさんで待つ。そうすると、おおよそ三分ぐらいの時間が計れるので、茶こしを使いながらカップに中身を注いだ。

 ふわりと薫る、この世界では飲みなれたヘデル茶のほうじ茶に似た香りと味。


 でも前世のように、紅茶と同じ茶葉からできているわけじゃないんだよね。

 蔦みたいな草の葉を使っている。けっこう町や林や森と、適当に一杯生えているものなので、庶民でも自分で作って飲める安価なお茶だ。


 小さい頃からやたらヘデル茶が好きだったけど、たぶんこれ、前世の記憶を思い出していなくても、懐かしいものに魂が引かれたんじゃないかなぁ。

 お祖母ちゃんには「安いお茶が一番いいだなんて、孝行な孫だねぇ」と言われたっけ。


「……紅茶が懐かしいなぁ」


 前世を思い出して日が無いからかな。

 ついこの間まで、紅茶を毎日飲んでいたような気分になっていた。だから紅茶が飲みたくてたまらない。


「ヘデルを、紅茶みたいに酸化させればいいのかな」


 紅茶のおおまかな製法は、前世で聞いたことがある。写真も見た。

 ただほうじ茶に似たヘデルは、乾燥するだけでこの味になる。本来は蒸したりするはず。だからこそ、知っている作り方で紅茶になるのかは疑わしい。

 ヘデルそのものを採取してどうこうするのは今度にするとして、手っ取り早く紅茶っぽいものができないか試してみたくなる。


「そういえば、紅茶っぽい香りになりそうなものがあったような」


 確か甘い香りの茶葉があったはず。

 ドゥルケの葉は薬にもなるけど、飲んだからといって何か問題が出るようなものではなかったはず。


「……よし、混ぜてみよう」


 単純に考えた私は、棚の奥にしまったお茶の缶を引っ張り出し、香ばしい風味がでたらいいなと思いながら少し煎る。


「あ、いい香り」


 それをお茶として入れてみると、ちょっといい感じになった。


「……これはイケる。でももう少し足りないかな」


 ということで、次はヘデル茶とドゥルケを混ぜて煎ってみた。


「紅茶紅茶……紅茶になーれ。わわっ!」


 つぶやきながら煎っていると、ぽっとかまどの火が柔らかく爆ぜて、小さなフライパンを包んで消えた。


「あ、大丈夫。焦げてない」


 茶葉は無事みたいだ。

 そんな茶葉でお茶を入れてみた。すると。


「おお、紅茶に似てる!」


 そっくりそのままかは自信がないけど、ほぼ紅茶!

 飲んだら満足感で心がいっぱいになった。それに三杯もお茶を飲んでしまったから、もうお腹いっぱいだ。

 だけど気分はやけにすっきりしていて、私はどっちかのお茶にはカフェインでも含まれているんじゃないかなと思いながら、自分の部屋へ戻ったのだった。


 でもこの時に変だってことに気づいていたら、その後の問題は起こらなかったんだろう。

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