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私は騎士団のチートな紅茶師です!  作者: 奏多
第二部 騎士団の喫茶店

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森へ調査に行ってみたら

 飛びトカゲが舞い上がる。

 団長様の竜を先頭に、フレイさんの隊の五人と、イーヴァルさんが受け持つ五人が空を飛んだ。

 ようやく慣れて来た飛びトカゲ飛行だけれど、飛行機よりも重力への感覚がきつい。

 そして揺れる。


 でもフレイさんが操っているのだから、めったなことはないと信じて鞍に掴まる。

 代わりに飛びトカゲなら森の端まですぐだ。

 あっという間に到着したそこは、眼下に何体もの魔物の姿が見えた。


「本当にすごい数……」


 ぱっと見だけで、数十体はいる。

 牛みたいなのから熊みたいな魔物、うねうねとした植物の蔓のかたまりみたいなものもいた。

 こんな状態なら、フレイさんが怪我をするのも当然だと思う。あまりに居すぎる。

 正直、プレイヤーが沢山「クエストだー」って次々にやってくる状態じゃないと、こんなの倒せる気がしない。


 飛びトカゲ達は、魔物達が集まろうとしている場所へ向かう。

 そこへ到着すると、魔物達同士で乱闘まで起こっていた。カオスだ……。

 中心に、何かあるのは……ちょっと見えない。高度があるから遠くて。


「……やっぱり降りないと、よくわからないかもしれません」


 フレイさんに言うと、うなずく。


「一時的に追い払うだけならできます。団長!」


 フレイさんは団長様に呼びかけた。近くに移動してきた団長様に言う。


「ユラが降りないとわからないと。ブレスを!」


 団長様がうなずいた。

 そして飛びトカゲが一斉にその場から距離を取る。


「一体何を……」


「この手は連続で使えませんが、一時的にこの量の魔物でも追い払うことができます。ブレスが来たら、数秒だけ降ります」


 とつぶやいたところで、団長様の乗る竜が炎のブレスを吐いた。

 察しのいい魔物は、ブレスが来る前にその場から逃走した。他の魔物は、巻き込まれて怪我を負いながら離れ、小さな魔物はそのまま倒される。


 フレイさんはそのただ中へ飛びトカゲを降ろした。

 私を小脇に抱えて、飛び降り、死にかけた魔物を始末して中心部へ移動する。


「ユラさん、ここです」


 お腹をきゅうきゅう絞められて苦悶していた私は、その言葉に我にかえった。

 自分が立つ場所が中心。

 すぐ足下に魔石らしいものがあった。赤黒い色をした、ガーネットみたいなこぶし大の石だ。


 時間が無いからと、確かめるために指先でつついてみる。

 ふっと魔力が吸い取られるような感覚があった。間違いなく、これに魔力が溜められている。

 でもどうやって壊せば……。


「ユラさん、あと少しで限界です」


 フレイさんに言われて周囲を見れば、遠くから逃げたはずの魔物が近よってくる。

 この魔石があるからだろうか。魔石を壊しても同じ?

 でも今、この石をどうにかしようとしたら不審がられてしまうだろう。


 たぶんこの石に魔力を集めているものがある。

 地面を見回す。

 ぱっと見にはなにもなさそうだけれど、私はステータス画面を開いてみた。

 そうして地面を画面上で叩いてみる。


《???》


 何か出た!

 てことは、この地面に魔法的な仕掛けをしているんだと思う。

 魔力を注いだら……どうにかできないかな。


 ほんの少しだけ、お茶に魔力を込めたみたいに、地面に手をついてやってみる。

 一瞬、銀色に地面を線が走ったような気がした。

 魔法陣みたいな感じだから、これを壊せばいい? そうしたらお茶を使わなくてもいいかもしれない。


「ユラさん、ここまでです」


 フレイさんに問答無用で抱えられた。

 私を抱えたまま飛びトカゲに乗ったフレイさんは、一気に空へ浮上させたのだけど。


「フレイ!」


 団長様の声が聞こえた。

 フレイさんが舌打ちしながら飛びトカゲをあやつって、急転回させる。


「ひええええっ!」


 私は叫びながら、鞍にしがみつくしかない。

 ある程度浮上したところで、フレイさんはその場に滞空することにしたようだ。

 安定した飛びトカゲの上で、私はようやく周囲を見回すことができたのだけど。おかげでびっくり仰天する。


「え……これ」


 森の枝が無数に伸びて、フレイさんの飛びトカゲを取り囲むようにして揺らめいている。


「ちっ、クー・シーが出て来た」


 フレイさんはある一点を見ていた。

 森の木々の間、木のように大きな犬がいた。

 体は美しい新緑の緑。ボーダーコリーみたいなさらっとした毛並みに見える。

 その背中からは草の蔓みたいなものが何本も伸びていて、周りの木々にからみついていた。


 私はステータス画面をそっと出した。そうして画面の向こうの緑の犬を指先で触れるようにすると、名前が表示された。

 クー・シー。

 団長様達との話で出て来た、魔物の名前だ。

 これは……どうするべきか。


「逃げられそうですか?」


 フレイさんに聞いてみる。たぶんあのクー・シーが木を操っているんだと思う。あれを倒さないと逃げられないだろう。


「団長の竜のブレスが復活したら、可能ですが……。あと数分かかります」


 ブレスのリキャストタイムがけっこう長いらしい。

 何か打開策はないか。

 そう思ったところで、ふいに風に乗ってやってきたゴブリン姿の精霊が、私の肩にべちっと当たって止まった。

 その上で精霊が言う。


「すいっちおーん」


「スイッチ?」


 魔物に使えるスイッチって何だ。魔法を撃つ選択するボタン?

 いやいや他にもある。

 もしかしてチャンネル? でもアルファベットのどれだ!?


「クー・シー……」


 Cか!!

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