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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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83/162

File14.花<1>

 大祐と共にカフェを訪れた沙紀だったが、いざお店の扉の前に立つと中に入ることをためらってしまう。この扉を開いて刑事として相対してしまうとこれまでの人間関係でいることは出来ない。


 「沙紀さん、自分が話を聞いてきましょうか?」


 移動中の車内で皐月が調査してくれたこのお店の主である夫婦の情報と例の彼女の身元確認の申請結果が送られてきたのが同時だった。ある程度予測していたとは言え事実として裏付けがされてしまうとつらいものがある。


 このカフェ・花を経営している杉浦夫妻には、二人の娘がいた。緋奈は二番目の次女にあたる。地震が起こる数ヵ月前に家出人として警察に届けが出ている。その後、どういった経緯をたどったのかは不明だが緋奈は『学園』へ入学を果たした。


 「学園に入学する時点で親御さんへ連絡は行かなかったんですかね?」


 「能力者は貴重な存在でありながら恐怖の対象でもある。特に後天的に能力に目覚めた者は保護されるまで自分達でどうにかするしかなかったから警戒心が高い。だからこそ本人が望めばそれまでの自分の過去を消すことが出来た。多分、緋奈姉自身が親御さんへの連絡を拒否したんだと思う」


 「過去を消す。彼等の一族出身という過去は消してしまいたい程だったんですかね」


 「それは私にも分からない。ただ、緋奈姉は後天的に能力に目覚めたとある。つまりそれまではただの一般人だった。彼等一族内で能力がない者の立場なんて外部の人間には分からない。行きましょう」


 軽く深呼吸をした沙紀はカフェの扉を押し開けた。すると扉の付けられたベルからカランコロンと音が響く。室内に入るとそこには誰もいなかった。この時間帯なら常連の誰かがいてもおかしくないのに。


 ただ誰もいないカウンター席には、親子4人の家族写真が飾られた写真立てがいくつもあった。幼い頃から中学生くらいの姿のものまで。沙紀が知る姿に一番近い写真を手に取った沙紀は、溜息をつく。その写真に写った少女は確かに緋奈の面影があった。


 「あら、いらっしゃい。ここに来たってことは主人は、始めてしまったのね」


 厨房の奥から現れた女性の姿に大祐は警戒する。


 「杉浦 茜さんですね。杉浦 緋奈さんの母親の。あなたのご主人が現在起こしている事件の捜査で我々は参りました。お話をお聞かせいただけますか?」


 「かまいません、どうぞそこのお席にお座りになってください。今日は、誰もこのお店には来ませんから。そういう風にしておりますので」


 「やっぱり、人避けの術を使用されているんですね。おかしいと思いました。この時間に常連さん達がいないのはおかしいし、ここに来るまで誰とも会わなかったから」


 「私もそれなりの術は使えるの。夫とは違って戦う術は不得意ですけど。さぁ、コーヒーを入れますから。大丈夫、何でも話します。沙紀ちゃんがあの子のことで話を聞きにきたら全てを隠さず話す、そう私達は決めていましたから」


 「私達?」


 「えぇ、沙紀ちゃんを見守るのはあの子の願いだった。それを私達なりに引き継ごうと思ったのよ。私達は、既にお役目に失敗して大切なものをたくさん本当にたくさん失ってしまったの。本当は生きている資格すらない」


 「生きることに資格なんかないです!」


 大祐の言葉に茜は、沈痛な面持ちで首を振る。


 「あなたも知っているでしょう? 私達は一族の人間です。それぞれがお役目に誇りを持ってそれを全うする為に生きている。そのお役目に失敗して取り返しのつかない事態を引き起こしてしまった。そのせいで私達自身も結果的に大切な娘を失うことになってしまった。だからこそ、あの子の大切なお友達が強く生きていくのを見守ることにしたの」


 「いくら私が緋奈姉の友達だからって、どうしてそこまで」


 「あなたはとてもよく似ているの。私達が失ってしまった大切な人に」

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