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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File.11 学園<4>

 防火扉の内側へ進む。廊下の左右には小学校の教室程度の広さの実習室があった。大祐は右側の実習室を田丸が左側の実習室の様子を確かめながら進んでいたが特に異常は感じられない。きちんと弔いを行っている証拠だなと大祐は改めて思った。


 「奥にある大講堂が最後に生徒達が逃げ込んだ場所です。その手前の教室の辺りにバリケードを設置して最後の戦闘が行われたそうです」


 無言で進む沙紀の様子を伺いながら大祐は、報告書に記載されている事柄を淡々と説明していく。沙紀は、焼け焦げた廊下の壁や教室を眺めながらも表情はいつもの捜査時と変わらず無表情だった。


 「バリケードってあの残骸か」


 田丸が指差した先には、大部分は燃えてしまった机や椅子の金属部分が残骸として残っていた。


 「大講堂の手前の大熊側の実習室が私達が日頃から利用してた部屋だった。その後方側の扉の前で緋奈姉は、亡くなってたらしい」


 「確かにその辺りだけは周囲と比べて燃えてませんね」


 「手を合わせて行く?」


 皐月の言葉に沙紀は首を振った。本当はきちんと現場を見ていく必要があるがどうしてもそちらへ足が進まない。


 「大講堂を確認しましょう」


 沙紀の言葉に大祐達は頷きあうと更に奥へと進み始めた。沙紀が皐月と一緒に教室の前を通り過ぎようとした時だった。キーンという音が耳の奥で鳴り始めどんどんと音が大きく鳴る。同時に痛みが走り思わずその場にしゃがみ込み両耳を塞ぐ。そんな沙紀の様子に慌てて皐月は隣にしゃがみ込み抱きしめながら声をかける。


 「さっちゃん、大丈夫? 落ち着いて」


 「…………何? …………何の声?」


 『…………サマ。オネガイ、アノコノオネガイヲキイテアゲテ』


 「お願い? お願いって何?」


 『コッチダヨ。コッチ』


 「皐月ちゃん、大丈夫。何かお願いされているの」


 皐月の手を借りながら立ち上がった沙紀は、声が聞こえる方へ視線をやる。するとそこは自分達が使用してた実習室の中だった。沙紀が言う声は大祐達には全く聞こえず、かと言って悪意を持った霊体の存在も感じられない。三人で顔を見合わせていると沙紀は何かに呼ばれるように実習室の中へ行ってしまった。そんな沙紀を慌てて大祐達も追いかけた。


 「ここ? ここに何かあるの?」


 「沙紀さん! どうしました?」


 「大熊、あのロッカーの残骸の中に何かあるみたい。探してくれる?」


 沙紀が指差した先には、いくつかの天井のがれきや実習室内の設備の残骸の塊があった。大祐がその隙間を覗くと奥にロッカーらしきものが確認できた。


 「田丸さん! この奥にロッカーらしきものがあるので掘り起こします。手伝ってください」


 「了解。さっちゃんは、危ないから離れて休んでろ。姐さん」


 「分かってる。さぁ、さっちゃんこっちに来て」


 「うん。何があるんだろう」


 大祐と田丸の二人がかりで掘り起こすこと三十分。何とか目的の物が現れた。それはよくあるロッカーで名前の部分に緋奈と書かれていた。


 「よく燃えなかったな」


 「そうですね。沙紀さん、ありました!!」


 掘り起こされたロッカーを見て沙紀は思わず言葉を失う。彼女の遺体しかり、何で彼女の物だけがこんなに燃え残っているのだろうか。


 「開けますね」


 大祐が少し歪んだロッカーの扉をこじ開けるとそこには木工細工の箱型のオルゴールがあった。大祐が取り出そうと手を触れた瞬間、そのオルゴールが急激に熱を帯びた。


 「あっちぃ! 何ですかこれ!」


 「おいおい、どうした」


 「俺が触れた瞬間めちゃくちゃ熱くなって」


 「大熊、触らないで。多分、何か術の類がかけられている。私なら触れると思う」


 大祐が止める間もなく沙紀は、オルゴールを取り出す。すると自分の時とは違って何も起こらないようだった。


 「何なんですか?」


 「多分、オルゴールの持ち主か私を読んだ声の持ち主が特定の人物以外は触れられないようにしたんだと思う。中にあるのは、手紙?」


 オルゴールの中にあったのは手紙の束だった。封筒の字は見知った緋奈の字で宛名は、お父さんへとだけ書いてあった。他にもお母さん、お姉ちゃんへと書いてある手紙が何通もある。


 「ご家族宛のお手紙かしら。それにしても結構な量ね。一度も出していないのかしら」


 「多分。緋奈姉の家族の話は聞いたことがない。地震の前はほとんど家出状態で自宅に帰ってなかったって聞いた。その内に能力に目覚めて学園に保護されたって。ねぇ、これを渡せばいいの?」


 沙紀が大きな声で問いかけると蛍程大きさの朱い光が三つ現れた。


 『オネガイ、ワタシタチノケイヤクシャガマッテイル。モウワタシタチハキエテシマウカラ。サヨナラ、…………サマ』


 朱い光はそれだけ伝えると消失してしまった。


 「きっとさっちゃんが来るのをずっと待ってたのね。届けてあげましょう?」


 「うん」

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