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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File.8 相談<1>

 お会計をして店から出た沙紀は、入口近くにいた男性に軽くぶつかった。男性の右腕には近所のスーパーの袋がぶら下がっていた。


 「すみません。大丈夫ですか?」


 袋の上部側に卵のパックがあるのを見て、沙紀は慌てて謝罪した。ぶつかってしまった時に割れてしまっていては大変だと思った。


 「大丈夫ですよ。お嬢さんこそ、お怪我はないですか?」


 にっこりと笑う男性の顔を見て一瞬、沙紀は既視感を覚えた。しかし、どこで見たのか思い出せないので気のせいだろうと結論付ける。


 「私は大丈夫です。…………もしかして、このお店のマスターさんですか?」


 「そうです。まぁ、接客が苦手なので表の仕事は妻に任せきりですが」


 「初めまして。九重と言います。ここのプリンが私の癒しです。いつも美味しいプリンを作ってくれてありがとうございます」


 「…………初めまして。杉浦といいます。あぁ、もしかして妻が言ってた沙紀ちゃんというお客様はあなたでしたか。私の作るプリンが大好きな子がいると聞いてます。こちらこそ、いつもありがとう」


 「…………恥ずかしい。それでは失礼します」


 沙紀は頭を下げてお辞儀をするとその場を後にした。残された杉浦は沙紀を見送りながら、誰にも聞こえないように呟いた。


 「やはり、覚えておられないか」


 事務所に戻った沙紀は、自分のデスクの上に例の郵便物を見つけると溜息ををついた。内容はいつもと同じなのでそのままシュレッダーにかける。そんな自分の行動を皆が心配そうに見てくるので、そろそろこの郵便物について話しておくことを決めた。


 「みんな、この郵便物が来たらシュレッダーにかけていいから。内容や送り主についても説明する」


 「中身は確認しなくていいんですか?」


 大祐の問いに沙紀は大きく頷く。皐月や田丸も沙紀のデスク近くに椅子を寄せてきた。


 「さっちゃん、送り主は知っているの?」


 「うん、学園における大量殺人事件の真相解明を求める会が送り主。会員は、学園での事件で子供を亡くした一部の親とそれを支援する人々の団体」


 「学園ってあれだろ? さっちゃんが在籍してた政府主導の施設」


 「そう。能力者の子供を養育する施設。まぁ、今のホームの原形みたいなものね。私を含めた数人の生徒以外は全て亡くなってしまったけど。大熊も聞いたことはあるでしょ?」


 「ほんの少しですが。ただ、詳細は知りません。…………噓です。少し調べましたが自分の権限では詳細は分かりませんでした」


 沙紀にジッと見つめられた大祐は素直に吐いた。その様子に田丸はやれやれと首をふった。


 「まぁ、そうでしょうね。政府の上層部は自分達の汚点は隠したいでしょうから。おそらく、表向きには大規模火災として処理でもされているんじゃない?」


 「はい。能力のコントロールの失敗からの火災事故として書かれていました」


 「一応、事故以外の可能性もあるから継続捜査班に回されているけどろくな捜査はされてないみたいね。定期的に捜査資料は取り寄せているけど全く進展はないようだし」


 沙紀はタブレット端末に保存している捜査資料を大祐達へ送った。その資料にざっと目を通したが確かに特に進展はないようでただ時効がない為、形だけの捜査をしている様子がうかがえた。


 「捜査しようにも秘匿事項が多いから捜査班には、新規の情報を得ることは難しいでしょうね。例え何かの証拠を得たとしても異動させられて捜査から外されるでしょうし」


 「でも、さっちゃんが定期的に捜査資料を取り寄せているってことは事故とは考えていないのよね?」


 「当然。私達はあの事件の生き証人なのよ。と言っても燃え盛る炎に阻まれて何も出来なかったし、私が途中で意識を落としてから目が覚めたのは数日後。現場も封鎖されて立ち入りが制限されてしまった。私は当時ただの生徒であって刑事じゃなかったから」


 捜査資料を睨み付ける沙紀の目には怒りの感情が宿っていた。その様子に大祐達は当然の反応だと思ったし、こうやって資料を取り寄せることで捜査の実態を確認しているのはきっと沙紀が刑事になった理由の一つなのだろうことが察せられた。

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