File.6 回顧<2>
学園の広大な敷地を囲う壁にある唯一の門に到着して、車を飛び降りた沙紀達は言葉を失った。門の内側でのみ燃え広がる炎と時折響く轟音。その轟音の発生源にあるのは、職員と生徒達が暮す寮。元々、能力者である生徒達が力を暴走させる可能性を考慮して作られたとても頑丈な建物が半壊している。
「は? 噓だろ、寮が半壊するなんてありねぇ」
「えぇ、この間の暴走の時も一切壊れることなかったはず」
「何これ? この炎、おかしい! 全然、私の命令を聞かない!!」
門に到着した瞬間、沙紀は力を使って炎を治めようとしていた。通常の炎なら直ぐに思い通りにコントロールが出来るのに、この炎は全く出来なかった。その様子を近くで見守っていた職員は、沙紀ではこの炎をどうにか出来ないと判断し、周辺の様子を探る為に動きだした。本来なら残された子供達を守らければならないが、彼等も冷静さを失っていた。
「早く、早く、行かないと…………」
思うようにいかない焦りからか沙紀はすっかり冷静さを失っていた。もちろん、一緒にいた二人も冷静さを失っていたが門の内側から近づいてくる殺意に気づき我に返った。そして、自分達と一緒にいた職員達の気配が個々で離れて行っているのにも気づいた。
「やべぇな。おい、エマージェンシーは送っているんだよな」
「はい、無線で確認しました。しかし、場所が場所ですから到着までには時間がかかるでしょうね」
「…………そうか。この場合、何より優先すべきは自分達の命だ」
「はい。…………沙紀さんには、つらい選択をさせることになりますが」
泣き叫びながらも必死に炎をコントロールしようとあがいている自分達の妹に酷い選択をさせることになる。あの炎の中には、あの子の大切な姉達がいる。もちろん、自分達にとっても大切な家族であり仲間だ。それでも今は何としても自分達は生き延びなければならない。
「沙紀の意識を落とす。その後は、お前が抱えて走れ。俺が奴らを止めて相打ちさせる。まぁ、いつもの動きだな。お前なら読めるだろう、奴らの動き」
「もちろんです。私の目を何だと思っているんですか。安全な場所を探して絶対に逃げ切ります」
「ごめんな、沙紀。…………恨むなら、俺を恨め」
そう言って沙紀の頭に軽く能力で振動を送って疑似的な脳震盪状態を起こして意識を落とす。そして、倒れた沙紀の体を持ちあげると同時に二人は森の中に姿を消した。その直後、門の内側から全身黒づくめの人間が数人現れた。門前に止まる車の中に人がいないことを確認すると、森の中でバラバラに感じる人の気配を追ってそれぞれ森の中へと姿を消したのだった。




