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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File.6 回顧

 『学園』

 その名前は、深い悲しみと後悔の念と共に政府関係者・警察関係者に苦い記憶として脳裏に刻まれている。そもそもは、突然特異能力を手に入れてしまった人々への救済措置として作られた教育機関だった。能力を手にした若い年代の人々への正しい教育を与えて社会と馴染ませるという目的の元、都心から少し離れた山間部に作られていた。


 (まぁ、学園に入学するまでの時点でけっこうな差別を受けてきているからわりと問題児ばかりだったけど)


 沙紀は、昔の記憶を思い出しながら学園の面々を思い出す。自分より幼い子供達は素直に先生方の教えを受け入れていたけど、自分より上の子達はかなりひねくれていた。それでも自分の能力を完全にコントロール出来ない限りは、外へ出ることが許されないから必死に学んでいたと思う。


 「そもそも正しい教育って何なんでしょうね。別に我々は好きでこんな能力を手に入れたわけでもなく、周囲が勝手に恐れて普通の生活を送れなくさせられただけ」


 「国としては、正しい倫理観を持ち国に従う人間を作ることが正しいと思ってんだろ。そこら辺は、適当に従ってれば将来は安泰なんだから細かいことは気にすんな」


 「お二人とも、沙紀ちゃんに悪影響を及ぼすのでそういう話は止めてください」


 「別に大丈夫。私は将来パパさんやママさんみたいになると決めている」


 あの頃の自分は周囲から距離を置かれていた。同年代の子達とは違い能力を完全にコントロール出来た上にその力の強さから大人達も持て余し気味だった。そんな時知り合った学園の変わり者グループの年長組に何故か気に入られ行動を共にするようになる。その中に彼女もいた。自分より能力は劣るものの発火能力者としては優秀で、自分のことを妹のように可愛がってくれるとても優しい人。


 「沙紀ちゃんは、本当にプリンが好きなのね」


 「うん。プリンを食べると誰かの姿が思い出される気がする。もしかしたら、家族との思い出かもしれない。まぁ、知らない人のことかもしれない」


 「こーら、最後の言葉はいりません。きっと家族との思い出よ。大事にしなさい」


 「…………うん。だからまた作ってくれる?」


 「もちろん、いくらでも作ってあげるわよ」


 「ありがとう。緋奈姉(ひなねぇ)


 お礼を言ってはにかみながらプリンを食べる沙紀は、年相応の幼さと可愛らしさがあり緋奈にとって癒しの時間でもあったらしい。生き残った仲間の一人からそう聞かされて一人でプリンを食べて彼女を自分なりに弔った。


 あの日は、卒業前の最後の演習に出かける日だった。学園の卒業の定義はすごく曖昧で能力を完全にコントロール出来るようになると社会に戻り一般の学校へ通わされる。本当は、緋奈も一緒に参加する予定だったが、風邪をひいてしまい不参加になった。それが彼女との別れになるとは、誰も思ってもみなかった。


 「あっけなかったですね」


 「うん、簡単すぎ」


 「まぁ、そう言うなって。能力のない一般人からしたら大事なんだよ」


 「ただ、遅くなりましたからね。沙紀さんは、寝ててください。着いたら起こしますから」


 「…………子供扱いしないでくれる?」


 「成長期なんだから、ちゃんと寝ることも大切なことだぞ」


 「むぅ…………、おやすみなさい」


 体は正直で疲れが溜まっていたのか、すぐに沙紀は眠りについた。そんな彼女に一緒にいた二人は、自分の上着をかけてやると、起こさないように黙った。しばらく車内には車のエンジン音だけが響いていたが、突然無線が鳴り出す。その音が鳴りだすと同時に沙紀は飛び起きた。


 「まだ、学園に着いてないぞ」


 「違う! 燃えてる。学園が燃えてる!」


 「二人とも静かに!…………無線が聞こえません」


 夢の中で突然感じた寒気と恐怖。それと同時に沙紀の脳裏にあるビジョンが浮かんだ。燃え盛る炎と逃げ惑う人々。そして、侵入してきた何者か達と必死に戦う緋奈の姿が。

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