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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File4. パトロール<2>

 その知らせが無線から入ったのは、パトロールのコースを半分程回り切った頃だった。始めは刃物を振り回した男が暴れているという報告だったが、しばらくすると男が周囲の車を振り回し始めたとの報告へ変化した。


 「大熊、次の角を右折。その先で規制線がしかれてる。犯人は、もうワンブロック先の区画にいるけど一般の警察官は下がってる」


 「了解です」


 沙紀の指示通りに車を運転すると、そこには規制線を張り周囲の人々をシェルターへ退避させている警官達がいた。退避して無人になった車が列をなしていたので、大祐達も車を止めて現場へと走って向かう。


 「一般の方は、避難してください!」


 「特異課の九重と大熊です。我々が対処しますので、状況を教えてください」


 「失礼しました。あちらに指揮本部が」


 誘導の警官が手で示した先に、特殊装備を着込んだ集団がいた。その中には、鈴木警部の姿も確認出来る。


 「ありがとうございます。大熊、行くわよ」


 「了解です」


 沙紀達が指揮本部へ近づくとこちらに気づいた鈴木警部が手招きしてくる。


 「お疲れ様です。現場の状況は?」


 「現場は、その先にある公園だ。住人の避難は完了しているから問題はなし。例の一族からの連絡で直ぐに対処したからな。ただ、最悪な事態が一つ発生」


 鈴木警部の険しい顔つきに人質でも取られているのかと二人は身構える。それならば更に応援が必要だが、あの一族が警察の介入を許すだろうか。


 「あぁ、彼等が出てきたのね。なら、我々も手を出せませんね」


 沙紀の言葉に大祐は、視線を現場方向へ向ける。時折、公園がある場所から大きな音が聞こえる。車を振り回しているという点から犯人が念動力を持つ可能性が高い。振り回した結果、車のガソリンに火が引火する可能性がある。速やかに犯人の行動を封じる必要性が高いのに、肝心の自分達が動けないなんて。


 「最悪だ。早く事を納めないと危険なのに」


 「そうだ。それも犯人は、我々の仲間だ」


 「警察官ですか?」


 鈴木警部の言葉に大祐は、言葉を失う。治安を守る警察官から犯人が出ると色々と騒ぎが起きそうだ。


 「その上、能力保有の報告がされていない」


 「最悪ですね。報告がされていないとうことは、腕輪で能力が抑制されていない。色々な意味で面倒が生じる。健康診断の際に能力検査もされているはずなのに。余程巧妙に隠していたのか、それとも隠されていたのか」


 「いいえ、報告はされておりますよ。ただ彼は一族の人間の為、通常の登録名簿に名前がないだけです。その代わりに特例名簿に記載があります」


 「誰だ!」


 突然、響いた女性の声に鈴木警部は声を上げて警戒態勢を取る。大祐も警部の上げた声に反応すると、腰に装備していた特殊警棒に手を伸ばす。そんな二人とは違い沙紀は、声の主を確認すべく後ろを振り返ると大きな溜息ををつく。


 「時枝さん。一般人が勝手に指揮本部へ足を踏み入れないでいただけますか」


 「あら、九重刑事は驚かれないのですね?」


 「これだけ堂々と気配を示しながら近づいて来られれば驚きません。能力を抑えていらっしゃらないとは、珍しいですね」


 「えぇ、今回の件は里から召集しました新人に任せております。ただ、本当に初仕事ですので私が後詰めです。いつでも能力を出せるようにしておかねば」


 「あなたが後詰め?」


 「はい。まだまだ幼い若君達のお世話をせねばなりませんので」


 いつも穏やかな笑みを浮かべこちらに心の内を見せようとしない時枝が、珍しくどこか人を小馬鹿にしたような笑みを見せることに沙紀は驚いた。


 (珍しいこともあるものね。それとも若君達というのが余程使えないのかしら?)


 


 

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