File.3 手紙<2>
「藤田さん。ライブラリーから引き出した事件の詳細情報になります。こうして見ると事件の発生率が高いのが分かりますね」
「そうね。だからこそ、彼等も色々と不満があるんでしょうし。そう言えば、さっちゃんは?」
「自分と入れ替わりでライブラリーに申請しているみたいです。自分がやりますって言っても大丈夫だから準備を進めろって」
「あら、珍しい。機械類が苦手だから、普段なら頼んでくるのに」
特異課のエースである沙紀さんだが機械類、特に電子機器系の扱いが苦手なのは本人のウィークポイントであると自他共に認める事実である。最近は、大祐が先回りしてその役目を引き受けている。
「何かあったのかしら? 田丸、今日の事件って何か問題があったの?」
「いや? 普通に組織同士の縄張り争いだな」
「まぁ、その内話してくれるでしょう」
「ですよね」
大祐と入れ替わりにとある事件の資料請求をライブラリーに申請した沙紀は、大きく溜息をつく。手元のタブレットには、過去に請求した資料が保存されている。おそらくは新しい情報はない。前回の申請から半年も経っていないのだから。
「私達の子供を返せか…………。返せるものなら返すんだけどね」
脳裏に残るあの日の記憶。実習を終えて帰ってきた自分達の目の前に広がった地獄のような光景。燃え広がる炎と実習に同行していた職員達の悲鳴。炎を抑えようとしたけれど、普段とは違って彼等の意思を感じ取ることが出来なかった。抑えても抑えても勢いは増すばかりで。彼女と約束してたのに。帰ったらご褒美のあれを作って待っているからって。彼女のお父さん直伝のスペシャルレシピで作るって約束してたのに。
「…………約束守れなかった。彼女のお父さんにも会えなかった」
あの事件の唯一の生存者である自分達には、事件に関しての秘密保持義務がかされてしまったから。そもそも生存者と言っても自分達が学園に帰ったらもう事件は終わっていた。
「彼等が真実を求めて活動しているのは知っているけど。何で今さら私に接触しようとしてくるの?」
無記名で届いたあの封筒の中身は、彼等からの手紙だった。真実を求めて事件に関する情報提供を求める手紙。そもそもあの日、生き残った私達の情報は秘匿情報で誰も知らないはず。
「真実を知りたいのはこちらも一緒なんだけど…………。まぁ、無理よね。両者が歩み寄るには、大きな障害があるし…………」
ピコン。
端末から情報照会の終了の通知が鳴った。画面を開くとそこには半年前と同様のデータが並んでいる。
「やっぱり、変化なしか。うーん、嫌な感じがするなぁ」
大祐ほどではないが沙紀の勘もそれなりに当たる。多分、特異課の面々を巻き込むことになるだろう。だけど、今の情報量では説明するにも状況の把握が沙紀でも難しい。もう少し情報が集まってから相談することを決めた沙紀は、端末の電源を落とすと事務所へと戻った。




