File.27 潜入作戦<11>
守護霊は、それまでの火球のサイズを野球のボール程度の大きさに変えて作り上げる。その火球を大祐が投げたペンダントへ投げつけた。すると火球の炎がその石を包み込む。炎の高温により、黒い石はパキッと音を立てると割れる。その瞬間、爆風が起こる。大祐は、目の前に倒れた少女の体を抱え込むと床へ伏せてその衝撃に耐えた。
「…………終わった?」
爆風がやみ、体を起こすとその場には天井を睨み付ける沙紀の姿があった。
「あぁ、終わったぞ。奴らも本気ではないだろうからな。ただ、厄介だ」
「厄介?」
「あぁ、この船に微かに奴らの気配がする。…………もしかしたら、見つかってしまったかもしれない」
「見つかるって…………」
「小僧には関係ないことだ。ただ、時が来てしまっただけのこと。さぁ、あまり体を借りてもこの子に負担がかかる。あとは、頼んだぞ」
そう言うと沙紀の体は、その場に崩れ落ちてしまった。あわてて沙紀の体を起こすと穏やかな寝息を立てている。
『小僧、あの娘の邪気は払っておいた。上には、その場に残っていた爆発物に引火したとだけ伝えておけ。黒いもやなどなかったとな。それで、少しは時間が稼げるだろう』
そう言い残すともう一人の守護霊の気配も完全に消えた。正直、大祐は何が何やら分からなかった。とりあえず、彼女の命は守られて自分達も無事だったことを喜ぶとしよう。
『さっちゃん! 返事をして!』
沙紀が身に着けているインカムから皐月の声が響く。沙紀の耳から取り外すと大祐は代わりに返事を返した。
「残ってた爆発物にちょっと引火しまして。もう、入ってもらって大丈夫です」
『大祐君! どういうことなの?』
「事件解決?ですかね」
『何なのそれ?』
「とりあえず、二名意識がないので担架をお願いします」
大祐は、通話を切り周囲を見渡す。沙紀の投げた火球の影響か、周囲の機材が壊れている。運よく、火事には至っていないが、壁にはいくつか焼け焦げた跡が残っていた。
「まぁ、被害は少なくすんだかな」
その頃、船内は爆発の揺れにより現場が混乱していた。それでも子供達を中心として避難誘導が進んでおり、怪我人も出てはいなかった。その避難の列に並ぶ親子2人が、揺れの発生源である床をジッと見つめていた。その2人は、先ほど大祐が声をかけた親子連れだった。
「かすかにですが、焔は確認できましたね。本当にかすかですが」
「やはり、あの方は生きておられた。…………奇跡だ」
「でも、完全ではないですね。そのまま眠っていたほうが彼女の為なのでは?」
「…………今度こそ、お守りする。ただ、その為には目覚めは必要です」
「…………本当にそうかしら? 望んで忘れたものを無理矢理思い出させるなんてこと、本人の意思を無視しているだけよ。自分勝手な人達ね」
少女は、無理矢理こちら側の舞台に引きずりだされようとしている沙紀に少しだけ同情した。




