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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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File.27 潜入作戦<7>

 大祐は、船内連絡用のインカムのマイクを了承の意味を込めて軽く一度叩く。その様子を見ていた作業員の男が声をかけてきた。


 「どうした、兄ちゃん。インカムなんか触って」


 「あぁ、朝からインカムの調子が悪くて。本当は別の物に変えたいんですけどね。なかなか、暇がなくて」


 「よかったら、あとでみてやるよ。趣味でそっちの修理もやってるんだ」


 「本当ですか? いやー、助かるなぁ。備品を壊すと色々と上がうるさくて」


 「どこも一緒だな。元々、今日はこいつの作業の監督だからよ。作業中にパパっとみてやるよ」


 「助かります!」


 内心、自分の事がばれたかと思った大祐は、ホッとした。男も大祐のヘラヘラした笑いに気を許したのか会社の上司への愚痴など世間話を始める。それを相槌を打ちながら聞きつつ、彼女の様子を探るがその表情は帽子で影がかかり確認出来なかった。


 しばらくすると廊下に設備管理と書かれた場所につく。更に進むと空調室と書かれた扉が見えてきた。


 「鍵を開けるのでちょっと待ってください」


 大祐は腰に付けた鍵の束から空調室の鍵を見つけると扉に差し込み、鍵を開けた。そして二人を中へと誘導する。


 「おい、作業を始めろ。今回はS区画の客室の調整だ」


 「はい」


 彼女は、作業用の工具を持って対象の区画の機械へと向かって行く。男は、指示を出すと大祐へと近づいてきた。


 「さっきのインカム見せてみな」


 「ありがとうございます。ちょっと外すので待ってください」


 大祐がインカムを取り外し始めると男はそっと大祐へ近づき首に手刀を入れる。そして大祐の体が崩れると同時に腹に一発打撃を加えてきた。


 「え…………」


 「悪いな、兄ちゃん。ちょっと寝ててくれ、運が良けりゃ死なないからよ」


 大祐の体を壁際まで運ぶと男は、インカムを取り外すと電源を切り床に投げ捨てる。そして、大祐のポケットから先程奪い取られたライターを取り出す。


 「やれやれ。これは返してもらうぜ。おい!」


 「…………いいんですか? 犠牲者は出さないようにという依頼のはずですよね」


 「仕方ないだろ。そもそもあっちの確認不足だ。聞いていた警備内容と全然違う。ほらよ、大事な火元だ」


 女性は男から投げつけられたライターを受け止めると溜息をついた。


 「別にこんなものいらないですけど。そもそも火元なんて、私達には必要ない」


 「お前、馬鹿か。後から現場検証で火元が特定できなきゃ、事故にならねぇだろうが」


 「事故に見せる必要なんて…………」


 「俺らが依頼を受けたのは、火事を起こすまでだ。それ以上は何もしない。あとは奴らが何をしようが俺らには関係ないことだ。…………それなのにお前らが割り切らないから、あんな事になったんだぞ? 俺らにはもう後がない。あいつがどうなったか分かってるだろう? お前は自分の命を優先しろ。そもそも他人の人生なんて背負える程、お前らは大人じゃねぇんだから」


 「でも…………あの子達が」


 「火事が起こればどさくさに紛れてガキの一人くらいは、連れだせる。いいか、俺らは受けた依頼を実行する。それだけだ」


 壁際で気絶する振りをした大祐は、二人の会話を聞きながら疑問に思う。


 (この二人の関係性ってなんだ…………。実行役と組織の見張りじゃないのか)


 「あとは、合図を待つまでだ。準備しとけ」


 「分かった」


 彼女は男から受け取ったライターオイルを白い綿にひたしていく。恐らくそれを火元にするんだろう。男は携帯を取り出すと壁際に座り込んだ。


 『大熊。私達も空調室に侵入したわ。彼女が能力を発動する瞬間に結界を張る。その直後に田丸は、男の確保、あんたは、彼女を確保。私は念の為に火の始末に備える。それまで上手に気絶の振りをしてなさい』

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