File.27 潜入作戦<2>
あゆみちゃんが落ち着いた後、両親とカウンセラーの立会いのもと彼女への聴取を行った。小学校の下校時刻に見知らぬ男性に声をかけられた事、そして男性の手にした手紙を書いたのが自分の兄だということを確認してから教会へ向かったと話してくれた。実際に教会にたどり着いた後は、兄らしき人物の後ろ姿を見た直後に気を失ってしまったという。
「気を失った後は、どうだったか覚えているかしら?」
聴取を担当する皐月の言葉にあゆみは首をかしげる。
「目が覚めたら、教会の椅子に寝かされていて牧師さんがいたの。ちょっと顔色が悪かったけど、いつも通り優しかった。それから、お兄ちゃんから渡されたお手紙を読んでもらったの」
「お手紙?」
「うん。あゆみは、これからお父さんのお友達の家の子になるって。大きくなったら会えるから、それまでいい子にしてるんだぞって。新しいお父さんとお母さんは、すごく良い人だから心配するなって。きっと、お姉ちゃんと一緒に会いにいくからって」
「ご両親は、彼女のお兄さんと面識はありますか?」
「一度だけ、教会の炊き出しで会いました。炊き出しは、バザーも行われていてそこで子供達と親の面通しが行われるんです。あゆみちゃんとは、何度かそこで交流を持っていました。その時にあゆみちゃんを引き取らせてもらえないかと話をしました。彼は毎回炊き出しに参加してあゆみちゃんの様子を確認していたんです。最初は警戒していたけれど、頭を下げて私達の事情やどうしても彼女を養子にしたいと幸せにすると話をしました。もちろん、定期的に兄妹の交流を持ってもらってかわまないと。なのにこんなことになるなんて…………」
話の途中で事件に巻き込まれた彼を思い出し、母親は泣き出す。そんな彼女の肩を抱き慰めながら父親が話を続ける。
「私達にも娘がいたんです。丁度あの地震があった時に妻の実家で過ごしていて被災しました。その時に娘を亡くしたんです。それから毎年来日してあの子と過ごした場所を回っていて、偶然この子と出会いました。もちろん、娘の代わりにというわけではありません。ただ、あの子が繋いでくれた縁なのかと思いまして。調べたら、彼女達はとても難しい立場に立たされた子供だった。あとは伝手を使って今回の養子縁組の手続きをしました。手紙を読んだこの子をそのまま引き取ることになり、滞在先のホテルへ移動したのです」
「その時、彼に会いましたか?」
「いいえ、その時は直接は会っていません。ただ、牧師様の体調が悪いのか顔色が悪く早く移動するようにと促されました。少し、まずい人間達がうろついているから出国までは、なるべく姿を隠すようにと。彼は見送りには行くと言っていたと」
「そして最初の事件が起きて、出国自体が延期されて今回に至るということか。以上で聴取は終了です、ホテルまではこちらで車を出しますので」
「ありがとうございます。さぁ、帰ろうか。お兄ちゃんも一緒に」
「…………うん。一緒に帰る。ねぇ、警察のお姉さん」
「どうしたの?」
「お姉ちゃんを助けて。お姉ちゃんは悪くないの。本当は誰よりも優しいお姉ちゃんなの」
「えぇ、彼女を保護できるように全力をつくすわ」
玄関前まで三人を見送る。母親があゆみの手を取り、父親が骨壺を抱えて一礼すると車に乗り込みホテルへと戻っていった。彼については責任を持って彼等のご両親のお墓に埋葬すると約束してくれた。その誠実な姿を見て、最後に彼が妹を託そうと選択したことは間違いがないと皐月は思った。
「やっぱり、兄妹はなるべく同じホームで生活できるようにすべきよね?」
そもそも彼等が同じホームで生活していたなら、こんな危ない伝手を使用した養子縁組話になった可能性も低かったのではないだろうか。
一緒に聴取に立ち会っていた沙紀に話を向けると彼女は、眉間に皺を寄せて首をふった。
「うーん、難しいところだとは思う。家族がいることで能力が安定すればいいけど、あゆみちゃんのように不安定さを増す場合もある。そもそも最初はあの二人は同じホームにいたの。彼女が赤ん坊だったのもあって。でも、彼の力が強すぎてあゆみちゃんもそれに影響を受けて力が不安定だったらしい。私が学園にいた頃も似たよう事象が確認されたから、今の能力の強さによる振り分けになっていったそうよ。こればかりは、検証を続けていかないと答えは出ないのかも」
そもそも能力が何故発現するのか、どういった条件なのかも分かっていないのだ。




