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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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File.27 潜入作戦<1>

 「いい天気だな」


 大型客船のお披露目式の準備をしながら、大祐は空を見上げる。雲一つない青空は、新たな旅に出航するこの船にとってはとても良い一日になるに違いない。メインデッキのダイニングで行われるパーティーの準備をしながら、船内を移動しつつ船員や今日のパーティーの為に動員されているクルーズ会社の人員の様子を伺う。最上階のデッキは、プール等の施設があり、子供を連れた客の姿もちらほらと見られるようになった。その中には、新たな両親に連れられたあゆみの姿もあった。父親と母親に手を繋がれて嬉しそうに歩くその姿は何も知らない他人から見たらどこにでもいる幸せそうな家族そのものだ。


 『大熊、聞こえる?』


 耳に着けていた無線から、沙紀の声が流れる。


 『はい、聞こえます』


 『あゆみちゃんの姿は確認出来たかしら?』


 『はい。今のところ異常はありません』


 『そう。客室や全ての施設を確認したけれど爆発物はなし。おそらく潜入して設置して爆破の流れでしょう。不審な人物の出入りがないか確認はしている。ターゲットの彼女は、まだ到着はしていない。警部達も彼等のアジトを見張っているけどまだ動きはないみたい』


 『了解です。でも、危なくないですか? わざと彼等の潜入を見逃すなんて』


 『仕方ないわ。組織側から見て実行犯の彼女に落ち度がないところを見せないと、後々厄介だもの。それに組織自体をきれいに掃除しないとね。あなたは、そのままあゆみちゃん達の警護を続けてちょうだい』


 『了解です』


 近くまで飛んでくる海鳥を見て笑うあゆみの姿を見て、大祐はホッとした。その姿を優しく見守る両親の姿に彼の最後の願いが叶って良かったと思う。


 沙紀の能力暴走の次の日、養子縁組をした家族を集めて事情聴取が行われた。その中には、あゆみの姿もあった。聴取の後、彼女は両親と共に兄の亡骸と再会を果たした。遺体安置室に響いた彼女の悲鳴にも似た泣き声にその場に立ち会った大祐達は、何も出来なかった。そんな彼女を支えたのは新しい彼女の両親だった。その姿にあゆみちゃんを託す事に問題はないと判断された。その為に佐々木判事達は、急ピッチで今回の養子縁組に関して問題がないように枠組みを作った。それと同時に今回の加害者であり被害者でもある彼女を救う為の作戦が立てられた。


 今回の作戦は、事件を未然に防ぎつつ、実行犯である彼女の保護が目的だ。その為にあゆみちゃん家族や同じように養子縁組をした家族には実際に船に乗船をしてもらう。それ以外の客は全て捜査関係者である。もちろん事前に彼等には安全面の保証をして協力を得た。自分達が行った養子縁組が正規のものではないと自覚している為か、すんなりと協力要請を受け入れてくれた。もちろん、対価はある。今回までの養子縁組を見逃すという対価だ。もちろん、簡単に見逃すのではなく条件は付けられた。


 1.国からの定期的な家庭環境の調査を受け入れること。


 2.国外には出国はせず、居住地は東京とすること。


 彼等はその条件を二つ返事で受け入れた。居住地を東京にするということは、かなりの決断がいると思い揉めるだろうなと予想していたがあっさりと承諾するので拍子抜けしてしまった。そんな大祐の様子を見て沙紀は笑っていた。


 「元々、彼等は純粋に子供を欲していたのよ。それに短期間だけれどもう家族として時間を過ごして、絆も生まれている。その上で今回の養子縁組を見逃すと言っているのよ、条件を受け入れるに決まっているでしょ? それくらいの覚悟がなければ、最初からこんな手段を取らない」


 「でも、自分達の国でも養子縁組は出来るのでは?」


 「まぁ、推測ではあるけど夫婦どちらかが日本人であるとか、夫婦の形とか色々あるでしょ? きっと何らかの事情で自国の正規な方法だと許可が下りづらいとかじゃない? さすがに他国の養子縁組事情までは把握出来ない。ただ……」


 「ただ?」


 「あの子達が幸せになればいいなと願うだけよ。その為にも絶対に作戦を成功させて、不穏分子の駆除を確実にするわよ。あなたも気合を入れなさい!」


 「はい!」

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