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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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File.25 それぞれの夜<1>

 「はい、治療完了。よく我慢したわね」


 「いてぇ! 叩かないでください!」


 特異研に着くなり大祐は診察室で火傷の治療を受けていた。担当をしてくれたのは、女医でバッチには九重と記載されている。もしかしてと思い確認すると課長の奥様だった。包帯を巻かれた腕をポンポンと叩かれると現場では感じなかったじくじくとした痛みが走る。


 「それにしても、あなた運がいいのね。けっこう燃えたって話には聞いてたのに、火傷がそれだけなんて」


 「まぁ、防火性の高い服は着てましたし、火は極力避けていたので」


 「あぁ、あなたの能力ならそれも可能か。ありがとう、あの子を助けてくれて。おかげであの子は火傷は負ってないし、腕輪の副作用で眠っているだけですんだわ」


 「いいえ、自分はただ走り回っただけですから。沙紀さんは、怪我はなかったんですね」


 「えぇ、基本的に自分で生み出した火があの子を襲うことはないしね。ただ、燃え移って新たに燃えた火に関しては危険があるし、煙を大量に吸ったら危なかった」


 九重医師のホッとした顔に作戦が無事に完遂出来て良かったと大祐は思った。


 「失礼します。大熊、治療が終わったなら悪いがこっちに来てもらえるか?」


 「鈴木警部、いらしてたんですね。了解です。先生、治療ありがとうございました」


 「全く今日くらい怪我人は休ませられないの?」


 「すみませんね、先生。残念ながら事件は待っちゃくれないんですよ。行くぞ」


 「はい」


 九重医師に立ち上がり会釈すると大祐は、警部の後を追って廊下へ出た。廊下の先には、特異研の病院部分と研究所を繋ぐ扉が見える。


 「研究所の会議室を一部屋借りた。お嬢が結界を張る前にデータを送ってくれてた。今、こっちで調べてたデータと合わせて事件の捜査の詰めをしている」


 「職員の聞き取り調査は終わったんですか?」


 「あぁ。ただ、職員がしていたことはあんまり責められないがな」


 警部の言葉の歯切れの悪さに大祐は、首をかしげる。


 「責められないって、能力者排斥主義の人達がですか? 彼等の行ったことで人生が大きく変わってしまった子供達がいるんですよ?」


 「立ち位置の違いってやつだろうな」


 「立ち位置…………」


 「例えば、お前が非能力者で知り合いに家族にも経済的にも恵まれていない友人がいるとする。その友人は、学力はあるのに進学が出来ない。それどころか就職すら危うい。それなのに能力があるというだけで、優先的に国から補助を得られる人間がいるとする。そういった場合、不条理だと思わないか? 能力があるというだけで、助けられる人間がいることが」


 「確かに不条理だとは思いますが、能力者は更に不条理な世の中で生きざるを得ないです。多少の優遇は仕方ないかと」


 「それはお前が能力者で、警察関係者だからだ。能力者についての情報と現状が把握出来る立場だからだよ。問題の職員達も奨学金の数枠くらいの横流しは許されると思ったんじゃないか?」


 「奨学金の枠ですか?」


 「あぁ、例の財団はその年の余剰分の枠は非能力者の子供達へ割り当てるらしい」


 「彼等にも彼等なりの正義があったと」


 「あぁ、ただその正義の代償が能力者の子供達の生死に直結するとは考えてもいなかったんじゃないか。今回の件でホームの職員への情報開示の幅と教育が急務だということが分かった。同じことを起こさないようにするのが我々大人の責任だ」


 警部の説明に大祐は複雑なモヤモヤとした何とも言えない感情で支配された。どちらかを守るではなく両方守るという道はなかったのだろうか。


 「とにかく今はこの件に早々と決着をつけるのが今の俺らに出来ることだよ」


 「…………了解です」

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