表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春
4/139

File3.出会い<2>

 「…………ちょっと。ねぇ? あなた、人の話を聞いてるの?」


 「きっ、聞いております」


 「私は邪魔だと言ったの。入るつもりがないなら入口からどいて」


 「はっ、はい!!」


 慌てて振り向いた先にいたのは、背の半ばまである髪を朱と銀色の組紐でポニーテールにまとめ、黒いスーツを身にまとった少女だった。大祐は、その彼女の迫力に押されすぐに半分よろけながらその場を動いた。そんな大祐の横を彼女は颯爽とすり抜けて階段へと向かっていく。それを見送りながら、大祐は、はっと気付いた。せっかくこのビルに入る人間に出会ったのだ、ここが本当に警察署なのか聞かなければ。


 「あっ、あのすみません!! お聞きしたいことがあるのですが」


 急いで後を追い階段を登り始めていた彼女を呼び止める。すると、大祐の声が聞こえたのか、彼女は途中で足を止め不機嫌そうな顔でこちらを向いた。


 「…………何? 用があるのならさっさと言って」


 「この建物は、東京都警察本部分室・特異能力犯罪捜査課でよろしいのでしょうか?」


 「…………あなた、誰?」


 「私は本日付でここに配属されました。大熊 大祐巡査です」


 「ああ、確か新人が来るって言っていたわね。どうぞ、二階の部屋がそうよ」


 「はい、失礼します」


 一瞬、驚いたように目を見開くと彼女は、大祐の質問に答え足早に二階へと行ってしまった。彼女もここの刑事なのだろうか?それにしては、若すぎる気もする。しかし、とりあえず考えるのは後にして配属の挨拶へ行かなければ。


 大祐は、急いで彼女の後を追い二階へと階段を登る。二階に着くと同時に右手からパタンと扉の閉まる音が聞こえた。その閉まった扉を見ると確かにそこには、特異能力犯罪捜査課と書かれたプレートが取り付けてあった。


 ゴクッ。


 緊張のせいか喉を鳴らした大祐は意を決し、扉をノックして部屋へと一歩足を踏み入れた。


 「本日よりお世話になります。大熊 大祐と申します」


 「ああ、大熊君だね? どうぞ」


 大祐は、自分に声を掛けた人物を探し部屋の奥へと目線を移した。声の主は、窓辺で植物に水を与えている穏やかそうな男性だった。


 「はっ、はい」


 男性は手に持っていたじょうろを近くのチェストへと置くと大祐へと手招きをした。 大祐は急いで室内へ入り、その男性の元へと向かった。


 「はじめまして、大熊 大祐巡査だね? 私は、この特異課の課長を務める九重 礼一(ここのえ れいいち)です」


 「本日付で特異課に配属となりました大熊 大祐巡査であります」


 「そんなに固くならないでくれないかな。ここは、特殊な課でね。ある意味常識が通用しない所なんだ。だから、柔軟に頭を軟らかくね」


 「はい!!」


 「この課は、表向きは東京都の警察組織だがその実態は、政府直属の組織。だから警察と言っても他とは違う。その証拠に君と私と彼女以外の人員は、一般人だ。表向き、違う職業についている人間もいるから、追々紹介するとして……。まずは君の教育係を紹介しよう。沙紀くん?」


 「はい」


  大祐の後ろから突然声がした。


 (うわっ!?)


 「彼女は、九重 沙紀君。この課で唯一の常勤刑事。年は十八歳と若いけれど、中学生の頃からここで働いているベテランさんだ。沙紀君、彼が大熊 大祐巡査。警察学校からの初めての採用者だ。よろしく、頼むね」


  紹介された少女は、先ほどの階段で出会った少女だった。


 (十八歳!!俺より年下…………!?)


 「大熊 大祐巡査であります。よろしくご指導お願い致します」


 大祐は、腰を九十度曲げて目の前の少女・沙紀に挨拶をした。すると、沙紀はじっと大祐を見た後、鼻で笑う。


 「知ってる。さっき聞いた。課長、役にたつの? これ」


 (これ!? これって俺は物じゃねえ)


 「はーーっ。沙紀君、失礼でしょ?」


 「だって、私が後ろに立ったのにも気付かないのよ。これで十分でしょ」


 (かっ、かわいくねー)


 「いいから、大熊君を頼むよ。これが彼のデータだ。彼は能力についての訓練を受けてないから、沙紀君そっちの世話も頼むね」


 「はっ? 訓練してないの? こんなの現場に出したって死ぬだけ…………」


 「だから、使い物になるまでお世話するのが教育係。よろしくね」


 課長は、そう言うと部屋を出て行ってしまった。

 そして後に残されたのは、この世の災難を一手に引き受けたかのように不機嫌な顔をした沙紀とどうすればいいのか分らない大祐だった。


 (俺は、今年は厄年なのか…………?)




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ