File.22 大きすぎる力<3>
大祐は、手元の時計に表示される沙紀の居場所を確認する。動いた形跡は全くない。皐月からは、例え意識がないように見えても沙紀なら無意識に力を発動するので間違っても殺気は向けるな、気配は極力殺すようにと注意を受けた。
(さすがに炎に襲われそうになったら、殺気は抑えきれないかもしれない。でも、相手は沙紀さんだから間違っても傷を負わすようなことはしてはいけない。彼女は保護対象だ)
パチンと気合を入れる為に両頬を引っ叩く。そして、皐月と田丸が待機している結界の前に立つ。大祐の気合の入った姿に二人は笑みを浮かべている。
「じゃあ、最終確認。私が結界に力を送り込んで壁を薄くする」
「その直後、俺が力で扉を作ってお前を内側に入れる。質問は?」
「扉が作られるなら、田丸さんも一緒に行けるのではないかと思うのですが……」
「相手がさっちゃんじゃなかったら、三人が通り抜ける間の扉の保持は簡単なんだがな。強度に全力を割いている上に中はどうなっているか分からない。ただ、お前なら行ける。難しい事は考えるな。さっちゃんの場所に行く最短ルートをお前が選んで行けばいい」
今回、作戦に参加する事になり田丸の能力を教えてもらった。彼の能力は、空間跳躍。簡単に言えばテレポーテーション。しかし、同様の能力を持つ人々と違うのは、対象物に触れることにより扉を作成し、他人をも跳躍させることが可能な点であるらしい。
「じゃあ始めましょう。スリーカウント後に田丸は扉を生成。大祐君は、扉が開くと同時に中へ突入。行くわよ、3・2・1」
皐月が結界に手を触れると眩い光が壁に広がる。そしてスリーカウントが響くと田丸は片手を壁につき能力を発動させる。その手から光の粒子が創製され、その粒子が扉を作成する。それを目のあたりにした大祐は、感嘆のためいきをつき、その光景に見入っていた。 そんな大祐を田丸は、拳で頭を殴りつける。
――――ガン!!
「いってー。ひどいっすよ、田丸さん」
「いいから、とっとと入りやがれ!」
田丸は大祐を蹴り飛ばし、無理やり扉に押し込む。
「うわっ!!」
扉の内側に無理やり押し込められた大祐は、悲鳴を上げて中へと姿を消した。その直後、扉は消える。扉から感じた熱気に田丸は顔をしかめた。
「結構、中の温度ヤバいかもな。それに気のせいか、炎が赤く見えた」
「赤く? 燃え移ったせいじゃない?」
「…………だよな」
沙紀の作り出す炎は青。それが鬼姫の由来である。恐らく火が燃え移った際に他の要因で普通の火事も起きたのだろう。だとすると、かなりの被害があるかもしれない。
「消防隊に連絡して、いつでも消火にかかれるように待機してもらったほうがいいな」
「えぇ、待機はしてもらっているからあちらの隊長さんに伝えてくるわ」
皐月は結界にチラリと視線を送ると、待機している緊急車両へと向かって行った。田丸は結界を睨みつけながら大祐へとエールを送った。
「実地訓練だ、根性見せろ!」




