File.22 大きすぎる力<2>
大祐と田丸が現場に着くと何台かの警察車両と公園の出入口に規制線を張り人の移動制限する警察官の姿があった。駐車場の奥へ行くと皐月が現場に指示を出す姿が目に入った。もちろん皐月も自分達と同じ様に鎮圧用の装備を身に着けている。
「藤田さん!!」
「姐さん、どんな状況?」
「さっちゃんが、中で結界を張っているおかげで周辺に被害は出ていないわ。周辺に住む人達にはいつもの警報と同じだと伝えてシェルターに入ってもらっている。ただ、さっちゃんと連絡がつかない。もしかしたら、意識を失っているか能力を抑えるのに手一杯になっている可能性があるわ」
「随分と厳重に張ったもんだな。これだと中に入れないぞ」
「さっちゃんがいるのは、ここ」
皐月は公園の見取図をタブレット端末に表示させる。公園の東側入口から最も近い場所だ。そちらに視線を向けて、大祐も意識を集中させる。すると、沙紀がいるとされる場所をすっぽりと包む半円の結界と公園全体を覆う結界が見えた。
(能力が低い俺でも意識を集中すれば見れる)
「見えたか?」
田丸の声に大祐は頷く。
「お前にも見えるってことは、人から隠すより強度を優先したってことだな」
「そうね、念のために消防車両も待機をしてもらっているわ。あの子が強度を優先しているとすると問題は一つ。この結界が解けない限り、中には入れない。私達、三人での同時突入は無理」
「中に入れないって……」
皐月を見ると眉間に皺を寄せてタブレット端末を睨みつけて考えこんでいる。田丸は、いつの間にか結界の壁に近寄り、両腕を組んで立っていた。そして、深呼吸をすると右手で結界に触れる。一瞬、青白い火の粉が舞ったように見えたが問題はなかったらしく、壁を叩いて何か確認をしている。
「やっぱり、今回はこの作戦しかないわね」
「姐さん、今回は新人君に頑張ってもらおうぜ。名付けて『忠犬の初めてのおつかい作戦』ってどう?」
「その作戦名はどうかと思うけど、それしかないわね。死ぬ気で走ってもらうから、犬ってのは間違いないわね。ふふっ、良かったわ。大祐君がきちんと警察学校で訓練を積んできている子で」
(忠犬? おつかい? 死ぬ気で走る?)
二人の言葉に大祐は、嫌な予感がして背筋に冷たいものが走る。そんな大祐をチラリと見た後、二人はボソボソとこちらには聞こえないように話を続けていた。そして、話が固まったのか皐月がにっこりと笑みを浮かべると手招きして大祐を呼び寄せる。
「作戦の概要を説明するわね。田丸、あれ出して」
「はいよ。大祐、手を出せ」
恐る恐る手を出すと田丸から箱を手渡される。箱の蓋を開けるとそこには銀色の腕輪が一つ入っていた。普段能力者が身に着けている能力抑制の腕輪だ。
「この腕輪は普段身に着けているものとは違う。俺らが着けたら即意識が飛ぶぐらいの作用がある特別性だ。さっちゃんなら、ゆっくり睡眠作用が働くくらいだけどな。それでも意識を完全に落とせる。緊張状態が無理にでも解ければ能力も落ち着く。今回の作戦は、俺らが開ける結界の入口からお前が侵入して、さっちゃんの位置まで一気に駆け抜けて、その腕にこれをつけるという単純明快な作戦だ」
「私が結界の強度を弱めて、田丸の能力であなたを結界内に押し込む。正直、中の状態はよく分からないわ。多分、中の温度もかなり高くなっているでしょうし、もしかしたら燃えている個所もあるでしょうから。ただ、君の能力が本物ならきっと大丈夫。最短ルートでさっちゃんの元にたどり着けるから。さぁ、準備を始めましょう」




