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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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File.21 情報屋<2>

 「牧師が亡くなったのは想定外の出来事でした。本来ならあゆみという少女は他の子供達と同様に正規の手段を踏んで養子に出される予定だった。しかし、彼女の兄はその話に同意はしなかったのです。彼からすれば善意を守る為に犠牲が出ることがどうしても納得出来なかった、どうしても」


 「何か理由があるの?」


 情報屋は、沙紀が手にした資料から一人の少女の情報が書かれた紙を引き抜くとそれに目を通すように促した。その少女は彼より一歳年上で同じホームで一緒に育った幼馴染。能力は彼と同じ発火能力。二人は本当に仲が良く同じ高校に通う生徒の間では有名だった。


 「彼等は進学は諦めていたけれど、就職して生活が安定したら結婚するつもりだったらしいです。二人であゆみちゃんを引き取って新しい生活を送るという希望を持っていた。しかし、彼女がホームを卒業する間際に両親から彼女を引き取る申請が上がりました。実両親からの申請です。余程の理由がない限りは通ります。彼女のご家庭は経済的には恵まれていましたから。ただ、彼女がその後たどった道は分かりますよね?」


 情報屋の話を聞いた沙紀は、持っていた書類を強く握りしめた。全ての人間を救うなんてことは出来ないことは分かっているがそれでも同年代の彼等を救う道はあったのではないかと思ってしまう。


 「いくら善意だろうとそれで救われる子供達がいるのだとしても、知ってしまった以上それを止める。そして起きてしまった犠牲の為にも今度こそ正しい枠組みを作る。それが私達の責任と義務」


 「あなたならそう判断すると思いました。ただ、そんなに気負う必要はありませんよ。我々は知っているでしょう? 絶望に叩き落されたとしても、そこからはいあがるのは自分次第で可能だってことを。では、私はこれで失礼いたします。今度はお店にいらしてください」


 男はそう言うと軽く手を振ってその場を後にした。彼の姿が消えると同時に今まで消えていた音や周囲の人々の姿が戻ってくる。


 (相変わらずの腕ね。さて、これからどうしようかしら)


 事件を追う上で残酷な事実を知ってしまうことは、今までもあった。それでも久しぶりにこれはけっこうくるものがあった。情報と何より自分の中に渦巻く感情を整理しないとまずい。自分の右手をみると薄っすらと青い膜が出来上がりつつある。このままだと熱を帯びていくのに時間はかからない。


 「とりあえず、結界を張るしかないわね。あとは誰かに迎えに来てもらわないと」


 左手で携帯端末を起動させ、手早くメールを送り現在地の報告をする。端末をポケットにしまうと右手首に装着している腕輪がミシッと鳴る。見るといくつもの細かいひび割れが発生していた。


 「まずいわね。…………とりあえず瞑想でもするか。気休めにはなるでしょう」

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