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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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31/162

File.20 事件の根幹<2>

 子供を売り飛ばすブローカー。それも合法的な手段を使う手法といい放置するわけにはいかない存在だ。ただ、合法的な手段を使用しているなら、警察は動けない。実の親と取引しているのだから、民事不介入という原則に動きを縛られる。


 「判事は、どうしてこの件に関わっているんですか?」


 そもそも判事という職に着く人が潜入する事になるのか大祐は不思議に思った。どちらかというと集めた証拠を精査していく役目を負うのが普通ではないだろうか。


 「そもそもこの件に気づいたのが私だからです。たまたま家庭裁判所に手続きにきた弁護士が大学の同期だったもので。その同期自体はあくまで法律上の手続きを依頼されたにすぎません。ただ、最近能力者の子供達の養子縁組を案件として受けることが多いと弁護士会で話に上がっていると教えてくれました」


 佐々木はその話を聞いてから直近の手続きがされた能力者の子供達の養子縁組について調査することにした。元々、能力者の子供達の養子縁組には厳しく調査が入るようになっており、件数としては年間で二十件あるかないかだった。半分以上が幼い子供達で両親との死別などが理由だ。ただ、その中の数件がホームを卒業した直後の子供が数人混ざっていたのに気づき、違和感を覚えた。


 「ホームを卒業したということは高校を卒業した子達です。たとえ親の経済状況が厳しくとも今なら進学することも可能ですし、親と縁を切りたいならば行政が保護を行います。ホームの卒業前にそういった制度の説明するオリエンテーションの参加を義務付けている。彼等は一般の子供より大人でリアリスト。そんな彼等が容易く養子縁組に同意するはずがない」


 佐々木の説明に沙紀は頷く。


 「確かに。そもそも彼等は能力者。自分に害意を持って近づく人間に気づかないはずがない。そうなってくるとその人身売買には彼等と同じ能力者が関わっている可能性が高い。最悪だわ」


 「えぇ、許し難いです。彼等の感じる未来への不安を一番理解出来る側の人間が行うなど言語道断です」


佐々木の表情は変わらないが、声音に微かな怒りを感じる。自分を律して淡々と事実を語っているが、きっと内側では怒りが渦巻いているのだろう。


 「へー、意外に熱い男なんだな。あんたって」


 「私は自分の責任を果たしているだけです。私は現在の両親から恵まれた生活環境と教育支援、そして能力者にとって不条理な世の中を変える為のチャンスをもらいました。なので同じようにチャンスを与えられるべき子供達の未来を守ることは義務だと思いますよ」


 そう言うと佐々木は席を立ち、現状報告をしてくると言い残して廊下へ出て行った。


 「人身売買ねぇ。話がどんどん大きくなって理解が追いつかないわ。結界の解析が終われば少しは事件の全容が見えるかしらね。私も解析を手伝ってくるわ」


 皐月はそう言うと車のキーを片手に扉へと向かう。その時、携帯端末を確認していた沙紀が大きな声で呼び止める。


 「皐月ちゃん、待って。途中まで乗せて行って。私も情報を受け取ってくる。大熊はこの場に待機しつつ、鈴木警部に上がってくるであろう情報を田丸と整理してて」


 「さっちゃん、情報屋さんのところへ行くの? その姿で?」


 「今回は非常時。着替える必要はない」


 皐月の着替えという言葉に大祐は首をひねる。課長と田丸は苦笑しつつ、深くは聞くなとばかりに沙紀に気づかれないように手を振って大祐を制した。




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