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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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File.19 牧師の正体<3>

 牧師の正体が自分達が予測していた人物とは違った事が気にはなったが、敵ではないことに大祐は安堵した。結界の分析班に加えて国の組織が関わっているのだから子供達の安全は保たれるだろう。


 「ふざけた人間ではあるけど、まぁ良しとしましょう」


 「おやおや、そんな簡単に他人を信じるなんて甘いですね」


 「誰だ!」


 田丸が声を上げると会議室の扉の前にぼんやりと人の姿が浮かび上がってきた。数秒後には、会議室の扉に寄りかかりながら人の悪い笑みを浮かべた男が現れた。それが誰かを確認した瞬間、青い炎が男へ向かって飛んで行った。しかし、男はその炎を恐れることなく右腕を前に突き出す。すると炎は男に当たることなく霧散してしまった。


 「随分と手荒な歓迎だ。だから力でねじ伏せるだけの脳筋集団なんて呼ばれるんですよ」


 「へー、教会では人の良さそうな牧師だったけど本性は大分違うのね」


 「当然でしょう。あくまで潜入している間は人に寄り添う牧師を演じているだけですから。それにしてもこんなに簡単に入り込めるなんてセキュリティがガバガバですね。一応、警察でしょう?」


 牧師の言葉に大祐は何も言い返せなかった。本当に誰も気づかなかったのだ、鹿山がこの部屋に潜入していたことに。


 「あらあら、そう言うあなたも随分と甘ちゃんね。へー、法務省のお役人かと思ったら意外、裁判官なのね」

 

 「え」


 「はい、動かないでね」


 鹿山の体に銃口を押し当てながらいつの間にか皐月が鹿山の懐から身分証が入った手帳らしきものを取り出していた。


 「さっちゃん、どうする?」


 「ここは警察なのよ。侵入者に気づかないはずないでしょ? あなたが侵入した時点でセキュリティで随時監視されてる。何かをしようとすれば体に穴の一つや二つ瞬時に空いてる。まぁ、約一名気づいてなかったけど」


 沙紀の言葉に大祐は項垂れた。そんな大祐を慰めるように田丸が肩を叩く。周りを見回すと自分以外のメンバーはさりげなく攻撃態勢に移行していた。


 「何でみなさん、分かったんですか?」


 「あぁ、会議中にスクリーンの端に一瞬、ポップアップが出たろう? あぁ、お前資料展開するので気が付かなかったか。来客知らせるポップアップなんだが、いくつかパターンがあって今回は不審者ありってパターンだったのと、この建物自体に結界が張ってあるからな。まぁ、能力訓練頑張れや」


 「はい」


 田丸と大祐のやり取りに課長はうんうんと優しく頷く。上司の反応を見て子供のように見守られていると自覚したのか、明日からは訓練に一層力を入れなければと大祐は決意した。


 「わざと通されたということですか。確かに油断です。こんな近距離まで他人に近づかれて気づかないなんて」


 「あなたと似たようなことをしただけよ。建物の結界にちょっと細工をしたの。さぁ、お客様。あちらの席へどうぞ」


 「お邪魔します」


 皐月に促された鹿山は会議室の空いている席へと腰を下ろした。その隣には鈴木警部が着き睨みをきかせている。沙紀は皐月が持っていた鹿山の身分書を確認するとそれを課長へと手渡した。課長はそれを見て軽く首を捻ったが、何か思い当たったのか頷いた。


 「最高裁の佐々木判事には能力者の息子さんがいるって噂があったけど、まさか本人に会えるとはな」


 「養父ですけどね。実の親に売られまして、結果的には売られてラッキーって感じです。私は今は家庭裁判所で判事をしています。まぁ、まだまだひよっこですが。改めまして、佐々木 理と申します」

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