File.18 ホーム<2>
システム内に子供達の失踪事件はなかった。唯一、記録され捜査中なのはあゆみちゃんの事件のみである。大祐は必死に検索をかけてみたが、タブレットに表示される該当事件の件数はゼロのままだ。
(そもそも能力者という条件を省いてもここ数ヵ月子供達が巻き込まれた事件・事故はなしか)
だったら、視点を変えてみるしかない。あゆみの実の兄からたどることは出来ないだろうか。妹が行方不明になっているのだから彼には連絡がいっているはず。あゆみの家族情報欄を見ると『菊池 彰久』と書かれている。そこのリンクから飛ぶと彰久の情報が出てきた。
菊池 彰久、年齢は十八歳。今年の春に高校を卒業後、就職したが現在所在不明。その為に妹の失踪の事実については話せていないとある。
(兄妹そろって行方不明? こんな偶然ってあるのか?)
「沙紀さん!」
「何? ちょっと待ってくれる?」
助手席にいた沙紀はまだ相手との通話中で、手早くやり取りを済ませると大祐に視線を向けた。
「何か分かったの?」
「電話中にすみません。あゆみちゃんの兄ですが、現在所在不明だそうです」
「所在不明? ちょっと見せて」
端末を受け取った沙紀は、彰久の情報を確認していく。行方不明になった時期は、彰久が先だ。就職をしたがあまり周囲に馴染めなっかたらしい。本人的には、進学を希望していたが経済的な理由で出来なかったと。
(能力者の子供達には、奨学金が出るはずだけど。彼がいたのは、第1ホーム。能力は発火)
「おかしい。第1ホームの子なら優先的に奨学金が出るはず。むしろ生活費の支給付きで」
「学力の問題とかですかね」
「いいえ、彼の高校時代の成績を見る限り、都内の大学なら進学可能な大学は複数ある。これだけ優秀なら将来的に国の省庁への就職のルートでしょ」
「あゆみちゃんを引き取る為に早く自立したかったとか。俺も下に弟妹がいるので同じ状況ならそうしたかもしれません」
「だったら簡単に仕事を辞めて、行方をくらますわけないと思うけど。あなたならどうする?」
「……そうですね。辞めるにしてもすぐに他の仕事を探します」
「でしょ? それにあと四年間進学して就職したほうが妹の為になるでしょう? 遠回りに感じるかもしれないけど、良識ある大人なら彼には進学を進めると思う。ただ、彼の周りにいた大人にその良識があればだけど」
能力者の子供達の保護政策は急ピッチで進められているけれど、その決まった政策が確実に実行されているかを追えているとは断言できない。まず、整えるべき事柄が多すぎる事と担当となる人物に能力者への差別主義者がいないかの調査が追いつかないのでどこの部署も人材不足だ。
「ホームに差別主義者がいるってことですか?」
「いないとは言えない。あなただって見たことあるでしょ?」
沙紀の言葉に大祐は渋い顔で頷いた。休日の広場でよくビラを巻き、演説する人々をよく見かける。普通の人々の中にそんな危険な能力を持つ人間を置いておくべきではないと彼等は主張している。そもそも能力者の大半はその普通の人々だったのだ、能力が目覚めるその日までは。
「異質なものを受けれ入れるのは時間がかかる。でも、彼等だっていつ同じ立場になるかは分からないのにね」




