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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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24/161

File.18 ホーム<1>

 教会から車を走らせること十五分。二人は、子供達が住むホームへ到着した。駐車場に車を止めて柵越しに中の様子を伺うが特に変わった様子は見られない。しかし、沙紀は目を細めて何かを見ている。その様子にもしかしたら何かあるのかもしれないと大祐は思った。


 「これは想定していた状況より複雑かも?」


 「何かありますか? 自分には全く分からないんですが」


 「幻覚……、それと記憶操作?」


 沙紀は携帯を取り出すと誰かへと電話をかけ始める。数コール程で相手が出たようで大祐に手振りで待機するように伝えると会話を始めた。


 「皐月ちゃん。今からホームまで来れる? 誰かがホームに結界を張っているみたい。それも幻覚と記憶操作系のトラップ付きで。破ってもいいんだけど、目的が分からないからあまり刺激したくない。うん、駐車場にいるから。……一旦、車に戻るわよ」


 「了解です」


 車に戻った沙紀は、捜査用のタブレット端末を取り出すとホームについての資料を確認し始めた。大祐が横から端末を覗くと見やすいように沙紀が二人の間に置いてくれる。


 (職員と子供達の能力リスト?)


 能力を持つ子供達は各能力事に住むホームを分けられる。ここ第13ホームはどちらかというと能力のレベルは低い子供達が住む施設である。ちゃんとコントロールさえ出来れば一般の生活が可能な子達の集まりだ。


 「うーん、あそこまでの結界を張れる子や職員はいなさそうね」


 「はい。行方不明のあゆみちゃんは、手を触れると若干の過去視が出来る程度ですね。本来なら能力がコントロール出来た時点で家族との同居が可能でしたが、震災で両親が亡くなっていて唯一の肉親であるお兄さんも能力者である為にホームでの生活が継続しているそうです」


 「他に親戚縁者はいなかったの?」


 「はい、残念ながら」


 あゆみちゃんのように能力以外の理由で家族との同居が不可能な場合もある。例えば、引き取り手である親類が東京以外に住んでいるとまず許可がおりない。そもそも東京で特異能力の事を知ってもそれを都外で口外は出来ないようにされている。その為の巨大な結界が東京都には張られているらしい。一歩でも都内から出ると記憶から消えるそうだ。


 「記憶操作ってことは、都に張ってあるものと同種ですか?」


 「まぁ、規模やレベルが全然違うけど目的は一緒ね。ある事柄に対しての記憶の操作が行われる点では。ただ、この結界が何の為のものかが全く分からないけど」


 「ここのホームの定期監査でも虐待の報告は上がってないです、表と裏の両方でも」


 「でしょうね。職員だって能力者が大半だし、馬鹿な事をする人間はいないはず。ということはこれを張っている人間は部外者の可能性が高いか」


 そもそも通常の能力者の失踪事案と一緒にしてはいけないのかもしれないと沙紀は思った。これが誘拐事件なら時間がたちすぎている。正直、時間がたてばたつほど人の記憶は曖昧になってくるし、物証を捜すことすら難しくなる。


 (まず、あゆみちゃんの事案に関して、私達に報告が上がってきていないのがおかしい。対象が未成年、それも小学生なら家出よりも誘拐の可能性が高いはずなのに)


 「…………情報がどこかで潰されている? ねぇ、他のホームでは同様の失踪事件は起きていないのかしら?」


 「他にも失踪した子供達がいると?」


 「いないならいいのよ。ただ、嫌な可能性は潰しておきたい」


 「調べます」


 大祐は、端末を手元に寄せるとシステムに入り調べ始めた。内部情報の精査は大祐に任せることにした沙紀はもう一度電話をかけ始めた。内部が頼りにならないなら外部に頼るしかない。


 「もしもし、ちょっと調べてほしいことがあるの」



 


 

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