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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第一章 出会いの春

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File.17 記憶喪失<1>

 沙紀は先ほどの子供達の様子から彼等と鹿山の関係性について考えた。自分達にいなくなった友達を探して欲しいと訴えかけていたのに鹿山が来た途端に言葉を濁した。前任者の牧師と代わったばかりで信用されていないにしても、訴えを止める程の警戒をするだろうか。


 (彼等が牧師をあそこまで警戒する原因。もしかして、彼も能力者なのかしら。力の行使は感じ取れなかったけど、気配をあそこまで消せる人間がまともとも思えないのよね)


 「沙紀さん、事務所に一度戻りますか?」


 「いいえ、その前にいなくなったあゆみちゃんが住んでいたホームに行ってみましょう」


 「了解です」


 沙紀は車を走らせる大祐の様子をチラリと横目で確認する。一緒に仕事をするようになって課長が何故自分と組ませたのか分かる気がした。絶妙に空気を読むのが上手い彼のおかげで沙紀は今までのような気まずい思いがしない。元々、他人とのコミュニケーションを取るのが苦手な自分にとって長時間他人と一緒に過ごすのはストレスだった。でも、彼は自分が沈黙を望む時は自然と黙ってくれる。


 (これは長続きするかも?)


 一方、沙紀からの視線を感じ取っている大祐は、内心ダラダラと汗をかいていた。自分を見る沙紀の視線に悪い感じはしない。むしろ何か興味深げに自分を観察しているような感じがする。そして、沙紀は気がすんだのか無言で視線を車外へと移していった。


 (一体、何なんだ。何が言いたいんだ)


 大祐の問いに答えをくれる存在は、残念ながらこの車内にはいなかった。ちょうど信号で車が止まったので沙紀へ視線を向けると相変わらず何か考えこんでいる。若干、眉間に皺が寄っているのでもしかしたら何か考えに詰まっているのかもしれない。


 「ねぇ、あなたは彼等と同じ年頃のころってどうだった?」


 「うーん、学校に行って友達と遊んでって感じですかね。あそこまで警戒心をむき出しにして生活はしてませんでしたね。まぁ、自分は能力者とされていなかったので彼等とは前提条件が違いますけど」


 「そうよね。でも能力者であることが分かっていて彼等よりも条件最悪だった私でもあそこまでひどくなかった。むしろある程度法整備をされて能力者の存在が当たり前になってきている今の子供達があそこまで警戒心を抱く状況って何?」


 確かに今でも差別的な考えは残っているがきちんと教育と保護の方法が確立されている今、子供達への世間の風当たりは昔ほどは強くはない。後天的に能力が出現した大人の中に社会的地位を持つ人間もいたので子供達への保護問題については早急に手を打たれたほうだと言える。例え、所々穴のある制度だとしても。その穴は沙紀達やもっと未来の世代が埋めていくしかない。


 「条件最悪?」


 沙紀から出た言葉に思わず反応を返してしまう。すると沙紀からの視線を強く感じ取り、田丸に注意されていたことを思い出す。


 (何で俺はすぐに何でも反応を返してしまうんだ!)


 「ぷっ、変な顔……」


 「いや、これはですね……」


 「信号変ったわよ! あなたが何を気にしているのかは何となく分かるけど、私は答えたくないことには答えないから気にする必要はない。あなたが気にして態度とか変えるほうが不愉快だから今のままでいいわ」


 「はっ、はい!」


 「あと他の奴らから変に話が伝わる前に言っておくと条件最悪っていうのは、一言で言うと記憶喪失。八歳以前の記憶が全くない状態で私は保護されたの。その後、課長に引き取られて養子になった。他の子と違うのは能力自体は自然にコントロール出来ていたから、そういう面では苦労がなくて良かったなってことだけ」


 大祐の想像を上回る条件に言葉を返すことが出来なかった。八歳の子供が記憶喪失になるという状況とそれを引き起こした最悪な状況の想像つかないからだ。


 「だから、あの年代の子供達の当たり前がよく分からない。不思議なの。あの牧師の何をそんなに警戒しているのか。同じ能力者なら警戒より信頼が勝るはずだから」


 そう言って沙紀は腕輪を軽く撫でた。



 

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