File.14 緊急事案<2>
もみ消して終わり。その言葉に大祐は自分達が置かれている立場が不安定で上の人間にとって都合の良い集まりなのだということを意識する。
(能力者って政府にとっては捨て駒ってことなんだな)
「その代わり私達の起こした出来事は全力で政府が始末をつけてくれるってことよ」
「沙紀さん!」
「そうよ、大祐君。私達は自分の命を優先してどんな手段を使用しても事件を終わらせなさいってことよ」
「藤田君。言葉を選んで。一応、普段の発言や行動は上からの査定対象なんだから」
「まぁまぁ、課長。上が一番よく分かっているからこれくらいじゃ査定に引っかからねーよ」
思考がブラックよりに落ちかけていた大祐を励ますように沙紀達が声をかけてくれた。発言内容についてはちょっと問題があるが。
「沙紀さん、藤田さん、お疲れ様です。取り調べどうでしたか?」
「まぁ、今回捕まえたのは下っ端であまり詳しい情報はもってなかったわね。ただ、能力者が関わっているのは確定」
「そうねぇ、そもそも彼等はあくまで雇われなのよ」
「組織の一員を逮捕してそこからの情報でしたよね?」
「うーん、組織が更に組織を雇ったのが正解ね。そもそも前回の実行組織もお金で雇われたにすぎないらしいし。爆破の目的も聞かされていないらしいわ」
「前回の失敗を受けて慌てて能力者の犯罪組織を雇ったら、潜入捜査をしていた警官に捕まったと。課長、何か情報は出ていないんですか?」
「それを含めて会議をしようか。イベントが今週末だから調査にあまり時間がないし、当日は私達が潜入捜査をするしかないからね。じゃあ、これが前回の爆破事件の詳細な報告書だよ」
課長から送られた資料を各々目を通す。前回の事件に仕掛けられていた爆発物は三ヶ所。仕掛けられた爆薬自体は実際爆発したとしても大規模にならない規模だった。仕掛けられた場所もバラバラで人があまり集まらない場所が多かった。
「これって、目的は何なんですかね。被害を大きくしたいならエンジン室とかに仕掛けるのが普通だと思うのですが」
「取り調べをした前回の実行グループは、依頼通りの量を取り付けたと。それに爆破自体は失敗したけれど報酬は振り込まれたらしいわ」
「目的は爆破ではなくイベントを失敗させることだったとか。この船ってイベントを終えたらそのまま世界一周のクルーズに出る予定だったらしいぜ。もしかして依頼主は船を出港させたくないのかもな」
「威力を抑えた爆破ねぇ。…………もしかして最近起きている爆発火災事件はこれの仕込みなのかも」
「どういうことですか? 沙紀さんはこの件とあの爆発火災が関係あると思うんですか?」
「最近起きている爆発火災事件は今回依頼を受けた能力者の犯罪組織が調整訓練として行っているとしたら納得が出来る。極々少量の火薬を仕掛けて連続で爆発させて火災を抑える。最小限の被害で依頼主の目的を達成させること為の訓練。正直、被害の規模を考えないならもっと簡単よ」
沙紀さんはそう言うとパチンと指を鳴らす。するとぼっと音をたてて青白い炎が現れた。宙を浮遊する青白い炎をジッと大祐が見つめていると同じようにパチンと音が鳴り一瞬で炎が消えた。
「沙紀君!! 室内で炎を出さないの!」
「ごめんなさい。つまりこんな炎をいくつかエンジンルームで出せば簡単に爆発は起こせるのよね。取り調べをした下っ端能力者でも同じことが可能。ただ、上から被害を極限に抑えることが絶対条件としてかされていたと言っていたので、事件の為の事前訓練だったと考えられる」




