File.14 緊急事案<1>
報告書を完成させた大祐と田丸は連れ立って地下の取調室へ向かった。捜査中の事件でも非能力者は通常の警察署で取り調べを行うが、能力者に関しては地下で行うのが決まりとなっている。能力者が力を使用出来ないように専用の拘束具といざという時に外に被害が出ない作りになっているからだ。これも特異研の研究成果らしい。
「一応、ある程度の規模の爆発物が仕込まれてても耐えきれる作りらしいぜ。まぁ、拘束具と姐さんの能力でほとんど無力化出来るから問題ないけどな」
「そう言えば、藤田さんの能力ってどういった能力なんですか?」
「まぁ、暗示全般かな。基本的に物理的に攻撃を加える能力ではないから、後方支援がメインだな」
「へー、すごいですね」
大祐の反応に田丸は苦笑する。普通、暗示全般と聞いてすごいですねという反応はなかなかない。自分がいつの間にか暗示がかけられるのではないかと距離を取るのが普通だ。
(純粋なのか、何も考えないのか。まぁ、こいつは無自覚に能力を使って生きているからな)
「おや、二人とも報告書は終わったのかい?」
「課長、お疲れ様です。もしかして取り調べはもう終わったんですか?」
「うん、終わったよ。藤田君達も直ぐに来る。今回の件ですぐに動かなきゃいけないからね。さぁ、直ぐに会議を始めるから二人とも上に戻って」
「姐さんとさっちゃんは?」
「うん…………、片付けが終わったら来るから。さぁ、二人とも行くよ」
課長のいつもとは違う強引な様子に何となく理由を察した二人は回れ右をして上の会議室へと戻る。そして、課長の後方から微かに香る焦げ臭い匂いを気のせいだと無視することにした。
「今回の概要だけパッと説明しておくね。二人は先週起こった爆破未遂事件は覚えているかい?」
「確かクルーズ会社の新造船のお披露目イベントを狙った事件ですよね。事前に爆破予告が入っていて、一課と公安が爆発物を発見して未遂に終わった」
「うん、その後の捜査で今回の件に関わった組織の一員を逮捕したんだけど、どうやら次の事件を計画しているみたいでね。逮捕した人物からの供述で実行犯の一人を逮捕に繋げたけどどうやら能力者だったみたいで、我々に捜査命令が下ったわけだ」
(爆破予告か。最近、多いのかな)
「今回、狙われるのはどこなんですか?」
「前回失敗したクルーズ船の再お披露目イベントだよ」
「へー、変わった奴らだな。わざわざ前回と同じイベント狙うなんて。それともよっぽど恨みでも買っているのか、その会社」
「上もそう考えて捜査したらしいけど、特に怪しいところはなかったよ」
「狙うなら他にもイベントとかありますよね? 確か今週って政府系のイベントもけっこうあったはず」
「そうなんだ。一課とか公安はそっちの警護に人手が割かれるらしいから、基本この件は私達でどうにかしろとのことだ」
「能力者の事件は能力者でどうにかしろってことだろ?」
「何か面倒だからお前らでどうにかしろって言われているみたいですね」
「まぁ、そもそも能力者を裁く法律もないしな。最悪、犯人の命を取っても止めろってことだよ。逮捕する側の俺らもイリーガルな組織だし、どっちが死んでも奴らはもみ消して終わりだよ」
「田丸君!」
「さーせん、課長。でも、こいつだって現実は知っておくべきですよ。自分を守る為にもね」




