File.12 特異研<2>
特異能力研究所。その建物に着き、建物を見上げると大祐の口からは思わず感嘆の溜息が出る。
(旧・国会議事堂。まさか、こんな所がなぁ。世も末だ)
大祐は、ボーっと入口で立ち続けていた。するとそれを見た沙紀は、大祐の腰を思い切りどつき、先へ行くように促す。
「何、ボーっとしているのよ、行くわよ!」
「はっ、はい」
入口を抜けると正面に受付があり事務員らしき女性が座っていた。受付カウンターまで行くと沙紀は、警察手帳を取り出しその女性に提示する。それを見た大祐も慌てて同じように提示した。
「特異課の九重と大熊です。ライブラリーの使用申請をしているのですが」
「はい、申請の確認が取れました。どうぞ」
沙紀は女性に軽く会釈すると右手奥の階段へと向かう。大祐はその後を追いながらキョロキョロと周りを見る。
(確か地震で半壊したって聞いたけど)
そんな大祐の疑問に沙紀が答えてくれた。
「この建物は、補強と建て増しを行ったの。外観は以前と変わらないけれど、中身はだいぶ違うわ。設備やセキュリティの面でも段違いよ」
「へー。でも、まさかこんな歴史的建物に入れるなんて思いませんでしたよ、俺」
「そうね、でもこれからはあなたにとって馴染みの深い建物になるわよ。私達の健康診断もここであるのよ」
「ここで!?」
「さぁ、着いたわよ」
階段を二階まで上がり、右方向に進んだ一番奥の部屋が目的のライブラリーだった。
「この入口で前に渡したカードを通してちょうだい。じゃないと、警備装置に引っかかるから」
「はい」
大祐は、返事をすると沙紀と同じようにカードを通し、ドアを開けた。今まで、特異課関係の施設のドアを開けるとちょっと普通とは違う場所につながっていたりしたので内心、びくついていた。しかし、今回は予想がはずれたようだ。広い、室内の奥には書棚があり、中央にはいくつかのブースに区切られた席があり、左手には個別に仕切られたパソコンブースがある。沙紀は、左手のパソコンブースの一つに向かい、椅子に座り起動させた。大祐は、その作業を沙紀の後ろから眺めることにした。
「このパソコンのパスワードはカードに書いてある各自のIDナンバーを入れて」
「はい」
沙紀は、情報検索システムを立ち上げると都内で起こった爆発事件を検索にかける。今回の事件を含めてここ数ヶ月で何件か同様の事件が起きているようだった。特異課の調査結果からほとんどが通常の爆発事故として処理をされている。
「事件性はなかったんですね」
「どうかしらね。パッと見は事故だと思うけど、私や田丸達が見たら事件と判断を下したかもしれないわね。ここ最近は事件が多くて私達が直接調査に出ることがなかったのよ」
画面をスクロールさせながら溜息をつく沙紀の姿に特異課でもレベルの差や意識の差があるのかもしれない。
「とりあえず、全部のデータをダウンロードしましょう。ダウンロードしてる間にさっきのあなたの質問に答えるわ」
「あの子供の行方不明事件が自分達の管轄になる理由ですね」
「そう。まぁ、座ってちょうだい」
「はい」
大祐は隣のブースの椅子を引き寄せ、座った。すると沙紀は先ほどの探し人のビラを取り出し広げて、ある一点を指差した。
「連絡先ですか。都立児童養護施設・第13ホーム?」
「そう、都が管理している児童養護施設。これはある子供達の保護と教育の為に都と国が運営しているホームよ。普通の養護施設は民間運営が多いけど、この施設は東京のみの特例で作られている施設なの」
「もしかして、特異能力を持つ子供達の為の施設ですか」
「そうよ。特異能力の存在は他の地域では極一部の人間しか知らない。人は異質なものを無意識に拒絶しやすい傾向が多い。それ自体は咎めることは出来ないと思っている。その結果、子供を持て余す親が出てきてしまうのは当然の結果よね。国としてもそれは見過ごせないと判断して、某一族の働きかけもあり子供達が力のコントロールを学べる場として作られたの」
たまたま能力を持って生まれてしまった子供達は、何も悪くない。むしろ保護の対象である。某一族が裏で動いた結果なのだとしてもこれは良いことだと大祐は思った。
「ホームに関してはここ数年で整備されて、子供達の生活環境に問題はないと報告されているわ。それに能力をコントロール出来た子供達は、定期的に親と交流もしていて家に戻る子達もいる」
「沙紀さんもホームにいたことがあるんですか?」
「…………私がいたのはホームの前に試験的に運営されていた学園よ。まぁ、ちょっと問題があってね。その結果と改善を行ったのが今のホームよ」
(学園とホーム。何が違うのだろうか。学園は、名前からして学校なのか……)
「さぁ、データも手に入れたし帰るわよ」
「はい。あれ、行方不明事件のデータは?」
「一緒に落としている。ただ、普通の家出人捜索の枠に入っているせいで詳細なデータが頻繁に上がっているわけではないみたい。あとで鈴木警部に相談したほうが早いわ」
「了解しました」




