File.20 夢
――――夢を見ていた。懐かしいあの人達の夢を………………。
その夢の中で、幼い自分は父と一緒に修行をしていた。物心がつくと同時に始まった跡継ぎとしての厳しい鍛錬。毎日、毎日、体を傷だらけにしながら歯を食いしばって続けていた。
(懐かしい。 毎日、毎日あの道場で力の使い方を学んでいた)
小さい沙紀は道場の床に正座をし、目の前にある邪気を浄化すべく小さな手のひらに力を集中していた。
そして火精が自分の周囲を取り囲み、自分に力を貸してくれるのを感じながら、生まれた炎を邪気にかざす。炎は、邪気を包み込み浄化を始める。その様子を見て小さい沙紀は、安堵からか集中をとぎらせてしまった。
その瞬間、炎の質が浄化から破壊へと変化し、一瞬で邪気を燃やし尽くす。一度、変化してしまった炎は元には戻らない。沙紀がしまったと思った瞬間、父に頬を叩かれた。吹き飛ばされる程ではなかったが、叩かれた頬が強い痛みと熱を持ち始める。泣いてはいけない、泣くことは許されないと思い、必死に歯を食いしばって耐えた。
「何度言えば分る。集中を怠るな!! お前は、炎軍の次の将となる立場。それなのにこれしきの邪気を浄化できないでどうする!!」
「…………ご、ごめんなさい。父様」
「夕飯まで瞑想をしていなさい」
そう言うと父親は、沙紀を道場に残し去っていった。道場に残された沙紀は一人、声を押し殺して泣いていた。
(あの頃は、力が不安定でどうしてもうまくいかなかったのよね)
それから数分後、道場の扉が開き年若い女性が入ってきた。
「大丈夫? 華音」
沙紀は、振り返りその人の姿を確認すると、駆けより飛びついた。
「姉様!!」
姉はそのまま何も言わず、沙紀を抱きしめ、優しく頭を撫で続けてくれた。沙紀の涙が止まるまで。
(有里姉様)
「どうしてもうまく出来ないの」
「華音は、浄化の時何を思っているの?」
「え? ………………うまく浄化できますようにかな」
「姉様はね、どうかこの人を救えますように。この人を押しつぶした何かが軽くなりますようにって願っているわ」
「救い?」
「そう。浄化にはそういう人を大切に思う気持ちも必要なの。特に一族の者は、その役目の為に押しつぶされるリスクが高いから。そんな人達を救いたいって思う気持ちがあると自然と集中できるし、コントロールもできるわ」
(ああ、だからか。私が力をコントロールできないのは)
夢の中の姉の言葉を聞いた瞬間、自分の心に暗い、黒い感情が生まれだす。
そこで夢から覚めた。目を開けると自分の頬が涙で濡れていた。その頬を拭いながら、思う。もう、自分に浄化はできないと。幼い自分はあの時、絶望したのだから、両親を殺した一族に。その時自分の中にある一族に対する慈しみの心は無くなったのだから。
「これは、困ったわ。私の力のコントロールの根源がそれなら本当に無理かもしれない」




