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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File.8 事情聴取

 「お待たせしました。そんなに時間は取らせませんので、ご安心を」


 会議室へ戻ると少年と少女は「よろしくお願いします」と姿勢を正して沙紀へと会釈をする。青年の方は、ただじっと沙紀を見つめるのみだった。


 「まず、氏名と年齢を」


 「藤堂 疾風(とうどう はやて)、年齢は十五歳です」


 「藤堂 雪(とうどう ゆき)、同じく年齢は十五歳です」


 黒髪の少年と少女は男女差と体格差はあるが瓜二つだった。おそらくは双子だろう。二人ともどちらかというと童顔で目がくりっとしており愛らしい顔立ちだ。その隣には茶色の長髪を紐で後ろにくくった人外の青年がいた。


 「(かおる)だ。年齢は知らん。数えるのは随分と前にやめた」


 薫のふてぶてしい態度と人外である事を隠す気もない様子に沙紀は、溜息をついた。大祐も調書に打ち込みながら果たしてそのまま書いていいものか迷う。沙紀は片手を振ってそのまま書けと大祐に合図を出す。


 「何故あの場に?」


 「最初はコンビニに逃げたんですけど、外の公園にこの間知り合った子がいて逃げようとしないから雪を置いて外へ」


 「それで?」


 「あの行き止まりまで追ったんですけど、角を曲がったら居なくて」


 「あなたは?」


 沙紀は、今度は雪へと質問をする。


 「私は、兄に知らない場所に置いていかれてしまって不安だったので後を追いました」


 「あなたは?」


 「俺は呼ばれたからな」


 「呼ばれた?」


 「ああ、主にな」


 薫の目線を追っていくと疾風を見ているようなので、主とは彼のことかと大祐は判断し調書へ書き込む。


 「つまり、今回のことは偶然起きた事ことだと」


 「そうだ」


 「じゃあ、私達が見たあなたの力は一体何?」


 薫は、お前に答える必要はないとばかりに黙り込む。


 「ここ東京では、近年特異能力者の数が増大していて我々特異課は、政府によって治安維持のため設立された機関です。ですから、特異能力者であるあなたを簡単に解放するわけにはいきません」


 「…………あの。ここに連絡してもらえませんか」


 そう言って、疾風は携帯を取り出し、番号を出す。その番号を確認して沙紀はやっぱりという表情を浮かべる。


 「あぁ、時枝さんね。やっぱりあなた達はパトロールで見かけた子達か」


 沙紀の言葉を聞いて大祐は、以前パトロール時に発生した事件の際に遠目に見かけた少年少女の姿を思い出す。


 (なるほど、あの時見かけた子達か)


 「タロ、時枝さんに連絡を入れてちょうだい。お宅の子供達を迎えに来てくださいって」


 子供達という言葉に腹が立ったのか疾風は、ほんの少しむくれた表情をする。逆に雪は穏やかな笑みを浮かべて大祐に対して「よろしくお願いします」と言った。ただ、大祐としては年相応な反応を見せる彼より彼女の方が怖かった。


 (正直、この年代なら彼の反応の方が正常だ。逆に彼女みたいに自分の感情をあんなにきれいに隠せてしまうほうが異常だ)


 「分かりました。連絡してきます。沙紀さん、お手柔らかにお願いしますよ」


 「何それ。彼等は犯人じゃないもの何もしないわよ。それより、早く行ってきなさい」


 「はい」


 大祐が電話をかけるために席を外すとその場の空気は一気に緊張感が漂い始める。沙紀はそんな空気をものともせずに調書を確認する。


 「お前も俺達からすれば十分子供だがな」


 「そうね、あなたから見たらそうでしょうね。ただ、私は刑事として覚悟を持って職についている。そこのお子様とは違う」


 「お子様って、何だよ! 俺達はあんたらと違って使命を持って育ってきて仕事をしている」


 沙紀の言葉に腹を立てた疾風が声を荒げて食って掛かってきた。そんな疾風を見て沙紀は大きなため息をつく。


 「使命ね。じゃあ聞くけど何故あなたは犯人の命を取ることをためらったの?」


 「は?」


 「あなたは、使命を持っていると言った。他の事件であなた達の一族の人間と会うこともあるから分かる。彼等はいざという時に人の命を取る覚悟がある。でも、あなたにはそれがない。あなたがためらったせいで何が起こったか分かる?」


 沙紀の言葉に疾風は、答えることが出来ないようだ。その様子を見て当然だと沙紀は思った。彼は命を取ったつもりだったのだから。


 (つもりじゃ駄目なのよ。少しでもためらったらそこで終わり)


 「兄が倒した犯人は生きていたということですか?」


 代わりに雪が沙紀へ質問を返す。


 「えぇ、そのせいで二次災害が起きた。今のところ運良く死者は出ていない。ただ、現場の状況によっては今後多数の一般人が命を落とすでしょうね」


 「それは申し訳ございません。私達の手落ちです」


 雪は疾風の代わりに深く頭を下げて謝罪をする。その横では疾風が顔色を無くして何か呟いている。


 「確かにそれは主人の手落ちだ。だから、そんなに腹を立てていたのか。ただ言い訳と思われても仕方がないが疾風は若く、経験もない。お嬢さんだって、同じだろう?」


 「私が彼と同じ? 私なら犯人に説得が効かない時点であの場合射殺か燃やすわ。私達の仕事はこの東京に住む人々を特異能力者から守ることと特異能力者を犯罪者にさせないことなの。東京にはね、望まない能力がある日突然目覚めてしまう人達がいる。その結果、今まで過ごした当たり前の日常を失う。あなた達みたいに小さい頃から守られて大切に育てられるわけじゃない。日常を失ってそれでも生きる為にもがき苦しむの。その過程で犯罪に手を染めるしか生き残ることが出来なかった人間が相手なの。油断したら最終的に自分の命を差し出すことになる」


 沙紀の言葉に疾風と雪は何も言い返すことが出来ない。


 「あなた達の戦う相手が彼等とは別物なのは分かる。ただ、その何かが宿りやすいのはそういったバックグラウンドを持った能力者達なのでしょう? だから、東京で能力を使用してあなた達の使命を果たそうとするなら何よりも自分の命を優先しなさい。じゃないと遅かれ早かれあなた死ぬわよ」


 沙紀からの警告とも取れる忠告に疾風は頷くことしか出来なかった。

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