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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File.4 捜査命令

 現場の後処理を任せた沙紀達は、事務所へと戻った。装備を片付けて身支度を整えるとそのまま会議室へと向かう。捜査用のタブレット端末には、課長から今回の事件についての概要や個々の事件に関する捜査状況などの資料が送られてきていた。


 「この5人が被害者」


 会議室のスクリーンに映し出されたのは、中高年の男性が5人。そのうちの一人が今朝、倒れた法務省の官僚だ。それぞれ職業はバラバラだが国家の中枢で働く人間達だ。


 「被害者5人に共通するのは、朝、家族が起こしに行くと意識不明になっていたということ。別に持病もなくいたって健康。ただ、目が覚めない」


 沙紀の言葉に会議室に集まった面々は首を傾げる。事件前後の行動も特に不審な点もなく怪しい人物との接点もないとある。自分達の出番ではと思ったが、どちらかというと病院案件なのではないだろうか。


 「さっちゃん。何か薬物を使用されたって可能性はないのかしら?」


 「病院での検査の結果、薬物反応は無し」


 「それじゃあ、やっぱ病気じゃないのか?」


 「新種のウイルスとかですかね」


 はっきり言ってお手あげ状態だった。


 「今の段階では何とも言えない。でも、一応捜査命令が出たのよ。政府から」


 「あー、そういうこと。被害者がお偉方ばかりだものね」


 「あのー、ところで課長は?」


 「課長は、政府の呼び出しを受けて京都に行ってる。とりあえず、被害者の周辺を洗ってみて。何も出てこないとは思うけど」


 「沙紀さんは、何か気になることでもあるんですか?」


 大祐が尋ねると沙紀は一言もらす。


 「もっと何か違うことが動いている気がする」


 沙紀はそう言うと黙ってしまった。


 (薬物の検出もなくただ眠っているだけ。その状況に自分達の両親が亡くなった時のことが少し重なる。ただ、彼等はきちんと目覚めているから別件のはず)


 「まぁ、とりあえず調査をしてみましょう。もしかしたら何か出てくるかもしれないわ」


 皐月の言葉に田丸と大祐は頷く。そして各自捜査に出ようとした瞬間だった。会議室のスピーカーから緊急サイレンが鳴り響く。皐月は、急いでボタンを押してサイレンを止めると通信機に繋がったヘッドセットマイクを装着して警察本部とのやり取りを始める。


 「新宿区で能力者が暴れているとの通報が入ったわ。さっちゃんと大祐君で向かってくれる? 私と田丸は、後詰めで待機しておくから」


 「了解。タロ、行くわよ」


 「はい!」


 沙紀と大祐は急いで地下の駐車スペースへと急ぎ、車に乗り込むと現場へと車を走らせた。最短ルートを飛ばして現場へと到着すると周辺は緊張に包まれていた。車を飛び降りると沙紀は、近くにいた新宿署の警官を呼び止める。


 「特異課の九重と大熊です。状況は?」


 「特異能力者と思われる男が、力を使い辺りを破壊しております。この区画の閉鎖は終了しており、民間人の避難は完了しております。幸いこの地区は、再開発地区の為周辺のビルなど居住者はおりません」


 「そう。その男の身元は? 能力者名簿に該当は?」


 「あります。しかし…………」


 急に言葉を濁した警官を見上げ沙紀は、目で続きを促す。続きを促された警官は、眉間に皺を寄せ心底迷惑そうな表情を浮かべながら吐き捨てるように言った。


 「例の特例名簿に該当している為、我々に手を出す権限がありません」


 警官の言葉に沙紀は、眉を思い切りしかめて溜息をつく。彼等もどうしようもない状況で被害を最小限に抑える為に必死に動いているのだ。現場の空気が緊張しているのも仕方ないだろう。


 「彼等の本部に連絡はしたの?」


 「はい。しかし、あちらからの人員の派遣が一向に無い為、特異課へ要請ということになりました」


 「やっかいごとはすべて丸投げかよ」


 ボソリと呟く沙紀を見て、大祐は沙紀の機嫌が地の底にまで落ちたことを悟った。


 「それで、その能力者は今どこに?」


 「現在は、この2ブロック先の行き止まりに向かっています」


 「仕方ない。私が犯人の足を止めます。貴方達は10メートル離れてついて来てください。そして、合図が上がったら犯人確保に動くように。合図が上がるまでは絶対に近づかないでください」


 「了解です」


 警官は、他の警官に命令を告げるために足早に去って行った。


 「また例の案件ですか。この頃、多いですね」


 「本当に。これ以上こちらに迷惑をかけるようなら本当に家宅捜索しようかしら」


 「いくら何でも罪状がなければ無理なのでは?」


 大祐の言葉に沙紀は背筋も凍る絶対零度の笑みを浮かべる。


 「そんなもの適当にでっちあげればいいのよ。捜索すればきっと、色々楽しい物が出てくるでしょうね。ふふふふ」


 (怖い、怖いです!沙紀さん)


 大祐は、ひきつった笑いを浮かべながら適当に相槌を打った。


 (これは本気だ、沙紀さんなら本気でやる。それにしてもやっかいだよな、あの特例名簿は)




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