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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File.1 捜査ファイルNo.0 資産家夫婦殺人事件

 深夜を回り、夜勤担当者達がパトロールへ出払った時間。日勤の仕事を終えた沙紀は、特異研へ繋がる端末へアクセスを行っていた。養父である課長からもらった特殊なパスで普段なら閲覧をすることが出来ないページへととぶ。そこにはこの特異課の前身である部署の捜査記録が残っていた。


 「このファイルね。あぁ、ファイルを開くにもパスワードがいるのか。パパさんから貰ったキーを入れて」


 そこに並んでいたのは、特異能力自体が社会的に認知されていなかった時代のいくつもの事件。恐らく大半の事件は、あの一族が関わっていたはず。その中でも特に厳重に管理がされているのがこの資産家夫婦殺人事件。報告書は、大半の部分が黒塗りで削られている。聴取を受けた人間達の名前や連絡先はほとんどが残っていない。


 「まぁ、そりゃそうか。ほとんどが社会的に地位のある人間達ばかりだものね。そもそも被害者達の個人情報すら消された状態だし」


 都心から少し離れた場所にある屋敷で起こった殺人事件。その被害者はその屋敷の主である中年男性と夫人である女性。多くの使用人達は眠らされており、屋敷の主から通報を受けた警察が駆け付けるまで意識を失っていた。使用人達の体内からは薬物が検出されており、食事か飲料水に混入されていた可能性が高い。


 「食事か飲料水からって、それなら亡くなった被害者達からも検出されてないとおかしいけど。亡くなった父は、パパさんへ通報しているってことは眠ってなかった。一緒に殺されていた母も。私だって目を覚ましている。この屋敷の炊事場は一ヶ所で屋敷にいる全ての人間の食事を用意してた。私達家族だけ、眠らせなかったってこと? 随分と手の込んだことするのね」


 当主夫妻の死因は、刃物に切られたことによる失血死。当時屋敷には、夫妻と子供四人がいた模様。子供達は全員行方不明。警察が継続捜査を行っている。


 「あの夜、一緒にいたはずの姉の姿はなかった。あの頃の姉は、見習いとして一族の仕事につき始めていたから、急に出かけることになったのかと幼い私は考えた」


 脳裏に浮かぶ記憶をたどりながら沙紀は必死に思い出す。けれどもそれ以上の情報は出てこない。


 「そう、弟達の姿もなかった。確か赤ん坊でまだ夜泣きがひどいから別室で世話をされていたはず。だけど、そもそも弟達と接触した記憶がない? 姉や両親の顔は思い出せるけど彼等の記憶がないのは、何故?」


 あれ以来、幼い頃の家族の思い出が夢に現れる。顔は分かるけど音は全く聞こえない。サイレント映画を見ているようだった。


 「ファイルには被害者の名前くらい残っていてもおかしくないから、思い出すきっかけになればいいと思ったけど」


 パパさんに聞けば教えてくれるだろうけど何となく聞く気になれなかった。本当の自分の名前を聞いたけど、そこから思い出せるものは何もなくただの文字として認識するだけだったのだ。多分、家族の名前を聞いたところで同じだろうなと思ってしまう。自分の中には確かにあの夜に絶望を感じた幼い頃の少女がいるけれど、それを自分のこととして捉えることを九重沙紀が拒否しているのかもしれない。


 「記憶喪失って大変なのね」


 沙紀が記憶喪失に対する一般的な認識に初めてたどり着いた瞬間だった。その時、手元の携帯端末から音楽が流れた。


 「もしもし、皐月ちゃん? うん、うん、今から合流する。あんまり、潰しちゃだめだよ」


 端末から聞こえる賑やかな声と若干の悲鳴に沙紀は思わず吹き出してしまう。そろそろ、誰かが止めないと明日には数人死人が出るかもしれないと思い、ページからログアウトして端末の電源を落とす。そして仲間の場所に向かう為に沙紀は、事務所を後にした。


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