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特異能力犯罪課捜査ファイル  作者: 楓
第二章 嵐は突然に

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File.28 いつもの日常

 あれから一週間がたった。沙紀が入院している間、大きな事件は起きていない。大祐達は事件の事後処理やら他の事件現場に駆り出されたりと慌ただしい日々を送っている。パトロールの任務に関しては、皐月が再教育した非常勤の職員達で上手く回している。どう再教育されたかは、大祐達は知らない。


 「まぁ、知らないということも大事だな」


 地下の施設から出てくる面々の顔つきやら態度を見る限り以前より礼儀正しくなったと感じるくらいだ。ただ、その目には若干の恐怖心があるようだが、深く追求するべきではないだろう。駐車場の車に乗り込みながら、パトロールに出発する彼等を大祐は見送った。


 「さて、俺も出発するか」


 午後から非番の大祐は沙紀に頼まれたあるものと課長から預かった封筒を持って特異研へと車を走らせた。車の無線からいくつかの事件発生を告げるものもあったが、自分達が関わる種類の事件はないようだ。本日もこのまま何事もなければいいなと大祐は思いながら街を走る。そして特異研に到着して車を止めると入館手続きをして病室へと向かった。


  コンコン。病室の扉をノックし声をかける。


 「沙紀さん、大熊です」


 「どうぞ」


 返事を確認して大祐は病室へと入る。病室では暇を持て余した沙紀がベッドの上で読書をしていた。


 「調子はどうですか?」


 「もうばっちり。今週末には退院よ。で、頼んでものは?」


 沙紀は、ものすごく期待を込めた目を大祐に向ける。待ちきれないとばかりに。


 「はい、買ってきました。『花』のプリンです」


 そう言って大祐は、手にしていたケーキの箱を手渡す。


 「やったー、プリン、プリン」


 沙紀は、箱を開けて中身を確認すると嬉しそうな声をあげる。その姿は、同年代の少女達と変わらない姿で微笑ましい。課長曰く、「沙紀君は三度の食事よりプリンが大好きなんだよ」だそうである。


 「それと、これ。課長から預かって来ました」


 大祐は、ベッドの横の椅子に座ると沙紀に持ってきた封筒を手渡す。


 「課長から?」


 沙紀はプリンを横にどけると封筒を開き、中から数枚の書類を取り出す。ざっと、書類に目を通すと、沙紀は再びプリンに手を伸ばした。


 「何だったんですか?」


 「杉浦の裁判結果」


 「えっ!? 早くないですか? だってあれからまだ一週間ですよ」


 「タロ。あの事件は能力者の起こした事件なのよ。そもそも結果は二つしかないの。分かるでしょ?」


 大祐は自分が関わった初めての事件である船での事件を思い出す。特異能力者に残された道は二つ。更生の見込みが高い者は、政府の監視の元その力を政府の為に使用する。更生が若干必要な者と更生が無理だと判断された者は特殊な施設に収監される。


 「杉浦の場合は、もっと簡単。そもそも特例名簿に登録がある人間は我々では裁けない。それに彼は私と接触することが目的だったから。逮捕された時に裏社会で暴れているいくつかのグループの資料を提供しているから立てこもりの罪も軽減されたみたいよ」


 「司法取引というやつですか?」


 「最近、事件が多発してたから警察上層部も喜んで取引したんじゃない?」


 「結局、どうなったんですか? 奥さんは何も言ってませんでしたけど」


 「…………………杉浦は、政府の監視の元暮らすことになったわ。今はその更正を手助けする人物の元に身をよせているそうよ」


 「そうですか、更生の意志があるなら大丈夫ですね」


 「えぇ、無事に監視期間を終えてくれるといいわね。そうだ、タロも食べる?」


 沙紀は、箱に残っているプリンを一つ手に取るとスプーンと一緒に大祐へと手渡してくる。


 (タロで決まりですか。まぁ、いいか)


 大祐は、極々当たり前に自分の事をタロと呼び始めた沙紀を見て、一瞬ポカンとしながらもその美味しそうなプリンを見て返事をした。


 「いただきます」


 


 

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