File1.プロローグ
2050年5月15日。
その日はこの国の歴史の転換期となった。首都東京を襲った局地型の謎の大地震、これをきっかけに首都の変更がされとある法律がひっそりと施行される。その法律により、東京に住むある一定の条件を満たしてしまった人々の移動と生活に制限がかけられることになった。
その制度の名称は、特異能力者登録制度。
そもそもこの制度が作られることになった原因は、大地震の復興時に起きた大量殺人事件である。とある資産家一家の屋敷の住人が惨殺されたこの事件は、初動こそ強盗殺人事件と怨恨による殺人事件として捜査が行われていた。しかし、捜査が進む内にその事件自体が通常の手段では決して起こりえないと科学的に証明されてしまったことにより事件は迷宮入りとなる。
この事件をきっかけに都内では、科学的に証明されない特異な手段を用いた事件の発生が格段に伸び始める。地震の復興時のさなかに起きたこの事態に政府は秘密裏に調査を開始。その結果、事件の裏には特異能力者の存在が確認された。
この特異能力は地震以降、後天的に備わった人々と地震以降に生まれて先天的に備わった子供たちが大半を占めている。後天的に手にいれた人々の多くは2つのパターンに分かれた。
まずは突然手にした力に怯え、周囲の人々の偏見の目を恐れその力をひた隠しにして生きる人々。そしてそれとは反対に、手にいれたその力を有効に使い社会的にのし上がろうとする人々がいた。
しかし、その中の一部には、危険思考を持つ人間もおり、彼らが犯罪に手を染め始めるのにそう時間はかからなかった。しかし、能力者の発見が東京のみに限定されていた為か、政府の対応は遅かった。しかし、彼らも年々増加する犯罪についに重い腰を上げた。そして作られたのが、特異能力者登録制度である。
能力者の把握と監視の為に作られたこの制度は東京都内に住民登録する際に能力の有無を検査し、警察にデータベース化され犯罪の捜査に使用されている。それと同時に能力者による政府直属の捜査機関・特異能力犯罪捜査課が設立されることになったのだった。
2007年に書いた作品の書き直しになります。その為に、地震の発生月を修正させていただきました。